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» 2014年06月06日 10時00分 UPDATE

3次元ツール特訓講座「3D道場」より:【設計初心者向け】設計ですべらない! 金型基礎知識ダイジェスト (1/3)

「3DDS in CUBE」で開催中の「【すべらない金型の話】(初級編)」より、製品設計者が押さえておきたい金型知識のダイジェストをお届けする。

[杉本恭子,MONOist]

 2014年2月にリニューアルオープンした3Dスタジオ「3DDS in CUBE」で開催している「3D道場」。ケイズデザインラボ 代表取締役の原雄司氏は、「もともと社内教育のために始めようとしたが、いろいろな講師に協力いただけることになったので、皆さんに公開しないともったいない」と、同年3月までの試行期間を経て、2014年4月から本格的な運用を開始(関連記事:3DプリンタやCADが学べる「3D道場」とは? ――面白チョコレート作り実演も)。同年5月16日からは、週1回、4回シリーズで、射出成形金型について、ゼロから学ぶ初心者向け金型講座「【すべらない金型の話】(初級編)」を開催する。

yk_kyanagatakoza_01.jpgyk_kyanagatakoza_02.jpg (左)モールドテック 代表取締役 落合孝明氏、(右)ミヨシ 代表取締役社長で技術士(機械部門) 杉山耕治氏

 本講座の講師は2人。樹脂およびダイカスト金型設計を軸に、製品設計、製品制作のサポートを行っている、モールドテック 代表取締役の落合孝明氏。「全日本製造業コマ大戦」の行司としても知られる。

 もう1人は、射出成形金型、アルミ金型、簡易金型の設計、試作加工ならびに試作モデル、治具の作成を行うミヨシ 代表取締役社長で技術士(機械部門)の杉山耕治氏。本稿では、両氏による初心者向け金型講座の内容の一部をお届けする(関連連載:金型設計屋2代目が教える 「量産設計の基本」)。

なぜ、いま「金型」を学ぶのか

 3Dプリンタが何かと話題に上る昨今。しかし、なぜ、いま金型の基礎知識を学ぶのだろう。

落合氏 少量なら3Dプリンタでもいいかもしれませんが、量産するとなると、3Dプリンタと射出成型とではコストが全然違いますし、製品としての強度も違います。製品を大量に作ろうと思ったら、金型が必要。少なくとも現時点では、金型がなくなることはないと断言していいと思います。

 3Dプリンタや切削加工、射出成型は、そもそも作る過程が全然違うので、仮に3Dプリンタでは問題なかったとしても、金型ではその製品の形状が成り立たないということも多々あるという。場合によっては、量産向けの設計をすると、製品のイメージが変わってしまうこともあるとか。そうなれば当然、時間もコストもかかる。

落合氏 金型を考慮した設計ができれば、後の検証や量産向けの製品設計の時間は圧倒的に短縮できるし、当初のデザインとの差異もなくなります。

杉山氏 「金型は高い」といわれますが、金型がどういうものかとか、製作方法を知らないためにギャップが生まれているではないかと。

 つまり、企画やデザインをする、モノづくりの上流にいる人たちも含め、金型の基礎知識を持っていることは、スムーズに市場に投入するために重要なファクターなのだ。

金型とは? 射出成型とは?

 ではそもそも「金型」とは? 「射出成型」とは? 金型は、「たい焼き」なら「焼き型」に相当する。金型には、プレス金型とか押し出し金型などさまざまな種類があるが、今回のテーマは「射出成型金型」だ。

落合氏 射出成型金型は、射出成型機に取り付けて樹脂を射出することで、大量にモノを作る金型です。ペレットが熱せられて液状になり、ノズルから金型に射出されます。形状部分に充填された樹脂が固まって、金型が開いて製品を突き出す。これを繰り返すことで大量に作ります。

 樹脂にもいろいろな種類がある。例えば「ヘルメット」という用途だけでも、主に「ABS」「PC」「PE」「FRP」があり、価格、硬度、耐候性、耐薬性、耐久性などの特徴から、使用環境に適したものが使用されている。

金型を考慮していない“残念な設計”

 最初に落合氏は、スクリーン上に一例として、「とある部品」のイメージを表示した。基板を中に固定して、蓋を閉めるケースのようなものだ。一見、何の問題もなく見えるし、恐らく3Dプリンタでの試作では「OK」という判断になりそうな製品。だが、落合氏と杉山氏は「つっこみどころがたくさんある。金型向けに直さなければならない」という。

yk_kyanagatakoza_03.jpg 問題はどこ?

 金型での量産をするのであれば、考慮しなければいけない基礎的なポイントとして、落合氏は以下の6つを挙げた。

  • 抜き勾配
  • 肉厚
  • バーティングライン
  • アンダーカット
  • 角R
  • 公差

 表示された部品の形状は、このいずれにおいても不具合があり、要するにこのままでは射出成型はできないというのだ。

抜き勾配

 ではどうすればいいのか、ここからは6つのポイントの解説だ。まず「抜き勾配」とは、製品を金型からスムーズに取り出すためにその製品自体に付けた傾斜のことだ。

yk_kyanagatakoza_04.jpg 抜き勾配

落合氏 勾配が付いていないと、金型が開いたときや製品を取り出すときに、型と製品がこすれるので、製品に傷が付いてしまいます。金型にも負担が掛かり、摩耗してしまうかもしれません。勾配があると、金型が開いたときに金型が逃げる方向に開くので、上の型と製品形状がこすれず、製品の意匠面に傷が付きません。内側も角度が付いているので、製品と金型が逃げるようにしてはずれるので、裏側と金型もこすれません。

 一般形状にリブ状のものが付いているような場合も基本的には同じだ。ただリブに勾配を付ける場合は、先端を基準に根元を太くする方法と、根元を基準に先端を細くする方法と2通りある。どちらにするかはケースバイケースだが、根元を太くすると組み立てたときに相手部品が干渉してしまうかもしれないので、抜き勾配を考えるときには相手部品の存在も考慮しなければならない。

yk_kyanagatakoza_05.jpg リブに抜き勾配を付ける

落合氏 勾配の角度の表現には、「勾配」と「テーパー」があります。勾配は片側の角度で、テーパーは両側の角度のこと。意外と間違って使っている方がいるので、気を付けてください。

yk_kyanagatakoza_06.jpg 勾配とテ―パー
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