ソーシャルメディアやクラウドファンディングを活用するマイクロモノづくり概論【人づくり編】(2)(2/2 ページ)

» 2014年04月18日 10時00分 公開
[宇都宮茂/enmono,MONOist]
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巻き込むこと、巻き込まれること

 Facebookを活用して人と知り合っていく方法の中に、「巻き込むこと、巻き込まれること」という方法論がある。

Facebook では、「巻き込まれることと、巻き込むこと」で人とつながっていける。たとえば、自分がイベントなどを企画する。人を集めて開催し、そこに集まった人たちと知り合いになっていく。これが言わば「巻き込み型」のネットワーキングだ。逆に、誰かに誘われたイベントに参加して、そこで知り合いが増える場合もある。これが「巻き込まれ型」のネットワーキングである。ぼくらenmonoは「巻き込み型」と「巻き込まれ型」をバランスよく活用することで、いろいろな人と知り合って、人脈を形成していった。

「マイクロモノづくりはじめよう」(テン・ブックス刊)p.175より

 上記のように、enmono自身もいろいろな方を巻き込んで、今は地方支部(支店や支社ではない)ができるほどにまで発展した。

 巻き込み型で築くネットワークは即座に大きくなることはなく、少しずつ積み上げていくものだ。やがてそれが、大きな“うねり”を起こすようになるだろう。これは前回も述べた、「社会運動はどうやって起こすか」という話に通ずる。

クラウドファンディングの思わぬ? 効果

 われわれがソーシャルメディアをフル活用して築いた、「マイクロモノづくり」というキーワードがきっかけとなったネットワークが、クラウドファンディングサービス「zenmono」の運営にも非常に役立っている。今まで掲載したプロジェクトは全てゴールで終了し、実際に商品化されて販売まで至っているプロジェクトは4件に上る。

 クラウドファンディングを通して資金やサポーターを募り、商品化して販売したことで、プレーヤー(プロジェクト起案者)にどういうことが起こるのか。

 クラウドファンディングに挑戦した人は分かるかと思うが、まずプロジェクトを掲載するまでに結構な苦労をする。どのようにコンセプトを語るのかを練った上で文章やコピーや写真や動画などのコンテンツを作ることは、いざやってみると、なかなか大変なことである。

 苦労の末に掲載した後は、実際に支援してくれる人を集めるという、さらなる苦労が待っている。プロジェクトを知ってもらうためのPR活動が欠かせず、プロジェクトに関心を持ってくれた人とコミュニケーションをテンポよく取らなくてはならない。

 zenmonoはモノづくりに特化しているので、「モノづくりに関わってきた方」あるいは「モノづくりが得意な方」がプレーヤーであることが多い。そのような方の多くは、PRしたり、知らない人とコミュニケーションを取ったりするのが苦手と感じる。しかし、自身が精魂込めて作り上げようとしているものに関心を持ってくれる方々とコミュニケーションを取るにつれて、そんな苦手意識に徐々に変化が訪れるようだ。

 例えば受託の仕事の場合、「QCDは当たり前」の世界で、感動はあまりないものである。受託仕事しか経験がないような人が、B2Cの取っ掛かりとなるクラウドファンディングを経験すると、「モノが作れること」に素直に感動してくれる一般の人とコミュニケーションを取れるようになり、あらためて「モノづくりの喜び」を思い出すことになるのである。

 そして、マインドセットが切り替わり、「モノが作れる」ということがいかに強みであるのかを再認識でき、その特徴を生かした経営戦略を立てることも可能となる。

 また「B2Cへのアプローチで、B2Bの広がりも増す」ということは、zenmonoを運営していて最近気づいたことだった。以前、アートディレクターでデザイナーのエムテド 田子學さんと話をしたとき、「B2C2B」という言葉が出てきたのだが、それは以下のようなコンセプトだという。

一度個人向けの商品を生み出してそこで認知度を高められれば、B2Bでも存在感を増すのではないかという仮説で事業展開をする

enmonoが配信するWebキャスト「MMS」より:左が田子學さん、右が筆者の宇都宮

 つまり経営戦略としてクラウドファンディングを活用すれば、田子さんの言う「B2C2B」という戦略が取れるというわけだ。

ソーシャルメディアを活用して思いを伝える

 ソーシャルメディアはしょせんツールにすぎず、目的意識を持って使わなければ効果はあまり発揮できないだろう。そこに伝えるべき”思い”がなければならない。例えばenmonoの経営理念は、「ワクワクモノづくりで世界を元気にする」である。これは、代表の三木と私の心の奥底から体感的に湧き出てきた思いである。そして、この思いをソーシャルメディアというツールを通して伝え続けているのである。

 ソーシャルメディアを活用し、読者の皆さんの「経営理念」という「心の奥底から体感的に湧き出てきた思い」をぜひ伝えていってほしい。その熱のこもった思いに共感して、自ずと仲間が増えてそこからビジネスが広がっていくものと確信している。(次回に続く)


Profile

宇都宮 茂(うつのみや しげる)

1964年生まれ。enmono 技術担当取締役。自動車メーカーのスズキにて生産技術職を18年経験。試作メーカーの松井鉄工所にて生産技術課長職を2年務めた。製造業受発注取引ポータルサイト運営のNCネットワークにて生産技術兼調達担当部長として営業支援に従事。

2009年11月11日、enmono社を起業。現在は、製造業の新事業立上げ支援(モノづくりプロデューサー)を行っている。試作品製造先選定、部品調達支援、特許戦略立案、助成金申請支援、販路開拓支援、プレゼン資料作成支援、各種モノづくりコンサルティング(設備導入、生産性向上のためのIT化やシステム構築、生産財メーカーの営業支援、生産財の販売代理、現場改善、製造原価、広告代理、マーケティング、市場調査、生産技術領域全般)など多岐にわたる。

Twitterアカウント:@ucchan

記事で紹介した企業も登場:MMS放送アーカイブ

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『マイクロモノづくりはじめよう〜「やりたい! 」をビジネスにする産業論〜』(テン・ブックス)

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