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» 2014年02月19日 10時00分 UPDATE

モノづくり最前線レポート:元「日産GT-R」開発責任者が語る、モノづくりにおける日本人の強みとは? (1/2)

東洋ビジネスエンジニアリングが開催した年次イベント「MCFrame Day 2014」で、元日産GT-R開発責任者の水野和敏氏が「世界に勝てる日本のものづくりとブランド創造」をテーマに、日本独自の文化によるモノづくりの強みについて語った。

[三島一孝,MONOist]
水野氏

 東洋ビジネスエンジニアリング(以下、B-EN-G)は2014年2月12日、年次イベントである「MCFrame Day 2014」を開催した。B-EN-Gの年次イベントは2004年から毎年開催されており、従来は自社製品の紹介などを中心に行っていたが、2009年から自社から離れユーザー企業が役に立つテーマを中心に据えたイベントへと切り替えた。

 今回のテーマは「世界で勝てる日本のものづくり」。基調講演には、日本ならではのモノづくりで世界に驚きを与えた元「日産GT-R」開発責任者の水野和敏氏が登壇し、「世界に勝てる日本のものづくりとブランド創造」について語った。



最高の仕事は金、人、モノ、時間のない環境で生まれる

 水野氏は、日産自動車でプリメーラ、スカイラインなどの開発を行った後、NISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)に出向し、監督 兼開発責任者 兼レーストラックチーフエンジニアとして活躍。NISMOは当時ほとんどレースで勝てない状況が続いていたが独自のアプローチによる車両開発とレースの運営において、連戦連勝の黄金期を築く。その後、日産自動車に復職し、スーパーカー「GT-R」の開発責任者として辣腕を振るい、世界最高クラスの性能と、グローバルトップブランドの構築を実現した。

水野氏 元「日産GT-R」開発責任者の水野和敏氏

 「チャレンジする時には、従来の常識を疑い、本質とは何かを追求することが大事だ」と水野氏は強調する。水野氏がNISMOに出向した当時は、レースに出ると負けが続いている状況だった。そこで「経験者の言う通りにやっても結果は出ない。全く別のアプローチが必要だ」と考え、当時の常識では考えられないような組織作りと車両作りを行った。

 レースチームでは、通常250人程度の分業組織で車両開発を行う。しかしNISMOではそれを50人のチーム体制とし、それぞれが開発とレースを兼任するようにした。さらに競合チームに比べて3分の1という低予算とした一方で、親会社からの指示を避け完全な自主管理が行えるようにしたという。「お金、人、モノ、時間がないことが最高の仕事をする秘訣だ。少人数で感性を共有できるチームを構築することで、新たな価値創造ができる」と水野氏は語る。

常識の先にある“本質”を追求する

 一方で車両開発についても独自のアプローチを取る。「レースに勝つ秘訣は、速い車を作ることや、よいエンジンを作ること、と考える人が多いが、“本質”を考えればレースというのは“ある一定距離を進むのにかかる時間をいかに効率化するか”ということだ。競合のベンチマークなどをしている間は決して1位にはなれない。本質である最高効率をどう追求するかが重要だ」と水野氏は述べる。

 レースは各パーツへの負荷が大きく、車両としての最高性能を維持できる時間は限られている。“変化するパフォーマンスをどうマネジメントして時間を最短化できるか”にレースの本質は集約されるという。これらを実現するためにレースにおける車両やパフォーマンスの変化などのデータを徹底的に取り、データ分析を行った。

 「当時としては珍しかった、データ分析専門のチームを用意し、走行時のあらゆるデータを取った。レースの前には環境や条件などから優勝タイムなどの予想ができるようになっていた」と水野氏は話す。

 これらの取り組みによりNISMOは、国内耐久メーカー選手権3年連続チャンピオン獲得、92年デイトナ24時間レース総合優勝獲得など、華々しい戦績を残すことになる。水野氏は「これらのエッセンスはレースに限った話ではない。GT-Rの開発でも同様のアプローチを取った」と話す。

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