非円形歯車を介した変速が変速機の「駆動力抜け」と「変速ショック」をなくすエコカー技術(2/2 ページ)

» 2013年12月20日 14時00分 公開
[朴尚洙,MONOist]
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電気自動車のモーターを小型化

 研究チームが今回の変速機を開発した背景には、電気自動車のモーターを小型化しつつ大きなトルクも発生させられるようにしたいという狙いがある。しかし、現行の電気自動車には基本的に変速機は搭載されていない。これは、変速時の駆動力抜けを補うための余分な加速が電力消費効率を下げ、変速ショックによって乗り心地も低下するためだ。無段変速機(CVT)は駆動力抜けや変速ショックは起こらないが、伝達効率が低いこともあって、やはり電気自動車には利用されていない。

 今回開発した変速機の有効性を実証するため、1人乗り小型電気自動車「ENAX-S3」に非円形歯車を用いた2段変速の変速機を搭載したのがEVUTである。このEVUTを走行させて、1速から2速への変速を行ったところ、変速中の速度変化はほぼ発生しなかったという。

 また、非円形歯車を用いた2段変速の変速機によってモーターの小型化が可能になり、満充電からの走行距離を約10%伸ばせるとしている。

研究チームが試作したEVUT 研究チームが試作したEVUT(クリックで拡大) 出典:NEDO、京都大学
EVUTの変速時における速度変化 EVUTの変速時における速度変化(クリックで拡大) 出典:NEDO、京都大学

4段変速も可能

 EVUTに搭載されている新開発の変速機の変速段数は2段しかない。一方、通常のエンジン搭載車の場合、変速段数が2段よりも多い多段変速であることがほとんどだ。

 こういった多段変速の変速機でも、非円形歯車を用いることで、駆動力抜けと変速ショックをなくすことが可能だ。研究チームは、4段変速の変速機に用いる非円形歯車を開発し、実際に駆動力抜けと変速ショックが起こらないことを確認した。

 4段変速に対応する非円形歯車は、1〜4速の歯車対に対応する円形歯車の曲率が円周上に反映された形状になっている。変速時に、この非円形歯車の歯車対に切り替えて90度回転させれば、減速比を滑らかに変化させられるわけだ。

4段変速に対応する非円形歯車と動作イメージ 4段変速に対応する非円形歯車と動作イメージ(クリックで拡大) 出典:NEDO、京都大学

 非円形歯車を実用化する上で課題となるのが、耐久性と製造のしやすさである。研究チームは、「歯車の歯の強度を確保できていれば、円形歯車と同じ耐久性が得られると考えている。また、2段変速に対応する非円形歯車であれば、通常の円形歯車と同様の手法を使えばいいので製造は容易だ。ただし、4段変速に対応するものは、特殊な材料や手法が必要になる」と述べている。

 なお、本研究は、NEDOの若手研究グラント(産業技術研究助成事業)の一環として行われた。

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