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» 2014年03月19日 10時45分 UPDATE

マイクロモノづくり概論【人づくり編】(1):マイクロモノづくり仲間を集める方法 (1/4)

小さくはじめるモノづくりビジネス「マイクロモノづくり」は、自分一人だけでは成り立たない! 一番の力になるのは、やはり町工場。でも、町工場と仲良くなるにはどうしたらいいの?

[宇都宮茂/enmono,MONOist]

 前連載「マイクロモノづくり概論」では、「自分一人が製品を企画して、作って、売る」小さくはじめる事業(マイクロモノづくり)の概念や方法論を述べてきた。今回はビジネスのタネを事業として拡大するために必要な“人とのつながり方”や“仲間づくり”に焦点を絞って述べていく。

「社会運動はどうやって起こすか」

 アメリカの起業家でミュージシャンでもあるデレク・シヴァーズ氏が、カンファレンスイベント「TED」で「社会運動はどうやって起こすか」というスピーチをし、話題になった(関連リンク:『デレク・シヴァーズ 「社会運動はどうやって起こすか」』

 その中に、阿波踊りのようなダンスをする一人の男性が登場する。最初は嘲笑されているものの、だんだん人が集まってきて、次第にダンスの輪が広がっていくというエピソードだ。

 要は、「リーダーとフォロワーによってムーブメントが起きること」を述べている。最初のフォロワーが、コアメンバーとなる。そのコアメンバーをつかむことが、社会運動では大事ということだ。

 この概念はモノづくりビジネスにも通じる。リーダーだけではモノづくりビジネスの継続は不可能なのだ。

主体者は一人である

 たった一人の人が、モヤッとした感覚の中から課題を感じ取り、自身のテーマとして、イメージやストーリーを取り出し企画にまとめ上げる。場合によってはラフなプロトタイプを作り上げる。これはよく、「ハードウェアスケッチング」「ダーティープロトタイピング」などといわれている。

 形になったもの(試作品)を通してコアメンバー(仲間)を徐々に集め、さらに試作品のレベルを向上させていく。その後、知財を保護した上でネット公開して世間の評判を集めつつ、クラウドファンディングでプロジェクトを公開して資金や市場評価を得る。その実績を加味しつつ、ビジネスを構築して社会へと届けていく。

yk_enmonohito01_01.jpg 「テーマ→モノ→ヒト→カネ」のフロー

 ざっと述べると上記のような流れになるが、本連載では主に「仲間を集める」ことについて説明する。また主体者が、工場というモノづくりのリソースを持たないメイカーズと、工場の経営者自身とではやり方が全く異なる。ここでは、前者のメイカーズの目線で話を進めていく。

 モノづくりの設備や人的リソースを持たないメイカーズにとって、試作品を作ることすら困難な状況にあるだろう。10年前と比べれば、モノを作るためのツールやサービスなどが格段に安価になったとはいえ、製品とは程遠い、企画レベルの試作品の用意が限界かもしれない。とはいえ、たとえ企画レベルであっても試作品を作った上で仲間探しをすることはマストとなる。実物がなく、企画書やCGなどだけでは、やはりコアな仲間は集めにくい。

 またアイデアや企画が斬新であればあるほど、仲間は集まりにくくなる。逆に、単純で分かりやすければ受け入れられやすく、仲間も集まりやすい。しかし分かりやすい分、模倣もされやすく、市場価値も低くなりやすい故に、製品を世に送り出すまでについえてしまう場合が多い。

 筆者の経験上、資金や人材を集める前の、企画や試作品のブラッシュアップについては、最小限の人数と資源で行うことが重要だと考える。もし可能ならば、一人がよいかもしれない。とはいえ工場を持たない方にとって、たった一人による試作品のブラッシュアップはすぐに限界を迎えるだろう。試作段階では、モノづくりのリソースを持つ町工場との連携が必須なのが現実だ。

町工場に試作を依頼する

 町工場に試作を依頼する場合、まず資金を準備し、見積もりし、費用が妥当ならば発注しなくてはならない。また試作の過程では、何度も試行錯誤しなければ、自分の納得いくカタチにはならないもので、資金はどんどん減っていくだろう。経験がなければ、事細かなプロセスや苦労を前もって想像するのは難しい。試作品の見積もりを代行してくれるエージェントもいるが、自身のイメージ通りのものを初見で調達してくれることは皆無だ。

 結局は、長い付き合いを経て、言葉にできない領域(感覚)のイメージをお互いが共有できたことで、初めて自身が望むものを手に入れることが可能だ。

 金銭による契約関係だけでは、付き合いは長続きしないものだ(ただし、ここではあくまで「資金が尽きる」という意味での「続かない」であって、契約自体は重要なことだ)。中小企業の現場改善支援に携わる関ものづくり研究所の関伸一氏は、「5give=1take」の精神(『5与えたら、1返ってくれば万々歳』と考える気長さ)の大切さについて講演などで語っている(関連記事:「明るく楽しい職場からしか良い物は生まれない」)。“長い付き合い”を築くためには、そのような心構えも必要だろう。要は、「自分にできること」を提供するところから関係性を構築していく。「今までにはないもの」というアイデアを提供し、その価値を理解してもらうところから始まる。

 こちらから何らかの価値を提供し続ける中で、お金は尽きてくるかもしれないが、その代わりに得られるものがボチボチ生じてくる。何もない中から価値を提供し続けるために知恵を絞っていくと、ようやく“無の運用”を身に付け、価値を得ることにたどり着く。

町工場とチームを組もう!

 実際、製品化を見込んだ試作品は個人では到底まかなえない金額になるものだ。よって、製作費用を町工場側にも負担してもらう(つまり、投資してもらう)ような、いわゆる「チームを組む」ような付き合い方がベストだ。

 町工場とチームを組むには、地道な営業活動と適切な説明が不可欠だ。また町工場の経営者と付き合う際は、自分自身も経営者の視点や感覚を持たなければ付き合ってはもらえないだろう。自分自身の企画によって、相手の町工場にどのような明るい未来が待っているのかを具体的に伝えられなければ、聞く耳は持ってもらえない。

 投資してもらうため、話を聞く時間を取ってもらい、思いを伝える機会をどうやって作ればよいのか。

yk_enmonohito01_02.jpg モノづくりに求められる各種リソース

 まず図で示したリソースの中で自身が得意とするところを相手に提供し、喜んでもらえることがあるのかを棚卸しする。そういう部分で価値を提供する中で、徐々に信頼関係を結びチームを作っていくのがよい。

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