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» 2014年03月03日 13時00分 UPDATE

モノづくり最前線レポート:アジアで成功する5つのカギ――「GOOD FACTORY」賞に見る“強い工場”の特長とは (1/2)

アジアで成功する工場には実は共通点があった!? ――。日本能率協会が主催する「GOOD FACTORY賞」では、アジアにおける生産性や品質の向上などを実現した工場を表彰する。3回の歴史を刻む中で17つの工場が表彰を受けたが、成功するこれらの工場には実は“5つの共通項”があるという。日本能率協会 JMAマネジメント研究所 主管の廣瀬純男氏が解説する。

[廣瀬純男/日本能率協会 JMAマネジメント研究所 主管,MONOist]
goodfactory

 アジア地域における、工場の生産性向上、品質向上など体質革新活動の事例に着目し、そのプロセスや成功要因、現場の知恵、働く方々の意識改革、社会的貢献などの内容を日本製造業の模範として表彰する「GOOD FACTORY賞」。日本能率協会が2011年に創設した同賞は、優良工場の事例を広く紹介し製造業の体質強化に貢献することを目的としており、2013年までに13社、17の工場が表彰を受けている。

 アジア地域における工場の生産性革新に成功する工場にはどのような要因があるのだろうか。実は、これらの表彰企業の取り組みを見ると“5つの共通項”が存在しているという。「GOOD FACTORY賞」を主宰する日本能率協会でJMAマネジメント研究所 主管を務める廣瀬純男氏に解説していただく。




「表面に現れない努力」がGOOD FACTORYの証

 現在日本の製造業の多くが、中国や東南アジアを中心に工場の海外展開を行っています。以前はそのこと自体は知られていても、現地でどのような経営がされているのか、その実態は現在ほど知られていませんでした。彼らが求められた「品質(Quality)」「価格(Cost)」「納期(Delivery)」を実現しても、当たり前と受け止められていたようにも思います。

 国際競争が厳しい事業環境の中で、他の工場にはまねのできない優れた経営ノウハウを編み出し、人知れず日夜頑張り、困難に挑み続けている「優良工場」は数多く存在します。「GOOD FACTORY賞」は、日本国内ならびに中国、アジア諸国の生産拠点において、改善・革新に努めながら成果を積み重ねている日系企業の優良工場を表彰することを目的としたものです。

審査基準GOOD FACTORY賞の種類 GOOD FACTORY賞の審査基準(左)と種類(右)(クリックで拡大)

 品質や生産性が高く、安全な工場――。これらを実現するために、その国ならではのさまざまな「表面に現れない努力」が続けられています。これこそが、明文化しづらい「GOOD FACTORY」の要件であるといえます。賞の創設から3年を経て、現地審査で各地の工場を訪問する過程から見えてきた成功する優良工場の「5つの共通点」が見えてきました。その5つのポイントを紹介します。

GOOD FACTORY賞受賞企業と工場 GOOD FACTORY賞を受賞した企業と工場(クリックで拡大)

(1)ポリシーは譲らない

経営の軸に揺るぎない、しっかりとしたモノづくりの価値観がある

 成功企業に一貫していたのが、自社の「ポリシーを譲らない」ということです。進出した国や地域の習慣・文化に触れて理解に努め、相手を認め尊重することは大切です。その上で「ブレなく一貫して企業の理念は筋を通す」という姿勢が重要なのです。自社のあるべき姿、大切にすべきもの、守るべきものを明確に示すことが、信頼を得る基本となります。逆にいえば、言語・習慣・文化が異なるからこそ、モノづくりの理念や価値観は変えてはならないのです。

 例えば、インドはカースト制度が残り、強固な地域コミュニティー、急速な経済成長などの事情から労務管理が難しいとされています。しかし、2013年に「ものづくり人材育成貢献賞」を受賞したトヨタ自動車のインド・バンガロール工場は、トヨタが世界共通のモノづくりの精神として掲げる「TOYOTA WAY」を徹底しています。「知恵と改善」「人間性尊重」を柱とするこの理念を土台に、コミュニケーションの強化と人材育成に取り組み、現在も日本人と現地従業員が努力を続けています。

 その他、2013年に「ファクトリーマネジメント賞」を受賞した愛知県の小島プレス工業には「日本的経営、人を大切にしたマネジメント」という軸がありました。また福島県の会津オリンパス(2011年に「ものづくりプロセス革新賞」受賞)も「一個生産、一人生産、一貫生産」というモノづくりシステムに関する柱を明示し、リードタイム短縮、在庫削減を行うことで、品質向上、原価低減、納期順守を推進してきたといいます。成功企業はポリシーにこだわり、従業員に浸透を図ることで、実践に生かしています。

(2)たゆみないステップアップ(継続的改善)

常に次を目指してステップアップを継続的に行う

 従業員全体を引っ張っていくためには、将来的に自社をどのような企業・工場にしたいのか、明確に伝えることが重要です。いつまでにどんな姿になりたいのか、実現可能で挑戦的な目標を意識して提示するのです。

 どの受賞企業も、常に高い目標を目指してステップアップしています。そして、いずれの目標も、さらに上を目指すための通過点にすぎないと考えているところに特徴があります。具体的には、多くの企業が独自のKPI(Key Performance Indicator)を設けてベンチマークし、グループ内での位置を確認しています。

 2013年に「ファクトリーマネジメント賞」を受賞した東芝セミコンダクター&ストレージ社四日市工場もその一例です。同社はNAND型フラッシュメモリの生産拠点として、韓国企業などとの激しい競争の中で、コスト削減と積極的投資で世界一の最先端メモリ工場を目指した戦略的マネジメントを実現しています。

 特筆すべきは経営成果に重大な影響を与える要因の掘り下げ(CTQドリルダウン)です。生産技術・品質保証・施設管理などの工場組織と、「前工程総コスト削減」「品質の作り込み」「順法・安全・環境」などの課題を掛け合わせた数十に及ぶクロスファンクショナルチームを同時に進行し、スピードとフレキシビリティある改善を実行しています。

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