インタビュー
» 2014年07月23日 10時00分 UPDATE

製品開発インタビュー:基板変更を繰り返して高めた感度、GPS+電波「GPW-1000」誕生までの苦労 (1/2)

世界で初めてGPS電波受信と標準電波受信を組み合わせた時刻取得システムを搭載した腕時計「G-SHOCK GPW-1000」が発売される。GPS電波受信の腕時計を実用的なモノとするため、開発陣が重ねた苦労とは。

[渡邊宏,MONOist]
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 世界で初めてとなる、GPS機能と標準電波受信機能のハイブリッドシステムを実現したカシオ計算機の腕時計「G-SHOCK GPW-1000」がまもなく販売開始される(2014年7月26日販売開始)。時刻合わせについて標準電波の受信とGPS電波を組み合わせ、「地球上のどこにいても正確な時間が分かる」腕時計だ。

 製品名にG-SHOCKの名を冠することから分かるよう、防水を始めとしたタフネス性能も備え、さらには二次電池(+太陽電池)による駆動で約18カ月の連続駆動を実現(パワーセービング状態時)。さまざまな環境下で時刻のズレや電池切れを気にせず使うことができる。

 日常生活の中、カーナビやスマートフォンなどでGPSの恩恵を受けているが、GPSを搭載した腕時計は消費電力やサイズに問題を抱えており、純粋な「腕時計」としての製品化事例はごく少数しか存在しない。カシオはどのようにして、横たわる課題を克服したのか。

photo G-SHOCK「GPW-1000」※画像クリックで拡大表示

 本製品にてモジュールの企画を担当した同社 時計事業部 モジュール開発部 モジュール企画室の岡本哲史氏、時計側からGPSについての設計開発・調整を担当した同開発部 第一開発室の川口洋平氏と尾下佑樹氏、GPSのLSIファームウェア開発を担当した同社 研究開発センター 第二開発部 第21開発室の松江剛志氏に話を聞いた。

photo 右からカシオ計算機 研究開発センター 第二開発部 第21開発室の松江剛志氏、モジュール開発部 第一開発室の尾下佑樹氏と川口洋平氏 ※画像クリックで拡大表示

「地球のどこでも正確な時間」のために必要だったGPS

――「いつでも腕時計の時刻を正確に保つ」その目的のため、現在では電波による時刻合わせを導入する製品が多くあります。GPW-1000ではなぜ、電波受信だけではなく、GPS電波を組み合わせたハイブリッド方式を導入したのでしょうか。

岡本氏 電波(標準電波)による時刻合わせを導入したカシオ製の腕時計は、世界6カ所にある電波塔すべてに自動対応する「マルチバンド6」まで進化しました。ただ、電波塔は世界に6カ所(日本に2カ所、米国、英国、ドイツ、中国にそれぞれ1カ所)にしかなく、電波の受信圏外だと正確な時刻を取得することはできませんでした。そこで、地球上ならどこでも受信できるGPSの導入を検討したのです。

――GPSを搭載した腕時計は既にカシオでも「PRT-1GPJ」(1999年)、「GPR-100」(2006年)など過去に製品化されていますし、他社からも登場しています。ですが、その数は多くありませんし、GPR-100では3時間時充電で4.3時間駆動など利用時間に問題を抱えていました。

岡本氏 ご指摘の通りです。ですので、新製品においては電波式腕時計と変わらぬ使い勝手と小型化を実現したいと考えました。

 使い勝手については大型電池を搭載することなく、内蔵した太陽電池での長時間駆動を目標とし、小型化についてはG-SHOCKとして一般的なサイズにすることを目標としましたが、その際に課題となったのが、受信ICを含む全体の低消費電力化とGPSアンテナの小型化です。

松江氏 本製品が搭載しているGPSチップはソニー製「CXD5600GF」をベースに、ファームウェアをカスタマイズして頂いたものです。CXD5600GFはもともとカーナビやスマートフォンといった腕時計よりも多くの電力を供給できる機器への搭載を念頭に置いたものだったので、電力の小さな時計に搭載して使うにはさらなる省電力化が必要となりました。

 省電力化において最も効果的だったのが、「時刻取得モード」の実装です。位置を取得するならば3衛星からの電波受信を必要としますが、時刻だけならば1衛星からの電波受信で問題ありません。受信時要件を位置測定よりも低くしたこのモードを実装することで、受信完了時間の短縮も実現できました。

川口氏 GPS電波の受信アンテナも小型のカスタム品を使用することで、小型化を図っています。

photo GPW-1000の基板。白い大きめの部品がGPSアンテナ、その右上にある黒いチップがGPSチップ「CXD5600GF」 ※画像クリックで拡大表示

岡本氏 基本的にGPW-1000は標準電波で時計合わせを自動で行い、電波を受信できないところでは手動によるGPS電波で時刻を取得する仕組みです。ですが正確な時間を保つため、できれば1日1回は時刻取得をしたいので、ある程度、強い光が当たるとGPS電波を自動受信とするようにしています。

 強い光が当たるということは太陽が出ている屋外にいることを意味しますので、そこならばGPS電波も受信できるだろうという考えです。

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