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» 2014年10月31日 09時00分 UPDATE

いまさら聞けない 「アメーバ経営」入門(3):アメーバ経営がJAL整備工場にもたらした変革 (1/2)

「アメーバ経営」を製造業の運営にどう当てはめるかという手法と事例を解説する本連載。最終回となる今回は、アメーバ経営を導入して大きな変化を実現したJAL整備工場の事例を紹介する。

[内山幸士/KCCSマネジメントコンサルティング,MONOist]
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 会社更生法を適用した日本航空(以下、JAL)復活に大きく貢献した「アメーバ経営」を「製造業の運営にどう生かすか」という点を解説する本連載前回前々回はアメーバ経営そのものを解説しましたが、最終回となる今回はアメーバ経営を導入したJAL整備工場の意識改革の様子と、それに伴いどのような効果が得られたのか、という事例を紹介します。



JALエンジニアリングはなぜアメーバ経営を導入したのか

 今回、アメーバ経営の導入事例として紹介するのは「JALエンジニアリング(以下、JALEC)」の改革についてです。JALECは、JALの航空機整備を担当する100%出資子会社です。「日本を代表する航空機整備会社として、JALグループの技術力を結集し、航空機をご利用いただく顧客に安心・満足いただく。そのために、より高品質な航空機を提供する」ことが会社設立の目的となっています。この設立の目的の通り、JALECは世界一級の品質の航空機を提供し続けていました。2010年度の定時到着率は89.9%で世界第1位、米国ボーイングや各エンジンメーカーからは品質関連の表彰を多く受けていたといいます。

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 一方で、コスト競争力の面では厳しい状況にありました。経営者はじめ従業員は、整備事業そのものも、厳しい企業間競争環境下にあるという認識が乏しく、「市場で闘う」という意識が欠如していました。整備の現場に目を移しても「安全・品質を高めること」が主眼でそこには力を入れるのですが、「採算」についての意識は希薄だったといえます。もしくは整備員にとっては、採算を意識できない環境が作られていたと言い換えることもできるかもしれません。

 すなわち、JALECは整備技術は世界一と評される一方で、「採算意識」に問題を抱えていたといえます。そのため企業としての競争力が生み出せない状況でした。しかし、JAL経営再建の流れの中、JALECにも「民間企業として利益を生み出すのは当然の責務だ」という反省が生まれました。そこで全従業員の意識改革とアメーバ経営(部門別採算制度)の導入につながっていったのです。

アメーバ経営を導入する目的と期待する成果

 アメーバ経営導入に対し、目的として設定されたのは「世界で通用するエアラインMRO(メンテナンス リペア&オーバーホール:整備専門会社)を目指す」ということです。そのためには、社員一人一人の採算意識を高め、JALECの経営力を強化しなければなりません。具体的には、アメーバ経営によって、次の3点について改善成果を期待したといいます。

  1. 職場単位の採算を明確にし、高い安全と品質を大前提としながらも、採算性の向上を図ることができる
  2. 課長クラスのリーダー育成と全員参加経営が実現できる
  3. 現場サポート部門(間接部門)を事業採算管理に巻き込み、改善を促す

 このような目的でアメーバ経営を導入したわけですが、航空機の整備と一口に言ってもさまざまな整備士がいます。部品を整備する社員、機体を整備する社員、運航整備と呼ばれる航空機の発着ごとに整備する社員がいて、その頂点に全ての整備内容を保証し、飛行許可を出すライン確認主任者がいるのです。

 このライン確認主任者は、運航整備、機体整備、部品整備それぞれの社員が責任を持って仕事をやってくれていると信頼し、飛行許可を出します。そのため、それぞれの部門との信頼関係が非常に重要な要素となります。JALECではその点も踏まえて、現在の業務にそのままアメーバ経営を持ち込むことが、より効果的だと考えたとしています。

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