アドヴィックスがESCユニットを使って回生ブレーキを簡素化、日産が量産採用人とくるまのテクノロジー展2014

アドヴィックスは、「人とくるまのテクノロジー展2014」において、一般的なブレーキブースターと横滑り防止装置(ESC)ユニットの組み合わせで実現した「ESC回生協調ブレーキシステム」を展示した。日産自動車が北米市場で販売しているハイブリッドSUV「パスファインダー ハイブリッド」に採用されている。

» 2014年05月27日 10時00分 公開
[朴尚洙,MONOist]
「ESC回生協調ブレーキシステム」に用いるESCユニットとブレーキブースター

 アドヴィックスは、「人とくるまのテクノロジー展2014」(2014年5月21〜23日、パシフィコ横浜)において、一般的なブレーキブースターと横滑り防止装置(ESC)ユニットの組み合わせによって実現した「ESC回生協調ブレーキシステム」を展示した。日産自動車が北米市場で販売しているハイブリッドSUV「パスファインダー ハイブリッド」に採用されている(関連記事:日産がFF車用ハイブリッドシステムを試作車に搭載、量産は北米市場で2013年から)。

 ハイブリッド車や電気自動車は、減速時の制動力を電力に変換して二次電池パックに充電する回生ブレーキを搭載している。この回生ブレーキは、ハイブリッド車や電気自動車向けに専用開発されたシステムを搭載していることが多い。例えば、トヨタ自動車の3代目「プリウス」の場合、回生ブレーキ力に応じて車両の四輪に掛かる油圧ブレーキ力を制御するシステムを搭載している。

 これに対して、今回展示したESC回生協調ブレーキシステムは、一般的な内燃機関車に用いられているESCユニットとブレーキブースターにいくつかの小さな変更を加えるだけで回生ブレーキを実現できる。1つ目はブレーキペダルへのペダルストロークセンサーの追加で、2つ目はマスターシリンダーのアイドルストロークの延長である。3つ目は、ESCユニットに、より静粛なギヤポンプを採用するとともに、回生ブレーキとして利用できるように内蔵部品の耐久性を高める。

左側の写真は、アドヴィックスが展示した「ESC回生協調ブレーキシステム」に用いるESCユニットとブレーキブースター。右側の図はシステム構成である(クリックで拡大) 出典:アドヴィックス

 4つ目は、ブレーキ制御ソフトウェアの変更になる。車両のブレーキ力は、走行モーターなどによる回生ブレーキと、ESCユニットによる制御油圧ブレーキ、ドライバーの踏力による基礎油圧ブレーキから構成されている。ドライバーが要求するブレーキのうち、延長したアイドルストロークの部分で回生ブレーキや制御油圧ブレーキを用いることになる。この仕組みにより、基礎油圧ブレーキが抑制され、一定レベル以上の回生効率を確保できるというわけだ。ブレーキ制御ソフトウェアも、この仕組み対応したものに変更しなければならない。

「ESC回生協調ブレーキシステム」によるブレーキの仕組み 「ESC回生協調ブレーキシステム」によるブレーキの仕組み。延長したアイドルストロークの部分で回生ブレーキや制御油圧ブレーキを使い、ブレーペダルを深く踏み込んだ場合だけ基礎油圧ブレーキを用いる(クリックで拡大) 出典:アドヴィックス

 これらの変更は、専用システムを別途導入するわけではないので、回生ブレーキを導入するための開発や試験にかかる時間は最小限で済む。車両内の設置位置で困ることもない。

 肝心のエネルギー回収効率もJC08モードで95%以上を確保した。プリウスのような専用のブレーキバイワイヤシステムを用いるものとそん色ないレベルだ。「内燃機関車のラインアップにハイブリッドモデルを追加する際に、回生ブレーキを容易に導入できる。エネルギー回収効率も十分高い」(アドヴィックスの説明員)という。

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