試作4号EV「SIM-HAL」はシムドライブの集大成、今後は実用化フェーズへ電気自動車(2/2 ページ)

» 2014年04月02日 09時00分 公開
[馬本隆綱,MONOist]
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4種類のインホイールモーターを開発

 EVの実用化に向けて、同社が基幹技術の1つとして開発に注力しているのがインホイールモーターである。SIM-HALには、新規開発した軽量で高性能の「SS(Super SIM-Drive)」を搭載している。最高出力は65kW、最大トルクは620Nmである。重さも33kgと、SIM-CELのものと比べて約35%の軽量化を図った。さらに低い電流密度でも、高いトルク密度を発揮できるようにした。JC08モードの燃費測定で用いられるような実用負荷域での効率を、SIM-CELのモーターより改善しているのも特徴。これまでのインホイールモーターで課題となっていたコギング(脈動)トルクについては、ほぼ確認できないレベルまで低減できたという。

左側の図は、「SIM-HAL」に搭載したインホイールモーター「SS」の特性と、開発目標値、「SIM-CEL」のインホイールモーターの特性の比較。右側の図は、SSと従来のインホイールモーターとの特性比較である(クリックで拡大) 出典:シムドライブ

 SIM-HALに搭載したSSの他にも、3種類のインホイールモーターを開発した。SSの積み層を2倍にして最高出力を高め、レーシングカーへの対応も可能とした「SSX」、インホイールモーターとともにドラムブレーキもタイヤ内部に収められる「SP」、エンジンルーム内に水平に実装でき、増速機構も内装した垂直軸方向のモーター「UFX」である。田嶋氏は、「当社では、インホイールモーターの開発/試作は行うが量産はしない。コスト低減を実現していくには、量産技術を持つ企業と協業する必要がある」と語る。

SIM-HALに搭載された新規開発の「SS」(左)と、SSの積み層を2倍にした「SSX」 (クリックで拡大)
インホイールモーターに直接タイヤを取り付けることができる「SP」(左)、エンジンルームへ水平実装を可能にする増速機構を内装した垂直軸方向のモーター「UFX」の概要を説明した展示パネル(クリックで拡大) 出典:シムドライブ

 これらのインホイールモーターの特徴を生かし、運動性能を向上させるのが独自の4輪独立制御技術である。舵角センサーと角速度センサーからのデータを基に、実車両の挙動と運動モデルを比較して、理想的な動きになるようにトルクの配分を行う。これによって、安全で安定した走行が可能になるという。

 シムドライブは、車両に関する技術以外でも、「SIM-iACT」構想と呼ぶEV普及に向けたサービスを提案している。リコーや積水化学工業、沖電気工業、アルパインなどのパートナー企業と連携し、インターネットを介してバッテリー関連を含めた車両情報を有効活用できるような仕組みとなる。EV利用者の利便性向上と不安解消を狙いとするサービスである。

「SIM-iACT」構想(クリックで拡大) 出典:シムドライブ
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