構造改革を進めるソニー、反転のカギを握るのはウェアラブルデバイス!?製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

ソニーは2014年度の経営方針説明会を開催。同社は2013年度の業績が予想を大きく下回り、2014年度は構造改革の1年となる。同社社長兼CEOの平井一夫氏は「構造改革を先送りにせずに2014年度でやり抜き、2015年度以降は成長フェーズへと入れるようにする」と語っている。

» 2014年05月22日 22時30分 公開
[三島一孝,MONOist]
ソニー

 ソニーは2014年5月22日、2015年3月期(2014年度)の経営方針説明会を開催した。同社では2013年度の業績が予測を大きく下回り1284億円の最終赤字となっており、2014年度は経営再建の1年となる(関連記事:ソニー、果てしなく続く構造改革と事業縮退――テレビ部門は累積7900億円の損失)。

 同社社長兼CEOの平井一夫氏は「2014年度までの中期計画目標は未達に終わる見込みで責任の重さを痛感している。2014年度は構造改革を何としてもやり抜く1年とし、それにより2016年3月期(2015年度)以降は成長フェーズに入れるようにしたい。そのためには構造改革を決して先送りしない」と構造改革への決意を示した。


構造改革で2015年度に1000億円のコスト削減

 ソニーの2013年度連結業績は、最終損益が1699億円悪化し1284億円の赤字に転落するなど、期初の見込みを大きく下回る結果だった。そのため2014年度も売上高が7兆8000億円、営業利益が1400億円、最終赤字が500億円となるなど、中期目標として掲げた「売上高8兆5000億円、営業利益率5%以上、ROE10%」からは大きく乖離(かいり)した業績予想となっている。

平井氏 ソニー社長兼CEOの平井一夫氏

 業績の足を引っ張ったのが、エレクトロニクス部門の赤字事業だ。平井氏は「エレクトロニクス部門の中でも、主力と位置付けるゲーム&ネットワークサービス、モバイル、イメージング関連事業は順調だった。赤字だった事業の構造改革のスピードが市場環境の変化よりも遅かった」と要因を語る。

 そのため構造改革は赤字のエレクトロニクス部門を中心に行う。既に2014年2月にはPC事業の売却とテレビ事業の分社化を発表(関連記事:ソニー、PC事業を売却してもテレビ事業を分社化してもなお、見えない光)。事業売却したPC事業は「VAIO株式会社」に承継した他、テレビ事業は分社化した新会社「ソニービジュアルプロダクツ株式会社」に2014年7月1日から移管する予定だ。

 さらに、2014年度に進める構造改革により、本社間接費用の30%削減と販売会社のコスト20%削減を実現する。2013年度と2014年度の構造改革費用として3000億円以上を計上する。ただその効果として2015年度以降は、年間1000億円以上のコスト削減効果が得られる見込みだ。これらに加えて、好調なエンタテインメント部門、金融部門の収益への貢献により「2015年度は営業利益4000億円を見込む」(平井氏)という。

 構造改革について平井氏は「大規模なものは全て2014年度にやり切る」と話す。また分社化したテレビ事業の売却については「今は考えていない」(平井氏)とコメントしている。

2014年度業績見込み構造改革 2014年度の業績見込みと2013年度、2012年度の実績(左)、2014年度に行うエレクトロニクス部門の構造改革の内容(右)(クリックで拡大)

カギはイメージセンサーとバッテリー

 構造改革を進める一方で、エレクトロニクスのコア3事業(ゲーム&ネットワークサービス、モバイル、イメージング関連)については、リソースを集中し、さらに拡大を進めていく方針だ。平井氏は「エレクトロニクスのコア3事業について、スマートフォンや家庭用ゲーム機、デジタルカメラなどの市場環境が厳しいことは十分理解しているが、その中でイノベーションを起こすことで勝ち抜く」と力を込める。

 2014年4月6日までに全世界で700万台を販売している家庭用ゲーム機の「PS4」は「ホームコンソール市場におけるナンバーワンポジションを堅持する」(平井氏)ことを目指す。ソニーのゲーム事業は新たなプラットフォームのスタート時には大きな赤字を抱えるケースが多かったが、PS4については「既にハードウェア単体で利益が出ており、従来のプラットフォームとは異なる」と平井氏は語る。

 またゲームやテレビと組み合わせるネットワークサービス事業を拡大する。PS3ゲームをストリーミング形式でプレイできる「PlayStation Now」のベータサービスを夏に米国で開始する。クラウドベースの新しいテレビサービスも米国で2014年内に開始。既に2013年度も「ネットワークサービス関連の売上高が2000億円」(平井氏)としているが、さらに拡大を進めていく方針だ。

 モバイル事業については、プレミアムセグメントでの製品力強化に加え、地域ニーズに応じたラインアップ拡充を図る。特に普及価格帯製品を充実させ、新興国市場なども視野に入れた拡大を目指す。一方で事業環境のリスクに対応する体制構築を進め、「市場環境が急激に変化した際でも経営への影響を最小にできる仕組みを作る」(平井氏)。

 イメージング事業については、イメージセンサーやバッテリーなどのデバイスと、完成品の両面での事業拡大を進めていく方針。デジタルカメラについては、デジタル一眼レフカメラと高級コンパクトカメラを中心とする。その他4K対応の業務用カメラに加え、ソリューションビジネスにも展開していく。

 その他、新規事業として期待されているメディカル事業は、3Dおよび4K技術を活用した外科用硬性内視鏡について2015年度の市場投入を目指して開発を進める他、手術室用のシステムインテグレーション事業を強化していく。これらにより2021年3月期(2020年度)に売上高2000億円を目指す。

 平井氏は「これらの各分野で差別化のカギを握るのはイメージセンサーとバッテリーだ」とデバイスによる差別化を強調する。

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