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» 2014年08月29日 09時30分 UPDATE

車載半導体:ルネサスが次世代サラウンドビュー向けSoCを開発、全方位をリアルタイムで認識 (1/2)

ルネサス エレクトロニクスは、次世代サラウンドビュー向けSoC(System on Chip)「R-Car V2H」を開発した。同社の車載情報機器向けSoC「R-Carファミリ」の技術を応用し、先進運転支援システム(ADAS)向けに展開する製品群の第1弾となる。

[朴尚洙,MONOist]
ルネサスの大村隆司氏

 ルネサス エレクトロニクスは2014年8月28日、東京都内で会見を開き、次世代サラウンドビュー向けSoC(System on Chip、システムLSIとも)「R-Car V2H」を開発したと発表した。同社の車載情報機器向けSoC「R-Carファミリ」の技術を応用し、先進運転支援システム(ADAS)向けに展開する製品群の第1弾となる。サンプル出荷は同年9月から始める。サンプル価格は5000円。量産は2016年10月から開始し、2017年10月には月産50万個を計画している。

 サラウンドビューとは、車両の前後左右に搭載した車載カメラの映像を使って、低速走行時や駐車時などに車両周辺の状況を表示する自動車の安全システムだ。日産自動車の「アラウンドビューモニター」や、トヨタ自動車の「パノラミックビューモニター」などが知られている。次世代サラウンドビューでは、より高精細な車載カメラを用いるとともに、他の車両や歩行者、障害物をリアルタイムで認識するなどして、現在よりもさらに高機能になることが予測されている。

ADASの開発動向(左)と、サラウンドビューや、ルネサスが次世代サラウンドビューと位置付けるサラウンドモニタリングの重要性(クリックで拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス
ルネサスの大村隆司氏 ルネサスの大村隆司氏

 同社の執行役員常務で、車載分野向け製品を担当する第一ソリューション事業本部長を務める大村隆司氏は、「当社は、自動車の走る・曲がる・止まるをつかさどる制御と、クラウド(IT)などから車載情報機器を経由して得る情報の融合による『賢いクルマ』の実現に向けて製品を開発している。制御に用いられるマイコンは世界シェア40%を確保し、車載情報機器向けSoCの世界シェアも70%に達する。今回発表するR-Car V2Hは、カーナビゲーションシステムなどの車載情報機器向けを中心に展開してきたR-Carファミリのさらなる発展性を示す製品であり、次世代サラウンドビューに必要な車両周辺の状況をリアルタイムにモニタリングする機能を1チップに集積した」と語る。

ルネサスの車載向け事業の方向性(左)と「R-Car V2H」の特徴(クリックで拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス

マルチメディア機能は搭載せず

 R-Car V2Hは、ARMのアプリケーション処理用プロセッサコア「Cortex-A15」をデュアルコア構成で搭載する。最大動作周波数は1.0GHzで、処理性能は7000DMIPSである。R-Carファミリの第2世代品である「R-Car H2」(関連記事:「自動車分野は中核事業」、ルネサスが9コア搭載の車載情報機器向けSoCを発表)や「R-Car M2」(関連記事:ルネサス、統合コックピット向けソリューションでカーナビ用SoC「シェア75%維持目指す」)のように「SH-4A」コアは搭載していない。グラフィックス機能は、3DがImagination Technologiesの「PowerVR SGX531」で、2Dがルネサスグラフィックスプロセッサとなっている。メモリはDDR3-SDRAMだが、データバス幅は32ビット×1チャネルである。

 R-Car V2Hのアプリケーションプロセッサとグラフィックス機能の処理性能は、R-Car H2やR-Car M2よりも低い。「ADAS向けなので、他のR-Carファミリのようにマルチメディア機能は搭載していない」(大村氏)ものの、サラウンドビューに必要な画像認識や視点変換の処理エンジンや、高精細な車載カメラの映像信号を伝送するのに用いるデジタルビデオ入力や車載イーサネット「Ethernet AVB」のインタフェースなどを搭載している。

次世代サラウンドビューのために「R-Car V2H」に集積された機能 次世代サラウンドビューのために「R-Car V2H」に集積された機能(クリックで拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス

 画像認識エンジンはR-Car H2で初採用した「IMP-X4」を搭載。現在量産販売されている車両のサラウンドビューに用いられているSoC「SH7766」(関連記事:車載画像認識SoCの新製品発表が相次ぐ、トップビュー向けに機能を最適化)の画像認識エンジン「IMP-X2」と比べて処理能力は8倍に達し、画像処理や画像認識向けのC言語ライブラリであるOpenCVをサポートすることでルネサスから提供する関数の数は400まで増えた。ユーザーが独自に実装したい画像処理や画像認識の機能も、OpenCVを使えば容易に開発できる。

ルネサスの画像認識エンジンの開発ロードマップ(左)。「IMP-X4」は、「IMP-X1」の24倍、「IMP-X2」の8倍、「IMP-X3」の3倍の性能がある。ルネサスが提供する画像認識ライブラリの数も着々と増えている(クリックで拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス

 視点変換エンジンの「IMR」は、6個のデジタルビデオ入力インタフェースそれぞれに独立して搭載されているので、視点変換時にアプリケーションプロセッサやグラフィックスプロセッサには負荷を掛けずに済む。

 なお、R-Car V2Hは、現行のサラウンドビューに用いられているVGAサイズ(640×480画素)のアナログ方式の車載カメラには対応していない。より高精細なCMOSセンサーを使ったデジタル方式の車載カメラを使ったサラウンドビュー向けに展開する。国内市場で広く用いられている現行のサラウンドビューについては、SH7766で対応するとしている。

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