もうやめて! 「あっち向いてホイ」なQC矢印の乱用甚さんの「コミュニケプレゼン」大特訓(11)(4/4 ページ)

» 2014年08月08日 10時00分 公開
[國井良昌/國井技術士設計事務所(Active Design Office),MONOist]
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 さらに決定的な“悪しき事例”を紹介しましょう。

甚さん

そんじゃよぉ〜。次は決定的な事例を紹介しようじゃねぇかい! お二人さんとも覚悟はいいな? 図3を見ろ! 図3(7)(8)に文章を入れてみやがれ! 今度は接続詞じゃねぇぞ。文章だぁ!!


外国人技術者が悩む“日本人が多用するQC矢印”(その2) 図3 外国人技術者が悩む“日本人が多用するQC矢印”(その2) ※画像クリックで拡大表示
良君

(やれやれ、どれも小学生レベルの問題だな!)それでは、解答しますしますよ〜。(7)(8)も同じです。「昨日の弁当は美味しかった!」……でしょ!


エリカ

あっ、私も同じだわ! でもなんか、簡単過ぎるけど? やっぱり変かな?


甚さん

2人とも、残念!! そんじゃ、答えを発表するぜぃ! (7)は「昨日の弁当は美味かった!」で、(8)は「昨日の弁当は超まずかった!」だぜぃ!


エリカ

えっー! 図3における左側3つの文章は、上下とも同じですけど? でも、接続詞が異なるわね!


 エリカちゃんの言う通りです。つまり、矢印の意味がいかようにでも解釈できてしまうのです。この事例が、外国人技術者の最大の悩みでした。

 矢印とは、道路標識や非常口などのように場所/方向を示すもの、あるいは因果(いんが)を表現するものです。因果とは、原因と結果、過去と現在を示します。

甚さん

おう、良君! 即納得しただろがぁ? そんじゃ、ちょいとまとめてみやがれ!


良君まじめ

合点承知! QC矢印とは、本人しか分からない“自己都合の矢印”であること。そして、パワポ上の矢印は、“方向と因果を表現するときのみ使用する”こと。


甚さん

さすが、富士山麓大学の主席の院卒だぁ! 図面読めねぇ、図面描けねぇ院卒とは、とても思えねぇ理解力だぜぃ。


エリカ笑

国木田さんってやっぱり、すごいわ! 甚さん、それではどのような矢印ならいいのかしら? 具体例を教えてくださいますか?


甚さん

ホイ来たどっこい、これでどうだ! 図4は、プレゼン用パワポの好感見本だぁ!


パワーポイントの代表例 図4 パワーポイントの代表例 ※画像クリックで拡大表示

 それでは、図4が好感見本である理由を以下に列挙します。

図4の解説

1.字体の選択:HG丸ゴシック-Proよりも、MSPゴシックがベター(連載第10回を参照)

2.目線の開始:シートの左上から目線の開始となるよう工夫する。そのためには、サブタイトルの文字の大きさに24ポイントは必須である(連載第10回を参照)

3.サブタイトルの文字:前述のように24ポイントに設定

4.目線の移動:サブタイトルから次に移る目線の移動は、右か下かに分かれる。本シートは、下へ移動するように矢印で誘導した

5.説明文の文字:20ポイントに設定。行間は1.5では空き過ぎと判断し、1.2に設定した(連載第10回を参照)

6.色付け:パステルカラー3色(赤、青、黄)を使用した。色付けは、3色前後が限度であり、5色では品格を落とす。原色の使用は避けたい

7.図表の掲載:シート右上に位置する、文字の読めない図表は、あえて読めなくする。その代わり、質問を想定し事前に拡大した図表を準備しておくこと(連載第6回のPDPCの応用)

8.人物写真:聴衆は、どうしても人物に目線が行く。また、女性写真に視線が行く。つまり、メインではない人物写真ならば白黒にする

9.アニメーション:品格を落とすアニメーションは使用しないこと


良君

えっ? パワポのアニメーションも禁止なんですか?


甚さん

パワポのデビュー当時はよかったけどよぉ〜。今どきのアニメ使用はダセーってもんよ。オメェもオジン臭くなったぜぃ、あん?



 以上、今回の内容で「甚さんの『コミュニケプレゼン』大特訓」は終了となります。現在、新たな連載を企画中ですので、次の機会にまたお会いしましょう! さようなら(連載完)。


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Profile

國井 良昌(くにい よしまさ)

技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会、埼玉県技術士。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。

1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)をはじめとする多数の書籍を執筆。




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