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» 2014年10月27日 09時00分 公開

紛争鉱物:紛争鉱物をめぐる法規制動向と、重要性を増すサプライチェーン管理 (1/2)

今「紛争鉱物」を巡る規制の動きが、世界中で高まっている。紛争鉱物とは一体どういうものなのだろうか。各国の規制の動きや、製造業としてそれに対応するための取り組みについて解説する。

[小室善伸、星太郎、岩本由美子/UL Japan,MONOist]
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 「紛争鉱物」という言葉をご存じでしょうか。紛争鉱物とは、紛争地域において採取された鉱物資源です。具体的には、アフリカのコンゴ民主共和国(DRC)ならびに同国と国境を接する周辺国(アンゴラ、ブルンジ、中央アフリカ、コンゴ共和国、ルワンダ、南スーダン、タンザニア、ウガンダ、ザンビア)で採取された、スズ、タンタル、タングステン、金のことを示します。これらは今、武装勢力による強制労働と不法な搾取とともに、彼らの資金源となっていることが問題視されています。これを規制しようという動きが欧米で高まっており、その影響が今「紛争鉱物問題」として注目を集めているのです。

 本稿では、「紛争鉱物規制とはどういうものか」、また「製造業としてどのように規制に対応するか」という点について解説します。

紛争鉱物規制がなぜ問題なのか

 DRCを中心とした周辺国から採取された紛争鉱物ですが、対象となる4種類の鉱物資源は、携帯電話端末やPCなどの電子機器を中心に、自動車、医療機器、製造機器などさまざまな製品に使用されています。

 スズははんだ材、めっき材として、タンタルは主にコンデンサに、タングステンはワイヤや回路、照明機器のフィラメントなどに使用されています。金は、宝石としての用途が80%を占めますが、電気接触部のコーティングやワイヤにも使われています。多くの用途があるということは、それだけ多くの利益を生む鉱物であるということであり、紛争鉱物が含まれる材料、その材料を使用している部品、その部品が組み込まれた最終製品と、紛争鉱物が一連の製造工程を通じて製品に使用されている可能性が捨てきれないことを意味しています。

photo 「紛争鉱物」が使用されている最終製品(出典:UL)

 近年、市場はグローバル化し、製品に使われている原材料の調達元が世界中の国々に及んでいるケースが見られます。このような世界規模での調達が、サプライチェーンの複雑化、不透明性を増しています。メーカーにとって自社製品に使用されている材料や原料の供給源を全てさかのぼり、正確に把握することは、極めて困難な状態にあります。一方で、労働者の人権侵害や紛争被害を憂慮する市民の声が高まるとともに、株主や消費者団体の目も厳しくなっています。

ドット・フランク法による規制

 このような状況から、米国では2010年7月に、金融規制改革法であるドッド・フランク・ウォールストリート改革および消費者保護法第1502条(通称ドッド・フランク法)が制定されました。この法律は、米国内の株式上場企業およびSEC(米国証券取引委員会)より指定されている非上場企業に、紛争鉱物の使用に関する情報の提示と報告を義務付けています。

 上述の4つの鉱物を使用している上場企業は、その鉱物の供給源がDRCと周辺国に存在しているか調査し、報告書をSECに提出しなければなりません。そして、これらの国から産出されている可能性がある場合は、さらに実態を把握する調査(デューデリジェンス)と外部機関による監査を実施し、その報告書も添付して提出しなければなりません。第一回目の報告書の提出期限が、2014年の6月2日であったため、これらの上場企業に部品や材料を納品している企業(サプライチェーン)に産地の調査依頼が殺到し、多くの日本企業も対応を迫られました。

 その後、米国の連邦裁判所が、ドッド・フランク法の一部を無効とする判断を下し、SECはこれを受け、紛争鉱物開示規則の一部を適用しない決定を行いました。それにより、報告書の結論部分の記述に関する要求事項は緩和されました。すなわち、「DRC紛争との関連はなし」「DRC紛争と無関係と判明しなかった」「DRC紛争との関係は未確定」などの明記を除外することが可能となりました。

 しかし、引き続き報告書を毎年提出する義務は課せられていますので、米国内の株式上場企業との取引継続または新規契約を望む企業においては、紛争鉱物への対応が必須要求事項であることに変わりはないでしょう。

欧州の動き

 米国だけでなく、欧州でも注目すべき動きがあります。欧州委員会は、2014年3月、「責任ある鉱物調達」に関する規則案とその実施を促す措置を発表しました。この規則案は、ドッド・フランク法と異なり、輸入業者を対象としており、輸入業者がOECD(経済協力開発機構)の発行するガイダンスに沿ったデューデリジェンスを実施し、自らが輸入した鉱物が、紛争地帯(DRCとその周辺国に限らない)から産出されたものではないことを自己認証する制度を提案しています。また、この自己認証制度に参加し、責任ある輸入業者と認められた業者が提供する情報を基に、欧州委員会が責任ある精錬/精製業者のリストを作成・公表することを提案しています。

 さらには国連でも、DRCの反政府勢力に関連した制裁措置を採択するとともに、DRC産鉱物の輸入業者などにOECDガイダンスに基づくデューデリジェンスの実施を奨励するなどの処置がとられています。

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