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» 2014年08月13日 11時00分 UPDATE

エア楽器:大切なのは「アイデア」「実用性」「完成度」、大阪大学大学院のZigBee実習

情報科学系の大学では実際に手を動かし、何かを作る機会は多くない。だが、大阪大学大学院ではZigBeeの評価ボードを用いて、センサーネットワークの構築と組み込みプログラミングを学ぶ実習が行われている。その成果発表を紹介する。

[渡邊宏,MONOist]
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 大学教育における情報科学系のカリキュラムと言えば、基本的には論理の学習が中心となり、実際に手を動かして何かを作り、学ぶという機会はさほど多くない。

 しかし、大阪大学大学院の情報科学研究科で博士前期課程1年生を対象に行われている「情報ネットワーク学演習I」では、短距離無線規格であるZigBeeの評価ボードを用いて、センサーネットワークの構築と組み込みプログラミングを学ぶ実習が行われている。ここでは2014年7月末に行われた、その成果発表を紹介する。

 学生たちの成果発表を紹介する前に、使用された評価ボードを紹介しよう。学生たちが課題のために使用したのは、8ビットマイコンとZigBeeのプロトコルスタックを備えた、フリースケール・セミコンダクタ「MC13237」搭載のボードだ。演習を受講している学生たちはこのボードを使い、グループで「何ができるか」を話し合い、実際に手を動かして無線によるセンサーネットワークを活用したアプリケーションを作り出す。

photo 学生たちが使用したフリースケール・セミコンダクタ「MC13237」搭載のボード

 情報ネットワーク学演習Iの締めくくりはコンテスト形式となっており、実際にZigBeeの評価ボードを使ったネットワークを構築するだけではなく、どのような目的に利用するかという「アイデア」、その「実用性」、構築したアプリケーションの「完成度」、さらには取り組みを紹介する「プレゼンテーション」と作成した実機を使った「デモンストレーションのうまさ」まで含め、トータルで審査の対象となる。

photophoto 熱の入ったプレゼン。プレゼンも審査対象となるので各班ともに力が入っている

 今回は6班が発表を行ったが、その内容は「バーチャル徒競走」「トイレの空き個室検出」「トイレットペーパーの回転検知」「エアギター」「居合切りゲーム」「色センサーを使った色探しゲーム」などと実にさまざま。各班ともに各種のセンサーとZigBeeの無線ネットワークを組み合わせた、アイデアにあふれるアプリケーションを披露した。

 優勝した4班の「Invisible Musical Instruments」は、人の動きをセンサーで把握し、音に還元するというもの。ギターを模したシステムになっており、左手の測距センサーで弦を抑えた位置を測定し、右手の加速度センサーで弦をはじく動きを測定。その2つのセンサーから得られた情報をコマンダーに送信し、PCから音を出す。

 実演もスムーズで、さらには応用例としてギター以外の音色も用意して披露するなどデモの完成度も高く、また、審査員からは2種類のセンサーを同時に使うという挑戦、“楽器”という楽しいことへの挑戦という2つの挑戦を評価する声が高く、優勝となった。

photo 優勝を勝ち取った「Invisible Musical Instruments」 左右の手の動きでギターを演奏すると、後ろのPCから演奏したままの音が出る
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 惜しくも準優勝だった2班の「RSMA/CA(Restroom Sence Multiple Access / Collision Avoidance トイレ感知多重アクセス/衝突回避方式)」は、トイレ個室に取り付けた磁力スイッチで個室の空きを検知、複数フロアの複数トイレ個室の空き状況を知ることができるシステム。

 公共施設内では1フロアに複数のトイレ個室があることから、フロアごとにコマンダーを配置して冗長性を持たせた他、プレゼンでは現在地を中心としてトイレの所在を教えてくれるスマホアプリとの連携も提案するなど、発想と実装のいずれも高いレベルにあった。加えて審査員からは複数フロア間のホッピングを評価する声もあり、その進歩性も評価された。

photo 2班の「RSMA/CA(Restroom Sence Multiple Access / Collision Avoidance トイレ感知多重アクセス/衝突回避方式)」
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 コンテスト終了後、参加した各班に「実現するまでに一番手間取ったのはどこか」と聞いてみたところ、ほとんどの答えがセンサー周りの実装で、アプリケーションのアイデア(企画)やネットワークについて苦労した、あるいは時間を割いたという答えは少なかった。

 確かに情報科学科の学生にとって、センサーを取り付け思い通りの測定を行う作業は時間的な問題からも、やや荷が重かったのかもしれない。これは筆者の意見だが、加速度や測距など利用頻度が高いと思われるセンサーについては制御サンプルなどを教員側が事前に用意した方がよいのかもしれないと感じた。

 ただ、「実際に手を動かし、試行錯誤する」というのは教員側の狙いでもある。

 指導教員の1人である大阪大学 大学院 情報科学科 先進ネットワークアーキテクチャ講座 助教の大下裕一氏は「ネットワーク専攻だと理論だけになってしまうが多いので、実機に触れることで、理論と実際にギャップがあることを知ってほしい」と学生への期待を述べる。

photo 「Invisible Musical Instruments」で見事優勝した4班

 ちなみに大阪大学 大学院 情報科学研究科とフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは2006年に行った共同演習授業を皮切りに、同社が同研究科の演習に何度か協力するなど、継続的な協力関係にある。これまでは基本的にプロジェクト単位での協力であったが、同社ではより全面的・継続的に学校と学生を支援する「Freescale University Program」を海外先行で開始しており、間もなく日本でも本格的に開始する予定だ。

 日本国内におけるFreescale University Programでは評価ボードや開発ツールの貸し出しはもとより、情報交換を行うサイトの設置(英語版は既に稼働中)、エンジニアによるトレーニングの実施といった教員支援なども行う予定で、「学生はもちろん、教員の方にもフリースケールの技術に親しんでもらいたい」と同社では産学協同に期待を寄せている。

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