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» 2013年10月30日 10時00分 UPDATE

ものづくり白書を読み解く(後編):研究開発費は“コスト”なのか、データで見る技術立国の危機 (1/3)

「2013年版ものづくり白書」から、日本の製造業が抱える課題を明らかにする本連載。前編では海外展開の現状と問題を取り上げたが、後編では「研究開発」に焦点を当てる。

[大澤裕司,MONOist]
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 「2013年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)」から日本の製造業が抱える問題を分析する本連載。前編の「海外流出は是か非か、進む日本のモノづくり空洞化」では、製造業の「生産」における海外展開の現状と問題を浮き彫りにしたが、今回はモノづくりにとって極めて重要で、イノベーションに不可欠な「研究開発」の現状について分析する。



研究開発費のピークは2007年

 研究開発は技術力の源泉だ。ものづくり白書によれば、日本の製造業全体の研究開発費は2007年の12.2兆円がピーク。その後はリーマンショックもあり減少に転じ、2010年には10.5兆円と3年間で1.7兆円減少している(図1)。

研究開発費 図1: 研究開発費の推移(出典:2013年版ものづくり白書)(クリックで拡大)

 業種別の傾向を見ると、横ばいで推移した医薬品以外は全業種で研究開発費が減少している。特に落ち込みが激しいのが、「情報通信機械」や「電子部品等」の分野だ。2010年の研究開発費を2007年と比較すると、「情報通信機械」が26%、「電子部品等」が38%減少している。海外企業との競争が激しくリーマンショックの影響が大きかった業種ほど、落ち込みが激しいことが読み取れる。

 また、図2は企業の研究開発費がGDPに占める割合を国際比較したものである。日本の場合、1990年代後半から上昇し、2008年は2.8%にまで達している。

研究開発費がGDPに占める割合 図2: 研究開発費がGDPに占める割合の国別比較(出典:2013年版ものづくり白書)(クリックで拡大)

 1990年代後半以降は、新興国である中国や韓国はもちろん、先進国のアメリカやドイツに比べても、日本企業は研究開発に対する投資を活発に行ってきたことになる。

 しかしリーマンショックを境に、日本企業の研究開発投資は下降局面に入り上昇基調に転じることができていない。業績が立て直せず低迷している間、研究開発投資を下げざるを得なかったことが明白となっている。

研究開発投資大幅増の韓国と中国

 だが、リーマンショックの影響を受けたのは日本だけではない。同じように痛手を受けたアメリカやドイツは、落ち込みを取り戻しつつある。

 業績低迷による研究開発費の削減がいつまでも続くようであると、技術力で新興国にも追い抜かれかねない。ものづくり白書では、中国や韓国が研究開発投資を大幅に増加させていることを指摘し日本の技術競争力低下への懸念を指摘している。2010年の研究開発費は、中国企業が2000年比で約10倍、韓国企業は同3倍以上と大幅に伸長させた。これに対し日本企業の研究開発費は、2000年に比べて1.11倍と横ばいだ(図3)。

 確かに、GDPに占める研究開発投資比率は高いが、研究開発費がほぼ横ばいであることを見ると、デフレにより名目GDPが縮小し対GDP比が上昇しているだけだったと見ることもできる。研究開発に積極的に投資を増やしてきたということではなかったというわけだ。

国別研究開発費 図3: 国別研究開発費推移(出典:2013年版ものづくり白書)(クリックで拡大)
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