ブームで終わらせたくない! ――アイデアを具体化し製品化するには?サムライたちの集い「第3回 サムライモノフェスティバル」(2)(2/2 ページ)

» 2014年03月12日 08時00分 公開
[杉本恭子,MONOist]
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チームラボの考える、日本のモノづくりの未来

 企業内でアジャイル開発を実践しているのは、チームラボだ。同社は、2001年3月の創業以来、社員の6割以上をエンジニアが占めており、「ウルトラテクノロジスト集団」を名乗っている。さまざまなスキルセットを持つプログラマーやエンジニアが集まっている。主に企業向けの空間作りやWebサイト作りを生業(なりわい)としているが、一般的なモノづくりのスタイルとは異なり、エンジニアが話し合い、プロトタイプを積み重ねながら最終的なアウトプットを作っている。

 今、チームラボが取り組んでいるのは、「デジタルテクノロジーを使って、アート的な感動できる体験を作ること」。彼らは今の時代をどう見て、何をしようと考えているのか。

チームラボの高須正和氏

 チームラボの高須正和氏は、今の世界について「ネットワークで覆われて、デジタル領域が、全部の領域を革新していくような世界」という。例として、店舗、携帯メーカー、広告代理店を挙げ、今や「これらの競合はプログラマー集団のアマゾンやアップル、グーグル」だと説明した。つまり全てはデジタルテクノロジーが中心になって、「店舗」「携帯メーカー」「広告代理店」という産業区分がだんだんなくなる。「情報共有のスピードはますます増し、言葉で説明できるものは世界中で再現されて、差がなくなるという時代になっているのではないか」(高須氏)。これがチームラボの現在から今後の産業に対する考えだ。

 ではどうすればいいのか。高須氏は、「言葉にできない『感動できる体験』『何となく引かれるもの』を作ることで生き残っていけるのではないかと思っている」という。そのために、プロトタイプを作って自分たちも感じながら、「面白いもの」「感動するもの」に仕上げていくのだ。

 デジタルテクノロジーを使った、言葉にできない感動、体験ができるものとは、一体どんなものなのか?

 例えば沖縄のリウボウデパートで昨年行われた「チームラボ 未来の遊園地展」。そもそもの依頼はデパートの催事場で、お客さんが集まるイベントだった。そこで彼らが考えたのは「子どもが遊べるもの」。子どもは触ってすぐに反応が返ってくるものが好き。だからiPhoneやiPadが大好き。ただ幼少期には、全身を使って遊ぶことや、他の子どもとやりとりすることもとても大事だ。

 そこで作ったのが、「天才ケンケンパ」と「お絵かき水族館」だ。「天才ケンケンパ」は、踏む場所によってエフェクトがさまざまに変化する。

 最初はなんとなく跳んでいる子どもたちだが、何度も試したり、他の子どもの様子を見たりしているうちに、次はどうしようかなどと考える。

 「お絵かき水族館」は、子どもたちが塗り絵をした魚の絵をスキャナに取り込むと、自分の魚がプロジェクタで移された水槽の中を泳ぎ出す。同じ種類の魚が群れたり、強い魚がくると逃げたり、子どもたちが近寄ると魚も集まってきたりする。これらのエフェクトは最初から決まっていたわけではなく、プロトタイプを重ねる中で改良されてきたものだ。

 他にも、キャナルシティ博多のイルミネーション「願いのクリスタルツリー」や、渋谷パルコにある「デジタルインフォメーションウォール」のように実用をアート的な表現で実現したもの、チームラボを代表する製品でもある「インタラクティブハンガー」が紹介された(関連記事:「メイカーズと町工場が組み「製品を作って売る」ということ」)。

 「言語や論理では表現しにくいが、『引かれる』『感動できるもの』。「そういう領域を、多分昔から人は『アート』と呼んでいたのではないかと思っている」と高須氏。

 ビジネス領域がテクノロジーの固まりになって、産業区分がなくなる。テクノロジーは言語化、共有しやすく、競争の差異を生まなくなる。差がなくなったときに、言葉にできない何か、「アート」の要素が重要になってくるというのが、チームラボの考えるモノづくりの未来像なのだ。チームラボの作品はYouTubeの動画でも多数公開されている。

天才ケンケンパ
お絵かき水族館
チームラボの水草亜友氏

 またチームラボはDMM.comとnomadと共同で3Dプリントサービス「DMM 3Dプリント」を運営している。チームラボの水草亜友氏は、その成果や最新の取り組みについて紹介した。2014年1月時点でのアップロード累計数は約1万2000件、受注数は約5000件で、2013年7月のオープン以来右肩上がりで推移しているという。また2013年12月から公開したDMM 3Dプリントに登録された3次元データを利用したサービスが作れるAPI「DMM 3Dプリント DevelopersAPI」についても紹介した。


 次回筆者は、チームラボの高須正和氏にバトンタッチ。第3回 サムライモノフェスティバルの展示ブースの内容をお届けする。

筆者紹介

杉本恭子(すぎもと きょうこ)

東京都大田区出身。

短大で幼児教育を学んだ後、人形劇団付属の養成所に入所。「表現する」「伝える」「構成する」ことを学ぶ。その後、コンピュータソフトウェアのプログラマ、テクニカルサポートを経て、外資系企業のマーケティング部に在籍。退職後、フリーランスとして、中小企業のマーケティング支援や業務プロセス改善支援に従事。現在、マーケティングや支援活動の経験を生かして、インタビュー、ライティング、企画などを中心に活動。


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