トヨタの分かりにくさ、BMWの分かりやすさプロダクトデザイナーが見た東京モーターショー2013(2/7 ページ)

» 2013年12月27日 11時50分 公開
[林田浩一(林田浩一事務所),MONOist]

個人向けモビリティの新時代を提案する「BMW i」

 一方BMW。こちらは分かりやすい。昔ながらの「駆け抜ける喜び」という文言を背骨にして、個人向けモビリティの新時代を提案するものとして、「BMW i」ブランドの「i3」と「i8」を市場投入。これらをメインに訴求している。バイエルンのエンジン屋という社名の会社が、新たにブランドを作って派生車種というよりも新規事業として電気自動車やプラグインハイブリッド車を展開していくという進め方は興味深い。

BMWの電気自動車「i3」。右側の写真は、展示の配置換えにちょうど出くわした際に撮影したもの。大径で細いタイヤが印象的(クリックで拡大)
プラグインハイブリッド車の「i8」 プラグインハイブリッド車の「i8」(クリックで拡大)

 BMWでは、もう1台ハイブリッド車のコンセプトカー「Concept Active Tourer Outdoor」が展示されていたり、「3シリーズ」、「5シリーズ」、「7シリーズ」にもハイブリッド車があるが、こちらは現行のBMWブランドの派生車種であって、BMW iの中には位置付けられていない。i3やi8のプレスリリースを読んでいくと、サプライチェーン全体を含めたものを「BMW i」と位置付けており、ブランドとしての振る舞い方の意志を感じる。

 クルマそのものを見ても、i3、i8ともに新しい。車体の構造自体も、従来の鉄板をプレスしてつくられたモノコックボディではなく、アルミ合金製のドライブモジュール(シャシー)と炭素繊維強化樹脂(CFRP)製のライフモジュール(キャビン)という新たなアプローチをしているなど、他社の電気自動車やハイブリッド車のビジネスと比較しても攻めの事業展開であることを感じる。しかし同時に、「クルマを創ったのは欧州人である」というプライドのような感情もあるような気もする。「最初のハイブリッド乗用車はプリウスにやられたけど、次世代では日本車に先んじて、自分たちが主導権を握るゾ」みたいな。

「i8」のボディ(左)と駆動システムの構造(クリックで拡大) 出典:BMW

 i3は2014年4月から、i8は2014年夏以降に日本市場に投入とのことで、既に販売価格も設定されている。

 クルマ好きとしては、BMWといえば「M」も忘れちゃ困るという向きもあろう。今回はステージ裏にやや控えめの展示ではあったが、東京モーターショー2013の閉幕後に正式発表となった「M4」(ベース車両が、セダンが3シリーズ、クーペが「4シリーズ」となったので、そのMバージョンも「M3」とM4の2本立てとなった)を持ち込んでいた。ベースの車両サイズも大きくなったせいか、M3というより車格が上のM6という印象もある。軽量化のために、CFRP製部品の採用範囲もこれまで以上に拡大しているようである。

「M4」の外観 「M4」の外観(クリックで拡大)
「M4」の大きくカーブの付いたトランクリッド。CFRP製である(クリックで拡大) 出典:BMW

BMWグループの中で重要度を増すMINI

 日本の輸入車販売台数で第3位のBMWブースと同じ敷地(?)のトヨタ自動車側には、MINIブランドのブースが設けられていた。MINIは小さなクルマだけど、日本の輸入車販売台数で6番手くらいなのでそれなりに路上でも存在感がある。今回のMINIはフルモデルチェンジして、ワールドプレミアとして初公開された。パッと見た目の印象はこれまでのMINIだけど、実車を見るとかなりサイズも大きく変わっていると感じる。写真で世代ごとの大きさを比較してみると一目瞭然。公道を走れるガジェットが、今やすっかり立派なクルマになった感じである。モデルバリエーションも増え、BMWグループの中での重要度も変化してきたということなのであろう。

フルモデルチェンジした「MINI」 フルモデルチェンジした「MINI」(クリックで拡大)
歴代の「MINI」 歴代の「MINI」。右から左に向かって世代が進むのに合わせてサイズが大型化している(クリックで拡大) 出典:BMW

 MINIのブース、面積は比較的狭めで、そこに意外とたくさんのクルマを詰め込むという、小さいクルマとの距離感を意識している見せ方はうまい手法かもしれない。ブースのデザインも含め、モーターショーというよりディーラーのショールームのような見せ方にしている。隣のゆったり広めのBMWブースから移動してくると空間の密度感の変化が面白い。

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