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» 2014年02月27日 10時45分 UPDATE

モノづくり最前線レポート:“ブランディング元年”を掲げるツインバード工業がモノづくりで目指すもの

一対の鳥は結び付くのか――。小物家電などを取り扱うツインバード工業は、独自のブランド構築に向けて新たな体制構築を進めている。ギフト市場やB2B市場など“顔の見えない”製品で存在感を築いてきた状況から、“ブランド”としてのポジションを確立するためにどのような取り組みを進めるのか。事業方針説明会で代表取締役の野水重明氏に聞いた。

[三島一孝,MONOist]
ツインバード

 ツインバード工業は2014年2月26日、2015年2月期(2014年度)の新製品発表と共に事業戦略を発表。2014年度を“ブランディング元年”と位置付け、特徴のある新製品開発を通じて、独自のブランドポジションの確立を目指す方針を示した。

 同社が商戦期に向けた新製品の発表を行うのは毎年恒例のことだが、それに合わせて事業方針の説明を行ったのは初めて。それは同社が2014年度をブランディング元年と位置付け「攻めに転じる年にする」(ツインバード工業 代表取締役 野水重明氏)という思いがあるからだ。

“顔の見えない”ブランド

 ツインバード工業は1951年に新潟県燕市で創業。創業当初は金属表面処理を中心としていたが、1963年からギフト用の家電製品を扱うようになり、徐々にオリジナル製品の展開へと広げていった。現在は電子レンジや炊飯器、掃除機、生活家電、防水テレビ、卓上照明など多岐にわたる小物家電製品を展開している。「ツインバード工業」という社名は「顧客と同社が一対の鳥である」という思いから生まれたという。

ツインバード工業 野水氏 ツインバード工業 代表取締役 野水重明氏

 同社のモノづくりでの強みとなるのが、多品種小ロットで俊敏なモノづくりだ。同社はギフト用や通販用などの小物家電を扱ってきたことから、販売チャネルが多岐にわたる上に、製品の種類も非常に多く、常に600SKU(Stock Keeping Unit、在庫維持単位)を管理する。一方で全製品の販売割合のうちの新製品の占める比率が高く、常に20%以上を新製品が占める状況だという。非常に多くの製品を素早く開発し続けていることが求められてきたため、顧客の要望などに応じてカスタマイズなどをしながら、多くの製品を開発できる体制構築が進んでいる。

 一方で、課題として抱えていたのが、ブランド力だ。同社の製品販売におけるチャネル構成比は、家電量販店などの家電ルートが約半分で、ギフトルート、通販ルート、B2Bルートなどが残りの半分となる。家電ルートを除く半分のルートはあまりブランドとして意識した購買になりにくく“顔が見えない”状況だった。一方で家電ルートの中でも、製品コンセプトとして「大手が力を入れない分野で、手ごろな性能と価格を実現する」ことを目指してきたことから「それぞれの製品は特徴があるものの、企業としてのブランド、製品分野に関するブランドなどが、生まれにくい状況にあった」(野水氏)。

“顧客の声”から一対の鳥となれるか

 これらの状況から脱却を目指し本格的に取り組みを始めたのが、野水氏が社長に就任した3年前からだ。「健康と笑顔」というブランドプロミスとともに、5カ年の中期ビジョンを発表。顧客志向をベースとし「日常に寄り添うブランドとして、選ばれる存在になる」(野水氏)ことを目指し、さまざまな取り組みを進めてきた。

 まず“顧客の声を聞く”部門の強化を進める。コールセンター機能を強化した他、「VOC(Voice of Customer)活動」として、集めた声をデータベース化し、修理・相談対応に活用する他、これらのデータを製品開発に生かせるようにした。VOCを基にして新たな製品開発を行うための「VOC会議」も定期的に実施。「3バンドラジオ付手元スピーカー」など、実際にこの会議によって製品化に至ったケースもあるという。

 加えて、実際に製品企画・開発担当者が、顧客と触れ合う場所の構築などにも取り組んだ。地元の家電量販店や家具店と協力し「新潟家電」とした同社コーナーを設置。そこに製品企画・開発担当者を派遣し、顧客の声を日常的に聞くようにしているという。

 さらに2014年3月1日からは、製品企画機能の一部を東京営業所に移管。商品企画本部長として野水氏自身が、週の半分は東京で新製品開発に取り組む体制を作ったという。「当社は全従業員数約300人中で70人余りが製品開発に関わるなど、モノづくりや製品開発に力を入れてきた企業だ。しかし一方で、顧客の声を聞く、もしくは顧客に声を届ける取り組みについては、十分だと言えないところがあった。顧客の声を聞く取り組みを強化してきた一方で、新たに大消費地である東京に製品企画機能を持つことで、新たなビジネスモデルを創出できる形を作りたい」と野水氏は話す。

“日常に寄り添うやさしい製品”

 ブランディングに向けた取り組みはまだ始まったばかりだが、これまでの取り組みで徐々に成果も出始めている。2013年に協力量販店の要望で「キッチン×上質」をコンセプトとした前面が鏡面仕立てとなった「ミラーデザイン」調理家電がヒット製品となった。さらに2014年は、同様のコンセプトでさらに上質感を演出するピアノブラックを基調とする調理家電を百貨店で販売するという。一方、コアンダ効果(粘性を持つ流体の噴流が付近の壁に引き寄せられる効果)を生かした独自性の高い扇風機「コアンダエア」も2014年は4代目モデルを投入するなど、徐々に特徴のある製品が増えてきている(関連記事:お母さんのうちわみたいな優しい風――ツインバードからDC扇風機「コアンダエア」新製品)。

ミラーデザインコアンダエア 家電量販店でヒット製品となったミラーデザインの電子レンジ(左)と独自技術を採用したコアンダエアの新製品(右)(クリックで拡大)

 野水氏は「もともと個々の製品ではしっかりとしたモノづくりができていたが、徐々に違いを生み出すことが出来つつあるように感じている。さらにこれらを貫く企業のイメージとともに、“日常に寄り添うやさしい製品”というようなイメージを形作っていきたい」と語っている。



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