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» 2013年12月16日 10時00分 UPDATE

小寺信良が見たモノづくりの現場(10):メイドインジャパンの必勝パターンを読み解く (1/3)

2012年4月からスタートした「小寺信良が見たモノづくりの現場」では、10カ所の工場を紹介した。今回から2回にわたり、この連載で得た「気付き」から、「ニッポンのモノづくりの強み」についてまとめる。

[小寺信良,MONOist]
まとめ

 2012年4月からスタートした「小寺信良が見たモノづくりの現場」。およそ1年半の間に、特別編を含めて合計10カ所の工場を見学させていただいた。AV機器やPCだけでなく、白物家電、タイヤ、ソーラーパネルなど、内容は多岐に渡る。モノの仕組みには興味があるものの実際には作ったことがない、モノづくり素人の筆者にも、分かりやすく丁寧に案内していただいたメーカー各社の皆さまに感謝申し上げたい。

 さて、こうして日本国内で行われているモノづくりをいろいろ拝見していくと「あー、これはあそこでもやってたなー」とか「あのやり方はここでも使えるよなー」といったことが分かるようになる。今回はそのあたりの「気付き」を、あらためてまとめてみたいと思う。



 この連載で見学させていただいた多くの工場で共通するのは、国内生産の強みは「多品種・少量生産をいかに低コスト化するか」あるいは「精度の高いハイエンドモデルをいかに短時間で作るか」ということである。社会構造として、同一のモノが大量に消費される、いわゆる大ヒット商品が生まれにくくなり、ある程度消費者側にも選択の幅を持たせることが必要とされている中、ニーズのブレにどれだけ対応できるかということが、鍵となっている。

革新を続けるセル生産の手法

 多品種・少量生産に適しているとされるセル生産は、やはり組み立ての現場で多く採用されている。セル生産のポイントは、1人の製造者の作業手順が長いことである。そのため、たまにしか作らない製品の手順は、ステップバイステップで確認する必要が出てくる。ICT化された製造支援システムは必須だ。

 「ディスプレイに表示される作業書を確認しながら」というのはよくある方法だが、映像機器のハイエンドモデルを作るソニーイーエムシーエス湖西サイト(ソニーの“プロ機”が日本人にしか作れない理由)では、プロジェクタを使って基板の上に手順を投影していく「Eマウントシステム」がユニークだった。作業者は手元から視点を外さず手順が確認できるため、時間短縮になるだけでなく、ミスも減る。同時に、ネジのトルクまで手順に合わせて自動制御する「E-Assy」は、必要なこととはいえ、よくここまで作り込んだと思わされたシステムだった。

 セル生産で驚いたのは、日立アプライアンス多賀事業所(白物家電を人手で1個ずつ作る日立――国内工場でなぜ)だ。掃除機のような比較的小型のものをセル生産するのは分かるが、洗濯機のような大型家電もセル生産しているとは思わなかった。写真撮影はできなかったが、専用治具を使い、手元で洗濯機の上下をひっくり返す豪快な作業は「治具を工夫すればそういうことができるんだ」という素朴な驚きがあった。

からくりハイパーセル 「からくりハイパーセル」による掃除機の生産。1台を組み上げるのに約3分だ

ライン生産の可能性を追求する

 これに対して、ライン生産での可能性を極限まで拡張することで、多品種少量生産に対応するというスタイルもある。

 島根富士通(富士通のPC工場、勝利の方程式は「トヨタ生産方式+ICT活用」)では、細かくカスタマイズされたノートPC製造を行うが、パーツのピックアップにRFIDタグを利用して徹底管理し、1つのラインで次々と別製品を組み立てるという、混流生産を行っている。ラインに立つ人全員が作業指示書なしで、流れてくる筐体と供給されるパーツから瞬時にモデルを判断し、組み込みを行うという、高い技能が要求される。

島根富士通1 島根富士通でのピッキング作業の様子。RFIDタグで部品を照合しながらワゴンに積んでいく
島根富士通2 島根富士通のカスタムモデル製造ライン。部品点数が多いため、熟練工が担当する

 三菱電機ホーム機器(現場の発想を即決実行! 三菱電機ホーム機器が高級白物家電で連勝する秘密)では、ラインと部材を一緒に流してしまう「キッティング方式」を拝見した。全ての部材がキット化されて1つの箱に入れられているため、多品種製造でも間違った部品の取り付けなどが起こらない。

三菱電機ホーム機器1 三菱電機ホーム機器のキッティング方式の製造ライン。青い箱に全パーツが入っている

 またここでは、生産計画に合わせてラインを長くしたり短くしたり、新設したり解体したりと、ラインを固定化しないという方法論を採る。セル生産とライン生産、それぞれに作る数量的なメリットのラインがあると思うが、これはその両方をカバーできる。設備会社に任せず自分たちでラインを作るからこそできる技だ。

三菱電機ホーム機器2 三菱電機ホーム機器の新ライン増設の様子。社員だけで臨機応変にラインを作っていく
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