ウェアラブル端末とモノのインターネットは「現場」の救世主となるか?【後編】現場革新 次の一手(3/4 ページ)

» 2014年09月01日 08時00分 公開

機械学習による映像や音声の自動認識の可能性

 本稿の冒頭で述べたように、ウェアラブルによる映像の収集は現場作業の改善に利用できる。ただ漫然と撮影していた映像にどんな価値があるかと思われるかも知れないが、最近では映像情報を機械学習させて、特定パターンを抽出する技術開発が進んでいる。従来は、ターゲットとするデータやパターンを事前にコンピュータに認識させて、それに合致あるいは類似するパターンを抽出していたが、この手法では人間が事前に認識させる必要はない。あくまでもコンピュータが自発的にパターンを割り出すのである。

 著名な例はGoogle社のDeep Learningで、この研究では特定のパターンを含む大量の画像を見せ続けることで、そのパターンに良く反応するニューロンを生成することに成功した(図4)。

photo 図4:複雑なパターン認識を行うニューロンネットワークの生成 (出典:Nature, Computer Science: The learning machines, 2014/01/08)

 このことは、ウェアラブルによる映像収集が、現場作業の効率性改善や安全性向上に貢献する可能性があることを示している。しかも、今まで人間が気付かなかった要素や傾向をコンピュータが割り出せるという点に新しさがある。このような機械学習は、映像にとどまらず音声に対しても有効で、Android端末の音声入力、AppleのSiriやMicrosoftの音声認識技術には、このDeep Learningが活用されている。

量子コンピューティングのブレイクスルー

 先述した機械学習は、材料として大量のデータが必要となるが、加えて処理するハードウェアにも高速処理能力が求められる。現在のスーパーコンピュータには得意領域と不得意領域があり、流体シミュレーション・創薬シミュレーション、天気予報などは得意なのだが、一方で離散値の最適化問題、人工知能、そしてこの機械学習も不得意な領域であるといえる。Googleは、機械学習その他の研究目的のために、量子コンピュータ(D-Wave two)を購入し、NASAと共同で研究所を開設したとされている。

 量子コンピュータは、量子並列性という量子物理学ならではの現象を活用し、NP問題と呼ばれる、元来のコンピュータでは時間がかかり過ぎる問題を解く領域で活躍が期待されている。機械学習においても「組み合せ最適化問題」と呼ばれるNP問題の一種が頻繁に登場するため、量子コンピュータへの期待は大きい。

 現時点での量子コンピュータについては、その技術や性能について一部懐疑的な意見もあり、本当に効果を上げられるのはまだ先のことと思われるが、有力な技術ブレイクスルーと目されている(関連記事:量子コンピュータ実現に向け大きな前進――超大規模量子もつれの作成に成功)。

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