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» 2014年06月18日 10時00分 UPDATE

レイコ先生の「明日から使える! コミュニケーションスキル」(4):目指せ仕切り上手!会議が変わるファシリテーション(その2) (1/2)

「話が脱線しても、エライ人には指摘しづらい……」。そんなとき、スマートに会議を前に進める良い方法とは?

[小山新太/MPA所属 中小企業診断士,MONOist]

本連載の登場人物

カ

小山田和成(オヤマダカズナリ)

中小ソフトウェアメーカーに勤務するエンジニア。入社8年目の30歳。技術力においては社内から一目置かれる存在で今年から係長に昇格。しかし、奥手な性格でコミュニケーションは苦手。通称「カズ君」。

レ

杉本麗子(スギモト レイコ)

外資系ソフトウェアメーカーにて人事部長を歴任。その後、中小企業診断士を取得して独立。現在は、「ツンデレ」キャラを生かして売れっ子の人事コンサルタントとして活躍中。通称「レイコ先生」。


*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。


>>前回

レ

カズ君、その後、ファシリテーションはうまく活用できているかしら?


カ

そうですね。会議って自分の想定していないことが起こるので、そういう時にアタフタしちゃって対応に困ることがあります。


レ

想定外の出来事に臨機応変に対応することもファシリテーターに求められる能力なのよ。


カ

臨機応変って……。そういうの苦手なんですよね……。


レ

ブツブツ言わない!! ファシリテーションのスキルを向上させるには、実践で経験値を積むことが不可欠なのよ。どんな点がうまくいかなかったのか教えてちょうだい!


カ

ヒィーーーッ!! うまくいかなかったのはこんな点です。


  1. 時間が足りなくなってしまい結論が持ち越されいつまでも決まらない
  2. 議論の本筋とは全く関係ない発言で論点から脱線してしまう
  3. 合理的な判断基準で意思決定しようとしても、抵抗する人がいる
レ

なるほど。確かによくあることね。それじゃ、これらの状況にどうやって対応したらよいか教えてあげるわね。


時間が足りなくなってしまい、いつまでも決まらない

 会議でのタイムマネジメントは、全てがファシリテーターの想定通りにはいかないものです。特に拡散の段階で思いの外議論が盛り上がったり、難しい問題の意思決定をする場合などは余計にそうでしょう。そのため「今日は時間がなくなってしまったので、次回あらためて議論をしましょう」ということになりがちです。しかし、このような対処方法だと、次回の会議では、以下のような展開となってしまいます。また意思決定できずに次回へと結論が持ち越されてしまい、「いつまでも決まらない」事態となってしまいます。

  1. 前回の内容を忘れている
  2. 前回の内容の再確認から始まる
  3. 議論を再開する
  4. 議論が盛り上がる
  5. また時間が足りなくなり意思決定できない

 それでは、どうやってこの事態に対処すればよいのでしょうか? 「あらかじめたっぷりと会議時間を設定しておく」ということが、真っ先に思い付きそうですが、時間が増えてもこのような事態の根本的な解消にはつながりません。

 前回の記事では「合理的な判断基準」を用いて意思決定することの必要性を解説しました。なぜ、合理的な判断基準が必要かといえば、参加者の納得感が得られ、意思決定するのが容易だからです。それでは、時間が足りない中で、どうやって参加者の納得感を得ながら合意形成をすればよいでしょうか?

 その答えは、時間が足りなくなった時の意思決定の方法についてあらかじめの参加者の合意を得ておくということです。具体的には、以下のように時間がなくなった場合の意思決定方法をグランドルール(前回参照)に加えるとよいでしょう。

「終了5分前までに参加者全員で合意形成できない場合は、田中部長の決裁とし、次回への持ち越しはなしとする」

 ここでのポイントは「グランドルールに加えること」です。会議が進み時間がなくなりそうだと感じてから上記のような提案をしても、後出しジャンケンとなってしまい、参加者は「そんなことなら最初から田中部長が決めればいいじゃないか!」という不快な気持ちになってしまいます。グランドルールに組み込み、参加者全員の合意をあらかじめ得ておけば「最善は尽くしたけど、時間がなくなってしまったからしょうがない。後は田中部長に一任しよう!」という納得感を持って意思決定ができます。また、「次回へ持ち込みなし」と最初に明言することで、参加者の時間に対する意識を高めることができ、集中力をもって議論できるという副次的な効果も期待できます。

自己チュー発言で議論が脱線してしまう

 拡散の段階で、グランドルールやリフレーミング(前回参照)を駆使して議論が盛り上がったとしても、それが論点とは全く関係ないところでの盛り上がりであったら意味がありません。場づくりの段階で目的(論点)を明確に示したとしても、「ちょっと本題から外れるんですが」といった発言は会議ではよくあることです。そのため、議論の本筋から外れた意見が出て議論が脱線してしまいそうな時は、素早く本筋へ戻すことが会議の舵(かじ)取り役であるファシリテーターには求められます。

 しかし、その発言が社内のエライ人や声の大きな人であったりすると、発言の内容がいくら“自己チュー発言”であっても、なかなかうまく軌道修正できないことがあります。そんな場面で役立つのが「パーキングエリア(PA)」という手法です。使い方は以下の手順です。

  1. ホワイトボートや模造紙に「PA」と書いたスペースを確保しておく
  2. 議論の本筋から外れた意見が出た場合、PAに記録して議論を本筋に戻す
  3. 会議が終わる時に、PAで記録したものをどのように扱うかを決める

 2の場面では「貴重な意見なのですが、本日の議題とは異なる論点となりますのでこちらに書き留めてさせていただきます。よろしいでしょうか?」というようなコメントをしてパーキングエリアを活用します。ここでのポイントは、たとえ論点から脱線した発言であっても、いったんは受け止めるということです。「それは本日の議題とは関係ありません」と一刀両断してしまうと、発言者の気分を害してしまい、その後ポジティブな姿勢で会議に参加してもらえなくなってしまいます。加えて、他の参加者も「変なことは発言できないな」といった気持ちになってしまい、自由闊達(かったつ)に意見がいえる雰囲気ではなくなってしまいます。パーキングエリアに書くという行為を通して、発言者は自分の意見を受け止めてもらえたと感じますので、気分を害することなく会議に参加し続けてくれます。

 また、社内のエライ人や声の大きな人の自己チュー発言をそのまま放置しておくと、他の参加者の参加意欲とファシリテーターへの信頼は低下しますので、パーキングエリアを使って、やさしく議論の本筋に戻すことが大切です。

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