「全ての工程を日本国内で」――日本の技術力を注ぎ込んだiPhoneケースとはMade in Japanの技術力(2/2 ページ)

» 2014年08月18日 12時00分 公開
[陰山遼将/小林由美,MONOist]
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徹底したこだわりを支える技術力とは?

 半年以上の製作期間を費やしたというクアトロバンパーは、超々ジェラルミンA7075の塊を100分の1mmの加工精度で削り出している。最薄部は0.23mmで、側面のパーツに施されたディンプルは最新の5軸加工機で切削されている。重さは17gで、表面には陽極酸化処理が施されており、しっとりとした手触りが実現された。

 クアトロバンパーの大きな特徴は、この製品のために開発された「ITOIGAWAラッチ」によって、4つの金属パーツをネジや工具などを使わずに装着することができる点だ。試作段階では、ラッチの設計を何十通りも検討したという。現在、特許を出願中で今後別の製品に活用することも検討しているそうだ。

「SQUAIR Duralumin Mesh Case for iPhone 5s/5」のブラック。5軸加工機でメッシュ状に加工されている(クリックで拡大)

 新製品発表会の会場で、ITOIGAWAラッチの生みの親であるナカダクラフト(岐阜県岐阜市)の糸井川敏行氏に話をうかがった。ジュラルミンメッシュケースは、曲面部分に穴を開ける際、1つ1つの穴に対して刃を当てる角度を計算し、使用する刃のサイズも角度に合わせて変更するという徹底したこだわりで製造されている。通常、これほど綿密な手順で加工を行うと多くの時間がかかってしまう。そこで同氏は、「このSQUAIRブランドのiPhoneケースを製造するために5軸加工機を自動化させ、加工時間を短縮することでモノづくりへのこだわりと生産性を両立させた」という。

かつては「Made in Japan」ではなかった

 DAQがiPhone/iPadのブランドを初めてスタートしたのは2010年9月だった。それ以前は、Tシャツのネット販売をしていたが、季節に左右されやすい商品で、しかも価格競争が非常に激しく、売り上げは頭打ちにとなり、ビジネス的に大苦戦していたという。そんな折、アップルからiPadが初めて登場。市場にその専用アクセサリーがまだ少なかったころ、「小売業ではなく、モノづくりがしたい」と思い立ち、知人に相談しながらブランドをスタートさせたという。そうして生まれたのが、iPhone/iPad向け専用ケースブランド「IRUAL」だった。

「IRUAL」のiPad(第3世代)専用ケース「iPad専用スマートカバージャケット for The new iPad」(左)と「IRUAL Hard Case for The iPad mini」(右)(クリックで拡大)

 IRUALの製品はSQUAIRとは違い、樹脂製。立ち上げ当時は、今のように日本国内の町工場のつてがなく、中国で生産を開始した。実は、その当時からSQUAIRの原案である金属製の高級iPhoneケースのアイデアもあったが、国内の町工場はどこも真剣に取り合ってくれなかったという。ただし、現SQUAIRメンバーである表面処理業の三和メッキ(福井県福井市)の清水栄次氏だけは、首を縦に振っていたという。

 「中国の工場探しも苦戦した。ただ、数を当たっていくうちに、日本人以上にガッツのある人材との出会いがあった。前例がないことでも、どんどんチャレンジしてくれた。日本人は、リスクのことばかり言及し、実際やってみてもいないうちに、辞退してしまう」(後藤氏)。

「IRUAL MESH SHELL CASE for The iPad Air」(クリックで拡大)

 また中国と日本とでは、「不良率」の考え方が大きく異なるという。日本では不良率を極力0に近づけていくことを理想としているが、中国では、良品数を重視する。不良率20%であっても、とにかく数を多く作り、要求された良品数を確保し、不良品は自社で廃棄するという考えだ。もちろん、どちらにも利点と欠点があるが、金型的にもチャレンジが多かったIRUALの場合は後者がマッチした。とにかくチャレンジしてもらえないことには、前に進めなかったからだ。ただし、コストの交渉は必要となる。中国の工場とのやりとりで発生したトラブルを乗り切るには、その場で交渉できること、決断できることも大事だという。

 IRUALの生産コストについては、種類を増やさない「単品ブランド」とすることで金型を増やさないようにし、単価を抑えることでコントロールしているという。

 リリース後のIRUALは売り上げを順調に伸ばし、成功を遂げたことで日本の工場もだんだんと話を聞いてくれるようになったという。この成功こそが、今日のSQUAIRの下支えとなっている。そして、SQUAIRのコンセプトに賛同した町工場の人たちは、DAQとやりとりのある中国の工場を訪問した際、ガッツあふれる人たちに触れ、大いに刺激を受けたという。こうした経験と出会いが“Made in Japan”へのこだわりをさらに強め、今回の新製品の実現につながったのであろう。

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