「いじめ」「お通夜」の設計審査を回避するには「3秒ルール」を押さえろ!甚さんの「コミュニケプレゼン」大特訓(7)(2/2 ページ)

» 2014年04月18日 10時00分 公開
[國井良昌/國井技術士設計事務所(Active Design Office),MONOist]
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 それが、“コミュニケーションを取らせない”ための「3秒ルール」「3秒+S」というスキルでした。簡単な前者の「3秒ルール」とは、「質問の後、すぐに回答するのではなく、3秒以上待って回答しなさい」「3秒以上、よく考えて回答しなさい」ということです(★)。

 記者の質問後、3秒間隔でポンポンとリズミカルに返事が返ってくるということは、質問者にとって何よりも心地良いコミュニケーションのリズムです。つまり、この心理学者はそのリズムを壊すこと(あえてコミュニケーションを円滑にしない)が最適なマスコミ対策と考えたのです。

エリカ

今回の説明は、いつものような「円滑なコミュニケーション」ではなく、「コミュニケーションを取らせないスキル」についてなんですね。念のため、迷わないように後者のことには★(黒星)を付けとくわ。


良

力士の話の後に、黒星って何か嫌だね……。


エリカ

もー何でもいいじゃないですか!


甚

まず人間同士の会話って、3秒以内にやりとりがないと、イラつくんだよ。1秒以内だっていう江戸っ子もいっぱいいるぜぃ。


 さらなるスキルは、前述した「3秒+S」です(★)。Sに正数を代入します。例えば以下のようになります。

  1. S1=2で、S=5秒後に答える(★)。
  2. S2=−5で、S=−2秒に、つまり、相手が話し中に答える(★)。

 2のことは、最近の若い人は「かぶせる」「食い気味」というのかもしれません(★)。

 それでは、良君とエリカちゃんに実践してもらいましょう。まずは、円滑なコミュニケーションが取れてしまう場合の図1です。

図1 3秒ルールを適用した円滑なコミュニケーションで取れてしまう例

 次は高等テクニックの「3+S」です。S1=2を代入して、S=5秒後の場合の図2です(★)。

図2 「3+S」でS1=2を代入してS=5秒後の回答例(★)
エリカ

この手のタイプの男性は、チョー苦手ですね。


良

ちょ、ちょっと待ってよ! これはあくまで演技なんだから!


甚

いい演技だぁ。まるで演技とは思えん!


 このタイプについて、筆者も大変困惑しています。それは、国内のセミナーの時ですが、「××さん、この場合は、どのようなトラブルが想定されますか?」とお聞きします。すると、何も返事がありません。筆者は、重ねて「××さぁ〜〜ん!今日はご出席ですか?」というと、初めて「ハイ!」と答えが返ってきます。

 筆者は、もう一度、「この場合は、どのようなトラブルが想定されますか?」とお聞きします。再び、無言です。ただ、自分なりに一生懸命に考えているのだと思うので、「では、次の人」とはいえません。そして、いつまでも「無言」……。非常に困っています(★)。

 ところが不思議です。女性技術者と隣国の技術者で、このようなタイプはあまり見掛けません。やはり、技術者には、「技術者向けコミュニケプレゼンスキルアップ」が必要である体験上思います。

 そういえば、「黙秘権行使」とは、コミュニケーションを取らせない最高の技術だと思います(★)。

 最後は、S2=−5で、S=−2秒に、つまり、相手が話し中に答えてしまう図3を見てみましょう(★)。

図3 「3+S」でS1=−5を代入してS=−2秒の回答例(★)

 「3秒+S」のSにS2=−5を代入して、S=−2秒に、つまり、相手が話し中に答えるという意味です。最近の若い人は「かぶった」というのかもしれません。

 これは、「無言」や「黙秘権」より穏やかですが、やはり、コミュニケーションを取らせない高等技術です(★)。なんといっても、相手の話を聞かないのですから……。

良

甚さん、分かりましたよ〜。「いじめ」「お通夜」の設計審査を回避するには、「3秒ルール」がカギなんですね!


甚

おぉ、そうよ! 「いじめ」なら「3秒以上」、「お通夜」なら「3秒以内」だ。さっきもゆったけどよぉ、最近は3秒も待てねぇヤツらが多いからよぉ、「1秒ルール」もあり、かもな?


ちくちく責められてばかりの「いじめ」であれば「3秒+S」でリズムを壊す、みんなだんまりの「お通夜」なら「3秒以内」でテンポよくコミュニケーションを取るようにしましょう。

エリカ

これって、面接試験の面談でも同じですよね。今年こそ、あんな低レベルな会社は、「3秒ルール」で辞めてやるぅ〜♪


良

えー! もおー! またそれ〜!


 筆者は設計コンサルタントとして多くの企業を訪問してきました。決して少なくない企業の設計審査が、「いじめ」「お通夜」に変ぼうしています。

 その原因は以下の3つです。

  • 1−1:設計書がない説明会
  • 2−1:技術者向けコミュニケプレゼンスキルが低下
  • 3−1:管理職が設計審査ができない

 これらの対応策は、以下です。

 では、またお会いしましょう!


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Profile

國井 良昌(くにい よしまさ)

技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会、埼玉県技術士。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。

1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)をはじめとする多数の書籍を執筆。



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