目指せ仕切り上手!会議が変わるファシリテーション(その2)レイコ先生の「明日から使える! コミュニケーションスキル」(4)(2/2 ページ)

» 2014年06月18日 10時00分 公開
[小山新太/MPA所属 中小企業診断士,MONOist]
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いくら合理的でも抵抗する人がいる

 進化論で有名なイギリスの自然科学者、チャールズ・ダーウィンが「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が残るのでもない。唯一生き残るのは変化する者である」という言葉を残しているように「変わる」ことは仕事においてとても重要です。しかしながら、「変わることへの恐れ」から変化を受け入れられないのが人間というもので、深層心理での抵抗は想像以上に根強いものです。そのため、意思決定の際にいくら合理的な判断基準を用いても、一部の人が首を縦に振らないということが、どの組織でもあります。

 そんな場面で役立つのが「ペイン・プレジャーマトリックス(PPM)」です。この手法は、「変わらないメリット(喜び)と変わることへのデメリット(痛み)」に固執している参加者の意識を、「変わらないことへのデメリット(痛み)と変わることのメリット(喜び)」に転換させるものです。

 使い方は、以下となります。

  1. 図1のように縦軸に「変わる/変わらない」、横軸に「デメリット(痛み)/メリット(喜び)」というマトリックス表を作成する
  2. 変わることへのデメリット(Aの領域)に対する意見を書く
  3. 変わらないことへのメリット(Dの領域)に対する意見を書く
  4. 変わることへのメリット(Bの領域)を考えてもらい、意見を書く
  5. 変わらないことへのデメリット(Cの領域)を考えてもらい、意見を書く
図1ペイン・プレジャーマトリックス(PPM)

 まずは、抵抗する人の意見(思い)を一度聞き入れることです(手順2、3)。抵抗する人の頭の中は、変わらなくて済むための理由として、「変わることのデメリット(A)」と「変わらないことのメリット(D)」でいっぱいのため、たくさんの意見が出てくるでしょう。

 次に、「変わることへのメリット(B)」と「変わらないことへのデメリット(C)」を考えてもらうようにします(手順4、5)。抵抗する人からは、B、Cの領域についてはなかなか意見が出てこないと思いますが、Bの領域は全てがうまくいった理想的なゴールを、Cの領域は全てが悪い方向にいった最悪の結果を想定してもらい考えを引き出すようにするとよいでしょう。

 変化に直面すると人間は、AとDの領域(変わることのデメリットと変わらないことのメリット)を過大評価し、BとCの領域(変わることのメリットと変わらないことのデメリット)を過小評価して考えてしまいます。そのため、このマトリックス表を使って4つの領域を同じ土俵で見比べることで、偏見を持たずに客観視できるようになります。最終的に、抵抗者の頭の中を以下のような形に転換することで、納得して変化を受け入れられるようになるでしょう。

Before

 B+C(変わるメリット+変わらないデメリット)<A+D(変わるデメリット+変わらないメリット)

After

 B+C(変わるメリット+変わらないデメリット)>A+D(変わるデメリット+変わらないメリット)

レ

どうだった? 今回説明した方法ならうまくいきそうかしら?


カ

はい! ありがとうございます。今度はうまくいきそうなイメージがわいてきました! それにしても、ファシリテーションの手法っていろいろあるんですね。


レ

そうね。ただ、たくさんの手法を覚えることがファシリテーションのスキルの向上につながるわけではないから気を付けてね。あれもこれもと欲張るよりも、自分にしっくりくる手法を実践で使い込んでいくことのほうが大切よ。


カ

「『二兎を追う者は一兎をも得ず』ってことですね。なんかレイコ先生が言うと説得力がありますね……(笑)。


レ

あら、ヒドイ!! 若い時に欲張りすぎたから、いまだ独身って言いたいのね。私は昔も今も一途な女なのに……。グスングスン。


 今回は、ファシリテーションを実践する上で、よくある想定外の出来事とその対応方法について解説しました。ファシリテーションにはたくさんの手法(ツール)が存在しますが、ツールを「使うこと」自体が目的化しないように注意が必要です。ツールはあくまでも、会議をうまくかじ取りするための手段ですから、現場で臨機応変にツールを選択することを心掛けましょう。ファシリテーターの役割を担ってくれる人が、1人いるだけその会議の効率性は大きく変わります。「うちの会社の会議ってムダだな〜」と不満を感じているのであれば、ファシリテーションのスキルを身につけて、自らの手で会議を創造的な場へと変えていってみましょう。

 次回は、新たなアイデアをたくさん考えたい時に役立つ「ブレインストーミング」について解説します。

参考文献

  • 「ファシリテーションの教科書」(名倉広明 著、日本能率協会マネジメントセンター)
  • 「ファシリテーション入門」(堀公俊 著、日経文庫)
  • 「ファシリテーターの道具箱」(森時彦/ファシリテーターの道具研究会 著、ダイヤモンド社)
  • 「ファシリテーター養成講座」(森時彦 著、ダイヤモンド社)

Profile

小山新太(こやまあらた)

MPA所属 中小企業診断士。販売促進やマーケティング、コミュニケーションスキルを専門とし、中小企業支援やセミナー講師などを行っている。



MPAについて

「MPA」は総勢70人以上の中小企業診断士の集団です。MPAとは、Mission(使命感を持って)・Passion(情熱的に)・Action(行動する)の頭文字を取ったもので、理念をそのまま名称にしています。「中小零細企業を元気にする!」という強い使命感を持ったメンバーが、中小零細企業とその社長、社員のために情熱を持って接し、しっかりコミュニケーションを取りながら実際に行動しています。

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