ワクワクする人を察し、自分のワクワクを人に伝え、縁を紡げマイクロモノづくり概論【人づくり編】(4)(2/2 ページ)

» 2014年06月27日 10時00分 公開
[宇都宮茂/enmono,MONOist]
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自分のワクワクが、人に伝わる

 われわれが主催する経営革新講座の受講者(つまり、ご縁があった人)には、まず「人それぞれが、異なる価値観や感性を持っていること」に気付いていただく。過去に何度か開催してきた「発電会議」という発想ワークショップの手法を用いている。

 「新たに“何か”を生み出すこと」とは、つまり「既にあるものではない何かに価値を見い出すこと」である。基本的に他者が価値を感じてはいない、あるいは気付いてはいないところのモノに何かしらの価値を主観的に見い出すこととなる。本当に腹の底から「いいね!」となったら、無意識に身体が動き始めているものであるが……。

 経営革新講座の受講者は、それを実際にやってみて、「身体が動かない」ことが多い。大人になると、つい頭の中で先回りして、いろいろ考えてしまい、身体が動かなくなってしまうものである。

 その後、受講者は「体が動かない状態」を認めて、深く苦しんだ後に、自分の腹の底にあるものに気付くことができ、何かしら生み出していっている。

 人は、頭で考えて、他者が理解しやすいものを生み出しがちではあるが、そのような表層的なものでは他者の心は動かせない。少しずつ自分の深いところを見つめていけば、自分の腹の奥底から取り出してきたものに、何かしらの光明を見い出すことができる。これは、訓練次第で誰にでもできることなので、ぜひ試してみてほしい。その後、本当の“オリジナルなもの”を生み出していただくことが、われわれの願いである。

 「感じること」を重視するのは、人間の根源的な部分に気付いてもらいたいからである。頭で考えることや行動することは、元をたどれば、何かを感じ取るところから始まると考えている。

 人間が物事を実践するプロセスとして、よく知られているのが「PDCA」である。しかし、その実践の取っ掛かりである「Plan(P)」(計画)を立てるために、頭を悩ませてしまうものではないだろうか。

 モヤモヤを押し殺して、何も感じないかのように日々過ごし続けると、それに慣れてしまい、感受性が落ちていってしまう。そうなってしまうと、何かを考え出すことができなくなり、急に「何か『Plan(P)』を考えろ」といわれても、既にどこかにあるものを探し出してきて、それをアレンジして、「Plan(P)」したかのようにして実践してしまう。しかし、「どこかにあったもの」を持ってきているだけなので、自分の言葉で語り尽くすことができず、なかなか人に伝えづらくなる。

 そういう状態は、つまり、自分も人も「ワクワクしない」ということだ。

 われわれは、マイクロモノづくりを実践するプロセスとして、「FTR」という考えを勧めている。「Feel(F)」(感じる)、「Think(T)」(考える)、「Run(R)」(実践する)の頭文字を取っている。

FTRとは?

 「Plan(P)」を立てるためには、まず「Think(T)」が必要がある。

 さらに「Think(T)」のネタ(材料)は、「Feel(F)」からくる。肉体は感覚器官であり、無意識かつ常に何かを感じ続けている。しかし、何か違和感を覚えることが生じると、モヤモヤしてくる。そういうことが誰にでもあるだろう。そこを突き詰めて、調べたり観察したりした後、自分なりに何かスッキリした原因が見つかったときに考えがまとまりだして、初めて「Plan(P)」に落とし込めるようになるものではないだろうか。

 「Feel(F)」「Think(T)」の過程で自分自身の中にあるモヤモヤしたものを見つめ、そこから取り出してきた「Plan(P)」に基いて「Run(R)」実践したことは、たとえ内容そのものが人にうまく伝わらなくても、何らかの感情、つまりワクワクは伝わるものである。そのようなワクワクは伝播(でんぱ)するものだ。そして、それがご縁につながるのである。

 モヤモヤを感じ取り、それを取り出していただくということを実際に体験していただくトレーニングを続ければ、少しずつモヤモヤに気付きやすくなり、取り出せるものも増えてくる。

 そして、それが何かしらの企画となり、形となっていく。何か新しいことにチャレンジする人はぜひ意識してみてほしい。

モヤモヤを取り除くワーク

(次回に続く)


Profile

宇都宮 茂(うつのみや しげる)

1964年生まれ。enmono 技術担当取締役。自動車メーカーのスズキにて生産技術職を18年経験。試作メーカーの松井鉄工所にて生産技術課長職を2年務めた。製造業受発注取引ポータルサイト運営のNCネットワークにて生産技術兼調達担当部長として営業支援に従事。

2009年11月11日、enmono社を起業。現在は、製造業の新事業立上げ支援(モノづくりプロデューサー)を行っている。試作品製造先選定、部品調達支援、特許戦略立案、助成金申請支援、販路開拓支援、プレゼン資料作成支援、各種モノづくりコンサルティング(設備導入、生産性向上のためのIT化やシステム構築、生産財メーカーの営業支援、生産財の販売代理、現場改善、製造原価、広告代理、マーケティング、市場調査、生産技術領域全般)など多岐にわたる。

Twitterアカウント:@ucchan

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