「ミラ イース」のJC08モード燃費が35.2km/lに、軽エンジンで圧縮比12.2を達成エコカー技術

ダイハツ工業がマイナーチェンジした軽自動車「ミラ イース」は、エンジンに大幅な改良を施すなどしてJC08モード燃費を35.2km/lに向上した。これでスズキの軽自動車「アルト エコ」を上回り、ガソリンエンジン車のJC08モード燃費でトップに立ったことになる。

» 2014年07月09日 18時30分 公開
[朴尚洙,MONOist]
インジェクタを1気筒当たり2本にするデュアルインジェクタ

 ダイハツ工業は2014年7月9日、軽自動車「ミラ イース」をマイナーチェンジし、販売を開始したと発表した。「e:S(イース)テクノロジー」と呼ぶ独自低燃費技術のうち排気量660ccの軽自動車用エンジンに大幅な改良を施すなどして、JC08モード燃費を従来の33.4km/lから35.2km/lに向上した。これでスズキの軽自動車「アルト エコ」(関連記事:「アルト エコ」が「ミラ イース」に対抗、燃費35.0km/lを達成し6万円値下げ)を上回り、ガソリンエンジン車のJC08モード燃費でトップに立ったことになる。税抜き価格についても、キーレスエントリーやカーオーディオなどの装備や各部の加飾を省いた安価な「Dグレード」をはじめ従来通り据え置いた。

左の写真は、マイナーチェンジした「ミラ イース」の外観(「G“SA”グレード」)。右側の写真は、G“SA”グレードなどで選択できるようになった、ブラックシート表皮などをセットにしたメーカーオプション「ブラックインテリアパック」を適用した内装である(クリックで拡大) 出典:ダイハツ工業

 今回のエンジン改良で施された技術は、大まかに分けて、熱効率の向上を目的としたものとノッキングの回避を目的としたものに分けられる。まず熱効率の向上については、圧縮比を従来の11.3から12.2に高めた。加えて、混合気の渦流(タンブル)を強化するための吸気ポートの改良や、点火初期の火炎の広がりを拡大するための高着火スパークプラグを採用して熱効率をさらに向上させている。

インジェクタを1気筒当たり2本にするデュアルインジェクタ インジェクタを1気筒当たり2本にするデュアルインジェクタ(クリックで拡大) 出典:ダイハツ工業

 ガソリンエンジンは、高圧縮比化によって熱効率を向上できるが、それとともにノッキングも発生しやすくなる。今回のエンジン改良で11.3から12.2という大幅な高圧縮比化を図った以上、ノッキングを回避するために新たな技術を導入する必要がある。そこで新たに採用したのが、吸気バルブを閉じるタイミングを遅らせてポンピング損失を低減するアトキンソンサイクル化と、インジェクタを1気筒当たり2本にして噴射する燃料を霧状に微粒化し、燃焼を安定させるデュアルインジェクタである。

 1気筒当たり2本のインジェクタを用いるエンジンについては、スズキの「デュアルジェット エンジン」(関連記事:スズキが「デュアルジェット エンジン」を新開発、「スイフト」の燃費を2割向上)や、ホンダが「N-WGN」のエンジンに採用した「ツインインジェクションシステム」(関連記事:ホンダ「Nシリーズ」の新たな革新「N-WGN」、燃費性能で競合車種と肩を並べる)などがある。

 燃費は向上したものの、最高出力と最大トルクは小幅ながら減少した。従来は最高出力が38kW(6800rpm)/最大トルク60Nm(5200rpm)だったが、改良後のミラ イースでは、最高出力が36kW(6800rpm)/最大トルク57Nm(5200rpm)となっている。

 エンジンの改良以外では、走行時の空気抵抗を低減するためフロントタイヤの前に採用していた「タイヤディフレクタ」をリヤタイヤの前にも採用した。アイドルストップシステム「新エコアイドル」では、減速時のブレーキエネルギーを使って発電する「エコ発電制御」の制御を見直した。減速時の発電量を増やす一方で、アクセルもブレーキも踏んでいない慣性走行時の発電量を抑えるようにしたという。

トヨタの「高熱効率・低燃費エンジン群」との関係は?

 ガソリンエンジンの高圧縮比化、混合気のタンブル強化、アトキンソンサイクル化というと、トヨタ自動車が2014年4月に発表した「高熱効率・低燃費エンジン群」が思い起こされる(関連記事:トヨタの新開発アトキンソンサイクルエンジン、「マツダやホンダより高性能」)。同エンジン群のうち、排気量1.0lエンジンを製造しているのはダイハツ工業だ。

 今回の軽自動車エンジンの改良で、トヨタ自動車の技術が活用されているのか聞いたところ、「高圧縮比化、混合気のタンブル強化、アトキンソンサイクル化という文言だけを聞くと同じように思えるかもしれない。しかし、それを排気量660ccの軽自動車用エンジンで実現するには全く異なる技術が必要になる。つまり、当社の独自開発ということだ」(ダイハツ工業)という回答だった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.