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» 2014年07月03日 10時00分 UPDATE

いまさら聞けない 電装部品入門(15):エアバッグ展開時の衝撃力はウサイン・ボルトの全力タックルと同じ (1/4)

自動車の安全システムとして知られるエアバッグだが、エアバッグが展開する際のさまざまなリスクはあまり知られていない。エアバッグ3部作の最終回である今回は、エアバッグ展開のリスクやエアバッグ搭載車についての注意点を紹介する。

[山本照久(カーライフプロデューサー),MONOist]
いまさら聞けない 電装部品入門

 前々回は、エアバッグの正式名称である「SRSエアバッグシステム」という言葉の意味や、車両内における設置位置、基本動作などについて、前回は、エアバッグが展開する条件や衝突安全ボディとの関係について説明しました。

 エアバッグ3部作の最終回である今回は、エアバッグ展開のリスクやエアバッグ搭載車についての注意点を紹介します。


エアバッグ展開のリスク

 ここであらためてイメージしてみてください。

 人類最速と言われているウサイン・ボルト氏を代表とする短距離走者が、100mを全力疾走する時と同じ速度のままであなたに突進してきたとしましょう。

 その速度を計算してみると時速約40kmとなりますが、何ごともなく衝撃を受け止められるでしょうか?

sp_140704densoparts14_01.jpg ※写真はイメージです

 普通の人であれば、衝撃とともに大きく後方へ弾け飛んでどこかにぶつかり、打ち所が悪ければ最悪の事態も考えられます。しかし、エアバッグとシートベルトの組み合わせは、それだけの衝撃力を受け止めるだけの役割を担っています。逆に言えば、それだけの衝撃力と同等の力を乗員に与えることで、衝突の力を相殺していると考えることができます。

 シートベルトを正しく装着していれば、エアバッグの衝撃を全て受けることはありませんが、もしシートベルトを装着していないとなると相当な衝撃を受けることになります。

 つまりエアバッグを展開させるという判断は、乗員にそれだけの衝撃を意図的に与えてしまうことになるのです。実際に、エアバッグの衝撃が主原因となって乗員が死亡した例も報告されているほどです。

 しかし、それだけのリスクを背負ってでもエアバッグを展開させるのは、乗員に加わる衝撃の大きさを「大」から「中以下」にするためです(多少のけがを負わせてでも、生命を保護するため)。

 仮にフロントバンパーがへこんでしまう程度の衝撃力で展開させるようなロジックになっていた場合、衝撃の大きさが「小」から「中」に上がってしまい、被害を拡大させる矛盾したシステムになってしまいます。

 さらに、現実的に金銭面から見た場合には、エアバッグが使い捨てのシステムであることが影響してきます。一度展開してしまうと、展開した後のエアバッグはもちろん、ユニットやその他付随品も一式で交換する必要があります(最低でも数十万円の出費になります)。

 フロントバンパーの交換だけであれば数万円で解決しますが、無意味にエアバッグが展開してしまうと数十万円の出費になります。修理費がその時の車体価格(査定額)を上回ってしまうと全損扱いになってしまいますので、「エアバッグが開いてなければ全損扱いじゃなかったのに!」という不本意な結果にもなりかねません。

 メーカー側がエアバッグを簡単に展開するシステムにしていないのは、こういったさまざまな理由があるからです。

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