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» 2014年03月11日 13時00分 UPDATE

ナレッジマネジメント:間に合うか!? 熟練技術者の“暗黙知”承継――カルソニックカンセイの場合 (1/2)

技術者の引退や、海外での設計・製造業務の早期立ち上げなどに対し、熟練技術者が持つ形式知・暗黙知を伝える“技術承継”への危機感が高まっている。ジェムコ日本経営が開催したセミナー「技術伝承フォーラム(第五回変革の賢人フォーラム)」では、自動車部品メーカーのカルソニックカンセイが登壇し、ナレッジマネジメントシステムの構築事例を紹介した。

[三島一孝,MONOist]
ジェムコ

 ジェムコ日本経営は2014年2月19日、都内でセミナー「技術伝承フォーラム(第五回変革の賢人フォーラム)」を開催した。基調講演ではカルソニックカンセイが「経験の浅いエンジニアでもベテラン並みの仕事が出来るCK EWM」をテーマに、ナレッジマネジメントシステム導入の事例を発表した。

 ジェムコ日本経営では、変革をキーワードに、変革による実績を残した各界の有識者の知見を紹介する「変革の賢人フォーラム」を開催しているが、5回目となる今回は「技術伝承」をテーマに、日本バリュー・エンジニアリング協会とカルソニックカンセイが登壇。今回はカルソニックカンセイ 常務執行役員 グローバルテクノロジー本部 副本部長の成田克之氏の講演内容を紹介する。



「CK GX4 T10」の実現には人が足りない…

 自動車部品メーカーであるカルソニックカンセイは2017年3月期(2016年度)までの中期経営計画として「CK GX4 T10」という目標を掲げている。これは「4つのG」と3つの「トップ10」の達成を目指すという目標だ(ちなみにCKはカルソニックカンセイの略称)。「4つのG」とは「Growth」「Green」「Global」「Great Company」で、3つの「トップ10」は「世界をリードする環境対応新製品を10製品創出」「売上高グローバルトップ10」「営業利益グローバルトップ10」を示す。

カルソニックカンセイ 成田氏 カルソニックカンセイ 常務執行役員 グローバルテクノロジー本部 副本部長 成田克之氏

 しかし、ビジネス環境を見た場合、これらを実現するためには、グローバルレベルでの、より高度なリソースマネジメントが必要になる。例えば内的な要因を見るとCK GX4 T10実現に向けて、開発プロジェクト数は1.8倍に膨れ上がった上、将来の革新的技術開発に戦略的投資を進めていかなければならない。一方で外部に目を移すと、車両開発期間は年々短縮化が進んでおり、20年前と比べると開発期間は半分となっている。また“地産地消”の考えから生産と開発を現地化する動きが加速している。

 「過去10年間で海外の売上高比率は50%を超え、開発責任を完全に現地が持つケースが半数近くに達している。開発の能力を質・量ともに大きく高める必要がある。これらを達成するためには、グローバル開発分業化を進めるとともに、経験の浅いエンジニアの早期育成は大きな課題となっていた」と成田氏は話す。

カルソニックカンセイのグローバル売上高と地域別売上高比率 カルソニックカンセイのグローバル売上高と地域別売上高比率(クリックで拡大)

“使える”技術標準と“使えない”技術標準

 エンジニアの早期育成を行うには、技術基準を明確化し、開発手順の標準化知識の共有化などが必須だ。

 カルソニックカンセイでは、以前から技術基準として「CAES(Calsonic Kansei Engineering Standard)」を策定しており、その数は5000件にも及ぶ。また充足率は96%に達していたという。しかし、実際に社内で調査を行うと利用率は非常に低いという問題点が明らかになった。

 「CAESの90%が1カ月に1回アクセスがあるかないか、というレベル。使いやすい形で標準化されているとは言いにくく、設計者個人レベルでのワークフローが分かる程度で開発の全体像による位置付けなどが分からないため、実践的に使いにくいものだった。また海外にエンジニアが約650人いるにもかかわらず、海外からのアクセス件数は月に160回程度しかなく、ほとんど使われていないレベルだった。技術基準を使いこなす段階ではないことが明らかだった」と成田氏は語る。

 一方で社内の開発力調査を行う中で、自動車部品メーカーと比較すると「平均レベルではあったものの、半数くらいの項目で課題が見つかった。またさらに仮説検証を進めていくと、『いつまでに、誰と、何を』と『詳細技術検討』のつなげ方が弱くプロジェクトマネジメント面での課題が大きいということが分かった」(成田氏)。

 さらに調査を進めると、海外からの利用率の低さは、意図の伝わらない英訳に原因があることなども分かってきた。「5000件のうち2700件は英文化済みだったが、原文に忠実な直訳だったため、技術者の意図が伝わらないものになっていた。また外注を利用していたため、適時性のあるバージョンアップなどもできず、結果として使いにくいものになっていた」と成田氏は述べる。

CAESの英文化状況 CAESの英文化状況(クリックで拡大)

 これらを解決するために取り組んだのが「CK-EWM(Calsonic Kansei Engineering Work Manual)」だ。

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