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» 2014年01月31日 11時00分 UPDATE

車両デザイン:「KOPEN」はモノづくりの新しい仕組みのアイコンとなるのか(前編) (1/2)

ダイハツ工業の軽スポーツカーのコンセプトモデル「KOPEN」は、ボディに用いる樹脂外板の“着せ替え”ができることに加えて、その樹脂外板のデータを一般公開する方針によって注目を集めている。プロダクトデザイナーの林田浩一氏が、KOPENのデザイン担当者である和田広文氏へのインタビューを通して、その狙いを読み解く。

[林田浩一/林田浩一事務所,MONOist]
「KOPEN」はモノづくりの新しい仕組みのアイコンとなるのか(前編)

 2013年11月の「東京モーターショー2013」で発表されたダイハツ工業(以下、ダイハツ)の軽スポーツカーのコンセプトモデル「KOPEN」は、ボディデザインを組み替えられるデモンストレーションにより、“着せ替え”ができるクルマとして注目を集めていた。骨格と樹脂外板という古典的なレーシングカーのような構造は、かつてマツダが販売していた「AZ-1」を思わせる部分もある。その構造もさることながら、メーカー自身がボディに用いる樹脂外板に関するデータを一般公開することもあり、クルマとしてもビジネスとしてもこれまでにない広がりを生む可能性を感じた。

 2014年前半の発売を控え、同年1月に開催されたカスタムカーの祭典「東京オートサロン2014」では、東京モーターショー2013とはボディの仕様が異なるKOPENを披露した。前編である本稿では、東京オートサロン2014に来場した、KOPENのデザインを統括する和田広文氏(ダイハツ デザイン部 主査)へのインタビューと、同社ブース内のイベントとして開催された、KOPEN開発責任者の藤下修氏(同社技術本部 製品企画部 チーフエンジニア 次長)と和田氏のトークショーから感じた、KOPENの狙いを読み解いてみたい。

⇒後編はこちら

sp_140131kopen_01.jpgsp_140131kopen_02.jpgsp_140131kopen_03.jpg 「東京オートサロン2014」で公開した「KOPEN」の新たなボディ仕様。左から、「KOPEN future included Rm1」、「KOPEN future included Xm1」、「KOPEN future included Rm2」(クリックで拡大)
sp_140131kopen_04.jpgsp_140131kopen_05.jpg 「東京オートサロン2014」では、ガレージの中に設置された「KOPEN」の骨格(左)や、ボディ骨格に取り付ける前の樹脂外板だけを組み上げた状態なども展示していた(クリックで拡大)

 現時点では発売前ということもあり、和田氏へのインタビューでも「現時点では詳しい話はできないけれども」という前置きが入ることが多かった。今後も商品としての作り込みは続くので、発売時までに変更となる部分も多々あるはずだ。このため本稿は、事実の報告リポートではなく、インタビューやトークショーの内容から、あれやこれやと想像を広げつつ、楽しみつつの考察になっている点はご了承願いたい。

「KOPEN」をデザイン統括する和田広文氏(右)と筆者の林田浩一氏 「KOPEN」のデザインを統括する和田広文氏(右)と筆者の林田浩一氏。和田氏が手に持っているのは、自作したKOPENのミニ四駆だ(クリックで拡大)

「KOPEN」は「Copen」の単なるモデルチェンジではない

 今回のKOPEN、軽自動車の2人乗りのオープンスポーツカーというところや、名称の発音が「コペン」である点は共通しているけれども、車両そのものとしては、初代の「Copen」(以下、初代コペン)との連続性は感じられない(ちなみに、初代コペンが、1999年開催の東京モーターショーでコンセプトカーとして披露された際の名称はKOPENだった)。

初代「コペン」の外観 初代「コペン」の外観(クリックで拡大) 出典:ダイハツ工業

 このことを和田氏にぶつけてみると、やはり、「今回のKOPENは、『初代コペンのモデルチェンジの方向性をどうしようか?』というところが始まりではない」とのことであった。

 根底にあったのは、「クルマを取り巻く市場環境が変化してきている中で、従来の延長線上にあることを続けていたのでは、ダイハツという企業の存在価値がなくなるという意識だった」(和田氏)という。

 今回のKOPENに至るまでの間に、ダイハツはさまざまなコンセプトカーを発表している。2007年に「OFC-1」、2011年に「D-X」、2012年に「D-R」といったオープン2シーターのコンセプトカーがあるが、それぞれは単独で存在している印象である。OFC-1は、次のコペンを探るリサーチのような位置付けにも見えたが、間を置いて開発されたD-Xからは、初代コペンとは違う可能性を模索/トライしているように、初公開となった「東京モーターショー2011」の会場で感じたことを記憶している。

sp_140131kopen_08.jpgsp_140131kopen_09.jpgsp_140131kopen_10.jpg ダイハツのコンセプトカー。左から、「OFC-1」、「D-X」、「D-R」(クリックで拡大) 出典:ダイハツ工業

 今回の記事を執筆するに当たって、D-X発表時のプレスリリースを読み返してみると、「着せ替え」という言葉は使われていない。「『D-X(ディークロス)』は、オンリーワンの存在感を放つタフでアグレッシブなスタイリングを特徴とする。樹脂ボデーを載せ替えてさまざまなタイプに仕様変更も可能。スモールカーならではのヒトとクルマの一体感ある走りと共にスポーツカーの新しいカタチを提案する」(プレスリリースから抜粋)という表現をしていた。

 和田氏から聞いたさまざまな話をつなぎ合わせると、コペンの“次の一手”として、D-Xで、樹脂外板の採用によってボディを変更できるという新しいコンセプトへトライしたことと、何か新しいことをやって行かなければ未来は危ういという企業としての危機感が結び付いたあたりから、今回のKOPEN開発に続く背景となったようである。

 東京モーターショー2013で登場したKOPENは、初代コペンのモデルチェンジの方向性を示すコンセプトカーである以上に、ダイハツのこれからのモノづくりに対する姿勢や企業としての行動方針を象徴するアイコンと考えてもよいのではないだろうか。

 骨格+樹脂外板という構造も、“次のコペン”の付加価値となる着せ替えメニューを実現するために採用された手法というよりも、新しいモノづくりの仕組みを作るための1つの選択肢であり、そしてそれを世の中に問うために、今回のKOPENのカタチにパッケージしてみた、と見る方が正しい。

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