特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

そもそもIoTとは何か?「2014年のIoT」は何を意味するかを理解するIoT観測所(1)(1/2 ページ)

IoT(Internet of Things)という言葉は既に広く使われているが、概念自体は目新しいものではない。IoTで何かが変わった訳ではなく、“IoT”という言葉が一般化した今、それを活用するための環境が整ったというべきだ。IoTのそもそもと、その現状について、解説する。

» 2014年09月22日 11時00分 公開
[大原 雄介MONOist]
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 IoT(Internet of Things)という言葉が2013年ごろから本格的に話題になるようになっており、既にバズワードと化している気配すら感じられる昨今である。IoTの意味する概念については、かつて「ユビキタス」という言葉で似たような話があったし、その合間にはM2M(Machine to Machine)という言い方が流行した時期もあった。ただこうした言葉とIoTの大きな違いは、バックエンドにビッグデータが存在するかどうか、というあたりではないかと思う。

 かつてのM2M、あるいはユビキタスという概念は、「これまでスタンドアロンで動作していた機器が、全てネットワークでつながる」という話で、そこでM2Mなりユビキタスという仕組みに対応するためのAPIなり通信プロトコルなりを整備しましょう、あるいはこうしたものに対応するインフラ(OSやミドルウェア、アプリケーション)を用意しましょう的なストーリーにつながるものであった。

 ただ、そもそもの前提として、「コントローラーが別途必要」「通信コストが高い」「つながることのメリットが希薄」といった根本的な問題に対する解が見えにくいこともあり、一部でのみ採用されるといった程度にとどまっていた。

 では「IoT」と呼ばれるようになった今、何が変わったか?といえば、

  • クラウドの存在により、コントローラーを個別に用意する必要がなくなった
  • 以前に比べて飛躍的に通信コストが下がった。またスマートフォンの普及により、エンドユーザー側でルータなどを用意しなくても済むケースが増えた
  • 「クラウドと連係したビッグデータ」が利用されるケースが増え、これまで利用されていなかったデータに新たな活用方法が見つかり、むしろ今では積極的にデータを集めようという機運になっている

 というあたりだろうか。つまりIoTによって何かが変わった、というよりも“IoT”という言葉が登場したタイミングで、それを活用するための環境が整ったというべきであろう。

IoTの構造

 さて、そのIoTはどんな構図になっているかを簡略化したのが下図である。IoT、という言葉が使われる場合によく指される部分は、図の中で一番左のエンドデバイス(End Device)、あるいはその隣のインターメディエイトデバイス(Intermediate Device、中間デバイス)になる。

photo 「IoT」の簡略図

 パッシブデバイス(Passive Device)とは、自分では電源を持たない(他のDeviceから電力供給してもらう)、もしくはエネルギーハーベスト(太陽電池や振動による発電など)による稼働を行うデバイスである。身近なところでは、NFCとかICカード、ICタグ/RFIDタグなどがこれに該当する。これらのデバイスは、電力を供給してもらえなければ何も動作しないが、リーダーなどにかざすと電磁誘導で電力を獲得し、これを使って動作する。

 これらエンドデバイスの場合は通信も次に説明するインターメディエイトデバイス任せとなる。これはエネルギーハーベストの仕組みを持ったデバイスも同じことである。エネルギーハーベストで常にまとまった電力を確保できるというケースはまれであり、通常は間欠動作となる。こうしたケースで通信まで自前で賄うのは、電力量的に厳しいため、通常はデータを蓄積しておき、インターメディエイトデバイスに接触した時だけ、通信に必要な電力を供給してもらって、まとめてデータを転送するという実装になることが多い。

 この次にあたるのがインターメディエイトデバイスで、これは電源を自前で持てるデバイスである。このカテゴリは該当製品が非常に幅広く、ボタン電池1個で10年の駆動時間が要求されるようなもの(火災報知機など)から、AC電源が常時供給されることを期待できるものまで幅広く含まれている。

 スマートフォンやPC、場合によってはもっと大型のデバイスも含まれる。工場で使われるような大型工作機械なども、そこに取り付けられたさまざまなセンサーで取得した情報をクラウドに上げることがあるだろうし、最近では乗用車がIoTにおけるデータ生成デバイスとして認識されつつある。飛行機や船なども同様で、その意味では動力を持って何かしら動いているものは全て、インターメディエイトデバイスにあたるわけだ。

 こうしたデータは一度、クラウドに集約される。クラウドについても定義はさまざまだろうが、単にデータを集約するだけでなく、これを処理する部分も当然この中には含まれる。ただ、データ処理を全てクラウド上で行うとは限らず、場合によっては一次処理のみを行い、ある程度まとめたデータを今度はローカル環境下のサーバで処理するというケースも考えられる。

 出力された結果はエンドデバイスへ戻される事になる。このエンドデバイスもさまざまで入力されたデバイスへ戻ることもあれば、専用コンソールへ戻されることもある。PCやスマートフォンへ戻されることもあるだろう。

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