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» 2014年07月30日 10時00分 公開

再生請負人が見る製造業(2):アップルにあって日系電機メーカーにないものは何か? (1/5)

企業再生請負人が製造業の各産業について、業界構造的な問題点と今後の指針を解説する本連載。今回は苦境が続く日系エレクトロニクス産業について解説する。

[小野寺寛/アリックスパートナーズ・アジア ディレクター,MONOist]
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 ゼネラルモーターズや日本航空、ライブドアなど多くの企業再生を手掛けてきた企業再生のプロであるアリックスパートナーズが、企業再生の手法、製造業各業界の状況について解説する本連載。前回の「迫る破綻のカウントダウン! その時、企業再生のプロはこうやって企業を再生する」では、企業再生の手法について紹介した。今回からは具体的に製造業の各産業について、業界構造的な問題点や、その解決策を紹介する。まずは苦境が目立つ日系エレクトロニクス産業について、解説する。




8年で4.5兆円を失った日本の大手企業、復活はいまだに遠い

 前回は、日本の製造業共通のテーマとして、3つのポイントから、構造改革、経営再建を迫られていることを説明した。そこで述べたのは資金の流れが急速に変化する中で、生き残りのためには改革が待ったなしになっているということである。そして日本企業にとって、成長のためのグローバルでのポジショニング獲得と足元の国内事業の徹底的な効率化が必要であることを解説した。

 このような状況の中で最も深刻なのは、日本のエレクトロニクス産業である。国内市場の成長がスローダウンし、グローバルでのポジションが獲得できない中で、多くの企業が売り上げ成長を達成できていない。結果として特別損失を計上しながら内部留保を取り崩している状態である。

 ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機(2009年12月にパナソニックの子会社に)といった日本を代表する企業4社の状況を見ると、2005年3月期(2004年度)末から2013年3月期(2012年度)末までの8年間で、合計4.5兆円の内部留保(利益剰余金)を失っている。2013年度から2015年3月期(2014年度)にかけては、円安効果もあり危機的状況から脱しつつあるように見えるものの、現在ようやく出血が止まったという状態だ。「復活というにはほど遠い」というのが正直なところである。いまだにビジネスモデルの大転換を迫られている状況には変わりはない。しかも生き残りをかけた次の成長戦略の立案と実行開始までの時間がどんどん無駄に失われている状況である。

 エレクトロニクス産業の世界的企業に目を向けると、B2Bでビジネスモデルを変革して活路を見いだす米国GE、ドイツSiemens、フィンランドNokiaといった企業、B2Cで大きく成長する米国Apple、韓国Samsungおよびそれに続く中国メーカーという大きく2つの企業群に分類できる。その一方で、これらのどちらの方向性に進むのか、またこれらにない新たな道を生み出していくのか、日本企業は将来にわたって勝てる戦略をまだ見つけられていないといえる。

B2Bに活路を見いだすも

 日本のエレクトロニクス企業は、欧米では今でもB2Cのガリバーだと認められている。事実過去40年以上という長期間にわたって、B2C市場を席巻してきたのでそれも当然だ。ただ最近10年間は、日本企業は高品質・高価格であるハイエンド製品でポジショニングを築き、そこを生存領域として維持しようとしてきた。しかし、世界市場においては、安い賃金でそれなりの品質を維持するローエンドに強い企業が低価格帯を制圧。徐々に高付加価値帯にも浸食を開始したため、日本企業の生存領域が一気に縮小してきたというわけである。

 そのような状況の中で、いくつかの日本企業はB2Bシフトを戦略的な方向性としているように見える。しかし、実際にはほとんどの企業において、B2Cビジネスが急激に縮小しているだけで、B2Bビジネスが成長しているわけではない。逆に言えば、B2Bビジネスは多くの企業が考えているような魅力的な領域というわけではなく、B2Bで勝つためには新たな成功の鍵を獲得する必要がある。しかし、ほとんどの企業においては、それをまだ果たせていない状況であるといえる。

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