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» 2014年07月23日 11時00分 UPDATE

海援隊ではないけれど:研磨作業の効率改善が中小製造業を救う!? 研磨アドバイザー集団「研援隊」の挑戦 (1/2)

中小製造業の現場で課題となっている人手不足。すぐに人手不足が解消しない以上、当面の対応は業務効率の改善になってくる。そこで、中小製造業で広く利用されている「研磨」プロセスの業務効率を大幅に高めるべく、新たな提案活動を始めたのが住友スリーエムの研磨材事業部だ。同事業部が結成した研磨アドバイザー集団「研援隊」の取り組みについて担当者に聞いた。

[陰山遼将,MONOist]
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 中小製造業の現場で課題となっている人手不足。限られた労働力で、いかに効率よく業務を進めるかは、企業の競争力を保つ上で重要な問題だ。住友スリーエム(以下、住友3M)の研磨材事業部は、同社の研磨材製品を用いたユニークな取り組みで、「研磨作業」という視点から中小製造業に対して現場での労働生産性の向上を提案している。その取り組みについて、住友3Mの研磨材製品事業部 マーケティング部 マネージャーの山根宏太氏に聞いた。

現場の作業効率の改善で中小製造業の経営をサポート

rk_140710_3m_yamane.jpg 住友3M 研磨材製品事業部 マーケティング部 マネージャーの山根宏太氏

 住友3Mの研磨材製品事業部は2012年5月から、研磨アドバイザー集団「3M 研援隊(以下、研援隊)」を結成し、全国の中小製造業を訪問して同社の研磨材製品のデモンストレーションを行っている。その目的は、中小製造業の研磨工程における生産性の改善だ。山根氏は「今後、景気の回復などにより中小製造業者への受注数が増した場合、経営的な観点からすぐに人手を増やすという判断ができない場合もあると思う。そこで住友3Mは、研磨材製品を通して、今現場で行われている業務工程や作業効率を改善することで中小製造業の経営をサポートしていきたいと考えた」と話す。

 住友3Mが研援隊を結成し、「研磨工程」から現場全体の生産性を向上させることができるのではないかと考えた動機は何だったのか。それは、ある製品の開発がきっかけだったという。

キュービトロンII

rk_140708_3m02.jpgrk_140708_3m02.jpgrk_140708_3m02.jpgrk_140708_3m03.jpg 住友3M「キュービトロンII シリーズ」の 「ファイバーディスク 982C」(左)と「ロロック ファイバーディスク 982C」(右)。ロロック ファイバーディスクは、電動ディスクグラインダーに工具不要で装着することができる(クリックで拡大)

 その製品とは、住友3Mが2012年2月から販売している塗布研磨材「3M キュービトロンII」だ。この製品には、米国の3Mが独自開発した精密成型砥粒(PSG)が用いられている。従来の研磨砥粒は、使用していくうちに研磨に必要な砥粒の角が丸みを帯びて消耗していくのが一般的だった。しかしこの精密成型砥粒は、特殊なセラミックス原料からできたナノレベルの微細砥粒を結晶化したもので、使用していくと徐々に剥離しながら常にシャープなエッジを保てるという性質がある。

rk_140710_3m04.jpg 住友3M「キュービトロンII シリーズ」に採用されている、精密成型砥粒(PSG)(クリックで拡大)出典:住友3M
rk_140710_3m_graph.jpg 住友3Mが行った、一般的なオフセット砥石と「キュービトロンII ファイバーディスク 987C」の研削時間の比較実験(クリックで拡大)出典:住友3M

 この研磨砥粒により、キュービトロンII シリーズは従来の製品に比べ高い研磨性能を維持できるとともに、研磨や研削にかかる時間を大幅に短縮することが可能だという。その例として、住友3Mが行った100gのステンレスの研削にかかる所要時間を比較した実験では、一般的なオフセット砥石は20分かかったのに対し「キュービトロンII ファイバーディスク 987C」では5分で研削できたとしている。住友3Mは2014年6月に、この精密成型砥粒を用いた砥石も発売している。

rk_140708_3m05.jpg 「3M キュービトロンII オフセット砥石」(クリックで拡大)

 山根氏は「キュービトロンIIの開発段階で、実際の工場で職人の方に使用してもらう機会を設けた際、中小製造業の現場で行われるさまざまな作業工程のうち、研磨作業が占める時間の割合が大きいことに気が付いた。また、多くの現場で『研磨にはこのくらいの時間がかかるものだ』という固定観念があることも分かった。そういった研磨作業の現状を、住友3Mの技術によって変革できれば、製造現場の労働生産性の向上に貢献できるのではないかと考えた」と話す。

 このことをきっかけに、住友3Mの研磨材事業部はキュービトロンIIを発売して以降、研磨作業を行う現場を訪問していった。しかし訪問先でキュービトロンIIの説明を行うと、辛辣(しんらつ)な反応が返ってくることも多かったという。そこには、研磨作業にかかる時間に対する固定観念に加え、もう1つ「現場の習慣」という壁があった。

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