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» 2013年11月26日 18時20分 UPDATE

東京モーターショー2013:ダイハツが液体燃料電池車開発に傾ける本気度を見よ、「FC凸DECK」は実際に走る (1/2)

ダイハツ工業が、「第43回東京モーターショー2013」に出展した、同社の「貴金属フリー液体燃料電池」を搭載する軽トラックのコンセプトカー「FC凸DECK」は、実際に走行できる車両だ。FC凸DECKが、大型放射光施設「SPring-8」内の敷地を走行している映像も公開されている。

[朴尚洙,MONOist]
「FC凸DECK」が「SPring-8」で走行している様子

 ダイハツ工業は、「第43回東京モーターショー2013」(2013年11月20日〜12月1日、東京ビッグサイト)において、同社が従来から開発してきた「貴金属フリー液体燃料電池」を搭載するコンセプトカー「FC凸DECK」を出展した。

 FC凸DECKは、最高出力が35kWの貴金属フリー液体燃料電池や、同じく最高出力が35kWの走行用モーター、減速エネルギー回生や負荷応答のバッファとして用いるリチウムイオン電池などを搭載する軽トラックのコンセプトカーである。

sp_131126tms_daihatsu_01.jpgsp_131126tms_daihatsu_02.jpg 左側の写真は、ダイハツ工業の「FC凸DECK」の外観。右側の写真は運転席の様子。シートの下に貴金属フリー液体燃料電池が設置されていることが分かる(クリックで拡大)

水素燃料電池と貴金属フリー液体燃料電池の違い

 トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなどが2015年の市場投入を目指して開発を進めている燃料電池車は、水素を燃料とする固体高分子形(PEFC)燃料電池を搭載している。PEFC燃料電池では、H(水素イオン)が両極間を移動し、強い酸性雰囲気下で反応が進む。このため酸に侵されない高価な白金触媒が必要になる。

 一方、ダイハツ工業が開発している貴金属フリー液体燃料電池は、N2H4・H2O(ヒドラジン一水和物)という液体を燃料に用いる。発電する際に両極間を移動するのはOH(水酸化物イオン)であり、アルカリ性雰囲気下で反応が進むので、酸に強い白金触媒を用いる必要がない。ヒドラジン一水和物から発電した後に発生するのは窒素と水なので、二酸化炭素や窒素酸化物などを大気中に排出する心配もない。

 また、貴金属フリー液体燃料電池は、燃料が液体なので既存の燃料タンクを使用できることも大きなメリットになる。PEFC燃料電池を用いる燃料電池車が高価なのは、白金触媒が必要な燃料電池だけでなく、燃料の水素を高圧状態で貯蔵するために炭素繊維強化樹脂などを使って製造する水素タンクのコストも大きな割合を占めている。

 ダイハツ工業が貴金属フリー液体燃料電池の開発に注力しているのは、同社の中核事業である軽自動車でも搭載可能な燃料電池システムだと考えているからだ。PEFC燃料電池の場合、水素タンクを考慮すると、全長3400×全幅1480×全高2000mm以内という軽自動車規格のサイズに収めるのは難しい。しかし、燃料タンクを使える貴金属フリー液体燃料電池はサイズの問題を解決可能であり、コストも抑えられるので軽自動車にふさわしい価格を実現できる可能性があるのだ。

「SPring-8」での走行映像も

 ダイハツ工業が初めて貴金属フリー液体燃料電池を公開したのは、2009年の「東京モーターショー2009」である。その際には、貴金属フリー液体燃料電池を2セル搭載するミニカーを走行させるデモを行った。つまりこの時点では、ミニカーに搭載するレベルまでしか研究開発が進展していなかったわけだ。

「東京モーターショー2009」における貴金属フリー液体燃料電池を搭載するミニカーの走行デモの様子 「東京モーターショー2009」における貴金属フリー液体燃料電池を搭載するミニカーの走行デモの様子

 2011年の「東京モーターショー2011」では、貴金属フリー液体燃料電池を搭載する軽商用車のコンセプトカー「FC商CASE」を披露した。床下に燃料電池システムやリチウムイオン電池、走行用モーターなどを内蔵しており、フラットな床によって車室内で自由な空間が得られるとしていた。ただしFC商CASEは、走行に必要なハードウェアは全てそろっているもの、制御ソフトウェアを組み込んでいなかったため、実際には走らない車両だった。

「東京モーターショー2011」で披露した「FC商CASE」 「東京モーターショー2011」で披露した「FC商CASE」(クリックで拡大)

 しかし、今回の東京モーターショー2013で展示したFC凸DECKは、実際に走らせることができる車両である。ダイハツ工業は、貴金属フリー液体燃料電池の開発を日本原子力研究開発機構と共同で行っているが、同機構が放射光ビームラインを有する大型放射光施設「SPring-8」の敷地内の道路を使って、実証実験のために走らせているのだ。ダイハツ工業のFC凸DECKのプロモーション映像でも、SPring-8で走行している様子が紹介されている。

 同社はこの他、軽商用車「ハイゼット」をベースに、貴金属フリー液体燃料電池を搭載した実験車両も開発している。この実験車両の走行性能は「自然吸気エンジン搭載の『ムーヴ』を上回る」(説明員)という。

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