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» 2014年09月16日 10時00分 UPDATE

3D CAD仮想化:設計環境のグローバル化を加速させる、デスクトップ仮想化

設計環境のグローバル化が進む中、3D CADのデスクトップ仮想化(VDI)が、注目を集めている。グローバルに事業を展開する製造業各社がVDI採用を拡大する中、導入に当たってはどのような注意が必要になるだろうか。インフラを支える3社が、ポイントを紹介する。

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ブレイクスルーとなったGPU仮想化技術

 なぜ今3D CAD環境のデスクトップ仮想化(VDI)が、これほどまでに注目を集めているのだろうか。それには製造業のビジネス環境の変化によるニーズと、これらの要望に応える技術がそろってきたこと、の2つの背景がある。

 日本の製造業は、以前からグローバル展開を進めてきた。当初は工場の建設などから入る場合が中心だったが、グローバル化の流れが加速する中で、設計拠点も海外展開するケースが増加してきた。求められる製品の品質、機能は地域によって異なり、ローカライズを行う必要性が高まったためだ。しかし、各地で設計を行っても、設計品目が共通化できなければ、単純にコストがかさむだけになる。そのため、グローバルに散らばる設計拠点、生産拠点をつなぎ、設計データなどの情報共有を図ることが重要になってきたというわけだ。

 そこで課題となってきたのが、データ管理やセキュリティの問題だ。3D CADなどの設計データは非常に大きなファイルサイズとなり、拠点間でのデータのやりとりは、通信環境によっては非常に負担が大きくなる。設計者にとっては待ち時間ばかりが長くなりがちだ。また、拠点が各地にできると、さまざまなデータを統一して管理することが難しくなる。結果としてデータは各拠点で管理する形になり、PDMのマルチサイト化など多くのコストが発生する要因になっていた。

 さらに、設計データが各拠点に分散して管理されることにより、データ漏えいリスクも高まる。ある拠点から漏えいした設計データを使い「その企業が製品を発売する前に、既に他の企業から全く同じ外観の製品が発売されてしまう」などという悪夢のような状況が発生する可能性さえある。

photo 伊藤忠テクノソリューションズ エンタープライズビジネス第3本部 製造技術第2部 の仲村公孝氏

 そのため「3D CADやBOMのデータを1カ所に集め、各国、各拠点からアクセスするようなソリューションは以前から強く求められていました」と、伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)で多くの3D CADシンクライアントシステム導入を支えてきたエンタープライズビジネス第3本部 製造技術第2部 の仲村公孝氏は述べる。

 これらの取り組みの中、CAD環境のVDIにも注目が集まってきた。ただ1つのGPUをそのまま仮想マシンに割り当てるGPUパススルー技術では、サーバ当たりの集約率が低く、非常に高額なシステムが必要だった。

 これらのブレイクスルーにつながったのが、GPU仮想化(vGPU)技術の登場だ。GPUベンダーのエヌビディアは、2013年末にグラフィックス仮想化技術「NVIDIA GRID vGPU」の提供を発表した。同技術は、1つのGPUを複数に分割し、それぞれの求めるパワーに応じたデスクトップ環境を提供する技術である。さらにこれと連携するVDIソリューション「Citrix XenDesktop」およびその仮想化基盤「Citrix XenServer」なども登場。これにより3D CADを稼働させるのに必要なグラフィックス処理能力を自由に割り振り、VDIで利用できるようになった。ようやくVDIで3D CADをユーザーの要求を満たす形で利用できるようになったわけだ。

管理やコストダウン、現場の使い勝手など各方面にメリット

 それでは、3D CADにおいてVDIを導入するメリットには何が考えられるだろうか。経営視点から見ると、BCP(事業継続計画)やセキュリティ対策が挙げられる。突然の災害があった場合や、サイバーテロなどにあった場合でも「製品の競争力に直結する製品データを守る」という考え方だ。また設計中の製品の数や開発フェーズによって変動する設計人員の増減に柔軟に対応するという考えもある。3D CADソフトは安価ではない一方、常に同一の設計者が使用しているわけではない。設計者ごとにワークステーションがあってもCADライセンスはその半数ということもある。この端末の稼働率を上げるという狙いだ。

 一方、設計者の観点で見ると、各拠点間でのデータの共有に必要な時間を短縮したいという動機が大きいだろう。重くて場所を取るワークステーションの管理の面倒さからも解放される。どこからでも設計、閲覧が行えるようになれば出張や転勤も減らせるかもしれない。会議や打ち合わせをはじめ、生産現場など、通常ではとてもワークステーションを持っていけない場所でも、PC、タブレット端末によるデータ活用が可能になるだろう。

 システム管理者にとっても利点がある。ワークステーションでは、管理者がバージョンアップのたびに、アップデート作業を行わなければならない。担当者を配置していない拠点であれば、管理者が出張で対応する必要がある。またワークステーションごとの環境もバラバラで、端末ごとの管理は管理者にとって、大きな負担となっていた。VDIを導入することで、リモートからのデスクトップ環境の管理が可能となり、これらの負担が解消されるというわけだ。

日立建機の開発・設計部門にVDIを導入

 しかし、これらの利点を得るには、的確な導入方法や利用方法を検討する必要がある。仲村氏は「エヌビディアの仮想GPU技術をふまえて、3D CAD、CAEといったアプリケーションに合わせたリソースを無駄なく使う環境の構築が重要です」と語る。

 CTCは、システムインテグレーターとしてITインフラ構築の実績を持つ一方で、CADをはじめとする設計領域のシステムの導入にも携わってきた。「CADとITインフラどちらか一方に詳しいだけでは十分ではない。CADのデスクトップ仮想化については、どこでも満足度の高い導入を行えるわけではありません。当社はCADとITインフラの両方を熟知する強みがあり、それを差別化につなげることができています」と仲村氏は強調する。

 これらのノウハウとともに、ベンダー各社と緊密な連携も重要だ。3D CADのVDI環境を構築するためには、NVIDIA GRIDに対応したハードウェア、ソフトウェアが必要になる。CTCでは、いち早くNVIDIA GRID技術への対応を表明したネットワーク/サーバベンダーのシスコシステムズ(以下、シスコ)や、仮想化ソリューションのシトリックス・システムズ(以下、シトリックス)と協力関係を構築。Beta版からの製品検証により早期から3D CADのVDIを展開できる体制を構築した。

 この協力関係が生きたのが、日立建機へのVDI導入だ。日立建機では、茨城県土浦市にある開発・設計部門において、ワークステーション400台を稼働させていた。そのうち100台分を「Cisco Unified Computing System(Cisco UCS)」「NVIDIA GRID」「Citrix XenDesktop」の組み合わせによるデスクトップ仮想化に移行。その導入をCTCが行ったという。「早期から4社で緊密な連携を取ってきたことが実を結んだ」(仲村氏)。

4社の緊密な連携による効果

photo シスコシステムズ ソリューションズシステムズエンジニアリング データセンターソリューション シニアシステムズエンジニアの樋口美奈子氏

 今回の導入において、シスコは仮想化環境のために最適化された製品であるCisco UCSにより、VDI環境のサーバ部分を担当。「シスコはもともとネットワークに強みを持っています。VDIはネットワークの知見も重要になるため、これらのノウハウとUCSの高い管理性によってインフラを支えることができるのが当社の強みです」とシスコシステムズ ソリューションズシステムズエンジニアリング データセンターソリューション シニアシステムズエンジニアの樋口美奈子氏は語る。

 さらにシスコでは、CTCやシトリックス、エヌビディアとの連携の強みを訴える。「3D CAD仮想化はネットワーク、サーバ、アプリケーションのどれが欠けても効果的な導入が難しいものです。各社との緊密な連携が早期導入に成功した要因です」と樋口氏は強調する。例えば、サーバをCAD仮想化で利用する場合、エヌビディア、シトリックス、CADベンダーの認定を考慮する必要がある。そのため、ベンダー各社とそれらの豊富な経験を持つCTCとの連携は重要だ。

 シスコは、今後もサーバとネットワークの両面で製品の強化を進めていくという。小規模な環境でも使えるCisco UCS Mini、ポリシーベースでネットワークを抽象化するCisco ACI(Application Centric Infrastructure)を提供開始し、インフラ全体の柔軟性を加速させていく。

photo シトリックス・システムズ・ジャパン システムズエンジニアリング本部 ソリューションSE部 システムズエンジニアの桜庭宏人氏

 一方、シトリックスでは、3D CADの仮想化については、2006年に米国の航空機メーカーの要望で取り組み始め、通信帯域が狭いところでのパフォーマンスを向上する技術革新に取り組んできた。NVIDIA GRIDにもいち早く対応を決め、積極的にCAD仮想化への取り組みを進めてきている。

 シトリックス・システムズ・ジャパン システムズ エンジニアリング本部 ソリューションSE部 システムズエンジニアの桜庭宏人氏は「NVIDIA GRIDへの対応は、部品点数が多く拠点も遠方に分散する大規模な製造業にとって『まさに待っていた』との反応でした。システムの集約やコストダウンへの要望は強いものがあります」と語っている。

 また海外では遅延などネットワーク品質がパフォーマンスに大きな影響を与えるが、シトリックスでは、仮想デスクトップ技術の改善だけでなく、ネットワーク関連製品である負荷分散装置「Citrix NetScaler」による仮想デスクトップサービスの安全な公開と、WAN最適化装置「Citrix CloudBridge」によるパフォーマンスの最適化というソリューションを合わせて提案することで、ネットワーク環境も含めたトータルソリューションを実現。CAD仮想化の安定した稼働に取り組む。

 桜庭氏は「3D CADの活用に耐え得る仮想デスクトップ技術の進化を推進するとともに、ネットワーク関連技術も提供することで、総合的に満足度の高いパフォーマンスを確保していく」と語っている。

ポイントは事前検証、運用、保守それぞれのフェーズでの対策

 これらの技術により、大きな効果が期待されている3D CAD環境でのVDI活用だが、その導入で注意すべきポイントにはどういうことがあるだろうか。

 ワークステーションでは、システムは良くも悪くもハードウェア1台に集約された状況だったが、VDIを活用すると、ハードウェア、ミドルウェア、ネットワークアプライアンス、各種サービスなど、構成するコンポーネントや関わるベンダーが複雑に絡んでいる。構築した上でのパフォーマンス/コストはどうなるのか、何か起きた時に保守対応がどこの窓口になるのか、今までこういったITシステムを運用していないユーザーはとても不安になるだろう。「CTCではお客様に安心して導入を進めていただくためにパフォーマンス/コスト、運用、保守といった導入の際に特に管理者の頭を悩ませる部分に関して各種サービスを準備しています」(仲村氏)と語る。

 その上でCTCでは、構想策定〜設計/構築〜運用までワンストップでデスクトップソリューションを提供できることが強みだと強調する。CTC内にはCADエンジニアもインフラエンジニアもいるので、シスコ、シトリックス、エヌビディアと協業しながらソリューションの実用性について効果的な内部検証が行える。特にパフォーマンス/コスト面での不安については、「PoCサービス」という形で、ユーザーと構成を策定し、コスト試算を実施した後、設計者による評価を行えるサービスを展開している。このことにより「検証したもののコストが高すぎて導入できない」といった失敗を防ぐことができる。また、運用面の不安に対しては、既にCTCグループ内で6000名を超えるユーザーのシンクライアントを同社独自の方法で運用管理している。運用のアウトソーシングや運用のスキルトランスファーを含めた運用支援サービスを展開しており、安心だ。

ますます広がる3D VDIの世界

 仲村氏は「3Dモデルや画像を扱う環境におけるVDIに対しては、製造業だけでなく建設や医療などの分野からの注目も大きいです。今後は3Dプリンタなど3D CADデータを活用する環境がますます増え、3D VDIの必要性もさらに高まるのではないでしょうか」と語っている。

 CTCでは今後も、シトリックスやシスコ、エヌビディアとの緊密な協力体制により、製造業における3D CAD環境のVDI活用を推進していくという。CADシステム、ITインフラ両面での実績を数多く持ち、技術革新を進めるシトリックスやシスコとの緊密な連携を取るCTCは、新たな設計環境の実現において、この上ない信頼できるパートナーとなることだろう。

photo CTC、シスコ、シトリックスの対談の様子。緊密な連携が安定したCADの仮想デスクトップ環境をもたらす

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提供:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2014年10月31日