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» 2014年04月24日 14時30分 UPDATE

車載半導体:車載イーサネット導入の起爆剤になるか、フリースケールがマイコンにPHYを内蔵

Freescale Semiconductor(フリースケール)とBroadcom(ブロードコム)は、自動車の駐停車時や低速走行時に車両の周囲を確認するのに用いるサラウンドビューシステム向けに、車載イーサネット対応の物理層IC(PHY)を内蔵する車載マイコン「MPC5606E」を共同開発した。

[朴尚洙,MONOist]
「MPC5606E」は車載カメラモジュールのサイズを半減できる

 Freescale Semiconductor(フリースケール)とBroadcom(ブロードコム)は2014年4月2日(米国時間)、自動車の駐停車時や低速走行時に車両の周囲を確認するのに用いるサラウンドビューシステム(サラウンドビュー)向けに、車載イーサネット対応の物理層IC(PHY)を内蔵する車載マイコン「MPC5606E」を共同開発したと発表した。既に一部顧客へのサンプル出荷を開始している。

 MPC5606Eは、フリースケールが2011年6月に発表した車載イーサネット対応マイコン「MPC5604E」と、ブロードコムの車載イーサネット対応PHY「BCM89810」、それぞれの機能を持つチップを1パッケージに収めたICだ。マイコンチップ側には、周波数64MHzで動作する「Power Architectureベース」の32ビットプロセッサコア「e200」、512Kバイトのフラッシュメモリ、96KバイトのSRAM、車載カメラの映像信号を圧縮するモーションJPEGエンコーダ、車載イーサネットに対応するコントローラ回路などを集積している。

「MPC5606E」のブロックダイヤグラム 「MPC5606E」のブロックダイヤグラム(クリックで拡大) 出典:Freescale Semiconductor

 BCM89810は、車載イーサネットの標準化団体OPEN(One-Pair Ether-Net)アライアンス(関連記事:車載イーサネット標準化団体が勢力を急拡大、発足5カ月で30社以上が参加)が採用した、ブロードコムの車載イーサネット技術「BroadR-Reach」に対応しており、被覆なしのツイストペアケーブル(UTP)での接続が可能だ。

 パッケージは121端子のMAP(Molded Array Process)BGAで、外形寸法は8×8mm。MPC5604Eの外形寸法が14×14mmもしくは10×10mmなので、BCM89810を集積するとともに大幅な小型化も実現したことになる。車載カメラモジュールのサイズは、MPC5604EとBCM89810を使う場合と比べて半減できるとしている。

sp_140424freescale_02.jpgsp_140424freescale_03.jpg 「MPC5606E」は、「MPC5604E」と「BCM89810」の組み合わせと比べて、車載カメラモジュールのサイズを半減できる(左)。MPC5606Eのサンプル出荷開始に合わせて、車載カメラモジュールを搭載した評価ボードも提供する(クリックで拡大) 出典:Freescale Semiconductor

 MPC5606Eのサンプル出荷開始に合わせて、車載カメラモジュールを搭載した評価ボードも用意した。車載イーサネットで映像信号をストリーミングで出力するソフトウェアやAUTOSARベースのリアルタイムOSなども併せて提供する。

ワイヤーハーネスのコストを80%、重量を30%削減可能

 現在、日産自動車の「アラウンドビューモニター」やトヨタ自動車の「パノラミックビューモニター」といったサラウンドビューがさまざまな車両に搭載されるようになっている。しかし、これらの現行システムが用いている車載カメラの画素数は、最大でも130万画素(解像度はVGA:640×480)程度であり、アナログの映像信号として出力している。映像を処理する車載機側も、VGAサイズのアナログの映像信号を扱うことを前提とした仕様になっている。

日産自動車の「アラウンドビューモニター」 日産自動車の「アラウンドビューモニター」 出典:日産自動車

 BMWが間もなくフルモデルチェンジを予定している「7シリーズ」は、より画素数の多い車載カメラからデジタル出力した映像信号を使った、高精細なサラウンドビューを搭載する計画である。この他にも、高精細なサラウンドビューの採用を検討している自動車メーカーは多い。

 現在、車載カメラの映像信号をデジタル出力するインタフェースとして有力視されているのが、車載イーサネットとSerDes(シリアライザ/デシリアライザ)である。MPC5606Eが用いている車載イーサネット技術のBroadR-Reachは、最大伝送速度が100Mbps、UTPによる接続が可能である。ただし、100Mbpsの伝送速度では車載カメラの映像信号をそのまま伝送できないので、いったんモーションJPEGエンコーダで圧縮し、車載機側で伸張する必要がある。一方SerDesは、伝送速度が2〜3Gbpsあるため映像信号を圧縮する必要はない。

 フリースケールやブロードコムは、BroadR-Reachの最大の特徴として、「SerDesに比べてコストと重量を大幅に削減できる」と主張している。両社の試算によれば、高精細なサラウンドビューを構築する場合にMPC5606Eを使うと、現行のSerDes技術よりも、接続に用いるワイヤーハーネスのコストを80%、重量を30%削減できるという。

「MPC5606E」の採用によるワイヤーハーネスのコストと重量の削減イメージ 「MPC5606E」の採用によるワイヤーハーネスのコストと重量の削減イメージ(クリックで拡大) 出典:Freescale Semiconductor

 これまでの車載イーサネットを用いるサラウンドビューでは、車載カメラモジュール内にCMOSセンサー以外に2つのICを組み込まなければならない点が課題となっていた。この課題をクリアしたMPC5606Eの投入は、車載イーサネット導入の起爆剤になる可能性がある。

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