エアバッグの前に付く「SRS」の意味を理解しよういまさら聞けない 電装部品入門(13)(2/4 ページ)

» 2014年04月08日 15時00分 公開

エアバッグの種類

 エアバッグが車両に標準装備され始めた当初は、運転席のみに搭載されていました。しかし今では、助手席はもちろんのこと、サイドエアバッグ、サイドカーテンエアバッグ、ニーエアバッグといったものまで登場しています。

 さらに、二輪車用エアバッグや、二輪車レースの際に用いるリュック型エアバッグ、歩行者保護用のボンネットエアバッグまで登場しています。

さまざまなエアバックを全て展開した状態 さまざまなエアバックを全て展開した状態。シートの脇にあるのがサイドエアバッグ、窓ガラスを覆うカーテンのようになっているのがサイドカーテンエアバッグである 出典:トヨタ自動車

 全てを紹介すると相当なボリュームになってしまいますので、ここでは詳しく解説しませんが、採用率がかなり高まっているサイドエアバッグとサイドカーテンエアバッグは軽く紹介しておきましょう。

 まずサイドエアバッグですが、これは横方向からの衝撃に対して乗員の胸部への衝撃を緩和するものです。シートバックの側面に取り付けられおり、乗員に限りなく近い所で展開するため、乗員の着座位置や乗車姿勢によっては展開をさせないシステムが組み込まれています(展開させない状態では、警告灯や警告メッセージで乗員に伝達します)。

 次にサイドカーテンエアバッグは、サイドエアバッグと同様に横方向からの衝撃に対応するものですが、乗員の頭部への衝撃を緩和するという点が異なります。室内のピラーやルーフレールに取り付けられており、名前の通りカーテン状のエアバッグを展開して、頭部がドアガラスや室内の固い部分にぶつかるのを防止します。

エアバッグの設置位置

 エアバッグ本体は基本的にナイロン製の織物で作られており、内部はゴムでコーティングされています。

運転席用エアバッグの搭載位置 運転席用エアバッグの搭載位置(クリックで拡大)

 設置箇所は、運転席用はハンドル中央部(ホーンパッド内部)、助手席用はシート正面のダッシュボード内部で、折りたたまれた状態で取り付けられています。

 ECU(電子制御ユニット)からの展開命令によって火薬が着火すると、爆発音を伴って窒素ガスが発生し、瞬く間にものすごい速度でエアバッグが膨らみます。エアバッグを窒素ガスで単純に展開させるだけではなく、乗員の動きなどを計算して0.01秒単位での展開速度の調整も行われています。

 販売店による啓蒙活動や、さまざまな報道などの努力のかいもあって、エアバッグが搭載されていたとしても「絶対に安全」ではないことが周知されつつあります。それでも多くの方が、「エアバッグが開けば、けがをしなくて済む」と思い込んでいらっしゃるようですね……。

 基本動作や展開のロジックは後ほど詳しく説明しますが、これだけは言わせていただきます。

 少し厳しいかもしれませんが、エアバッグが開こうが開かなかろうが、衝突時にけがをしたとすればその原因は衝突事故そのものです。

 先述した通り、全てはシートベルトをしていることが前提となりますが、「エアバッグが開かなかったからけがをした」というのは、エアバッグを展開させなくても乗員の生命を脅かすような重大な衝撃ではないとECUが判断した結果によります※1)

※1:エアバッグを展開するロジックに該当しないような重大な事故は除きます。

 また「エアバッグが開いたからけがをした」というのは、ほとんどの場合が「エアバッグが開いたからけが程度で済んだ」というのが実際のところでしょう※2)

※2:全く外的な応力が入力されていない状態でエアバッグが展開した状況は除きます。

 次回以降に紹介するエアバッグの展開ロジックをしっかりと理解していただければ、良い意味でエアバッグに対する考え方が変わると思います。本来は、全ての方がエアバッグのことをきちんと理解した上で利用すべきですから、以下の解説もしっかりと目を通してください。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.