インタビュー
» 2014年10月31日 09時00分 UPDATE

マクラーレン・オートモーティブ チーフテストドライバー インタビュー:スーパーカーの開発には最高のテストドライバーも必要だ (1/2)

自動車を開発する上で重要な役割を果たすテストドライバーだが、スーパーカーメーカーのマクラーレン・オートモーティブではどうなのか。同社のチーフテストドライバーを務めるクリス・グッドウィン氏に話を聞いた。

[朴尚洙,MONOist]
マクラーレン・オートモーティブのクリス・グッドウィン氏

 自動車を開発する上で試験(テスト)は極めて重要な役割を果たしている。自動車の試験は、個別の部品から、部品を組み合わせたシステム、システムを搭載した試作車など、さまざまな段階にわたって、数多くの項目で実施される。

 これらの自動車の試験で重要な役割を果たすのがテストドライバーだ。シミュレーション技術の進化によって、試作車を使った試験の回数が減り、テストドライバーの仕事も少なくなっているというイメージがあるかもしれないが、最終的な車両性能の最適化を行う上でその重要性は変わっていない。

 今回、McLaren Automotive(マクラーレン・オートモーティブ)のチーフテストドライバーを務めるChris Goodwin(クリス・グッドウィン)氏にインタビューする機会を得た。レーシングドライバーとしての華々しい経歴も持つグッドウィン氏に、スーパーカーメーカーであるマクラーレン・オートモーティブのテストドライバーがどんなことをしているのかを聞いた。また、「マクラーレンP1」に乗って、ドイツのニュルブルクリンク北コースの周回記録で7分を切ったときの感想などについてもお伝えしよう。



MONOist さまざまなレースに出場してきましたが、テストドライバーを務めるようになった理由は何ですか。

マクラーレン・オートモーティブのクリス・グッドウィン氏 マクラーレン・オートモーティブのクリス・グッドウィン氏

グッドウィン氏 私は大学時代に工学を学んでいたのですが、レーシングドライバーとしてフォーミュラカーのレースにもドライバーとして参加していました。そのフォーミュラカーレースでチャンピオンになったこともあって、レーシングドライバーの道を選んだのです。

 その後、フォーミュラカーだけでなく、GTカー、ツーリングカー、ラリーカーなど、F1を除くほとんど全てのカテゴリーのレースに出場しました。レースをするかたわら、工学を学んできたこともあってレースカーの開発にも関わりました。

 マクラーレン・オートモーティブとは1997年に「マクラーレンF1 GTR」のレーシングドライバーを務めたことから始まっています。そして2000年に、マクラーレン・オートモーティブのチーフテストドライバーに就任しました。

 マクラーレン・オートモーティブには、デザイナーやエンジニアなどの開発スタッフはベストの人材が集まっています。テストドライバーも同様で最高の技能を有していなければなりません。他の自動車メーカーの場合、エンジニアがテストドライバーを兼ねることがありますが、当社はそういったことはありません。

MONOist 自動車開発におけるテストドライバーの役割について教えてください。

グッドウィン氏 マクラーレン・オートモーティブはスーパーカーを手掛けていますので、そのスーパーカーの車両性能を限界まで引き出せる技量が必要になります。個人的な意見ですが、マクラーレン・オートモーティブは他のスーパーカーメーカーよりも評価基準が厳しいので、テストドライバーには最高の能力が求められると考えています。

 また、開発中のスーパーカーに搭載されている最新技術についての深い理解も必要になります。その上で、当社が誇る技術者に対して、テストドライブの結果と改善点を伝えなければなりません。時には、技術者と議論する必要さえあるのです。

MONOist マクラーレン・オートモーティブでは開発期間の短縮を進めていますが(関連記事:新型スーパーカー「650S」が示すマクラーレンの開発力)、テストドライバーはどのように貢献しているのでしょうか。

グッドウィン氏 その前に、われわれのテストの体制について説明しておきましょう。通常の車両開発では、コンセプトから生産まで4年かかるといわれています。当社は、これを短縮するためにシミュレータを活用しています。

 テストドライバーと聞くと試作車に乗るのが仕事と思われるかもしれませんが、このシミュレータを使って運転し、その結果を技術者に伝えるのも重要な仕事なのです。エンジン、ブレーキ、タイヤ、サスペンション、ギヤボックス、空力、操作性などさまざまな項目にわたってシミュレータによる評価結果をフィードバックします。

 シミュレータを使った開発を終えてから、初めて試作車によるテストを行うのです。シミュレータで各開発項目から問題を洗い出しておけば、試作車を作り直す回数を減らせて、開発期間の短縮につなげられるのです。

MONOist シミュレータはいつごろから導入しているのでしょうか。

グッドウィン氏 マクラーレンのF1チームがシミュレータを導入したのが1998年です。これは他のF1チームと比べて10年早い取り組みでした。マクラーレン・オートモーティブの車両開発にも、このシミュレータを利用しました。

 F1シャシーに組み込まれたシミュレータは、360度スクリーンにサーキット場や公道、他車両などを3Dグラフィックスを映し出す機能があり、車両操作に対する精度と応答速度も極めて高いです。

 「マクラーレン12C」や「マクラーレンP1」を開発していたころは、1台のシミュレータをF1チームとシェアしていました。しかし、2014年3月に発表した「マクラーレン650S」を開発する際にはシミュレータが2台に増えました。おかげで、マクラーレン650Sの開発期間をかなり短縮することができました。

「マクラーレン650S」は、シミュレータを活用して開発期間を短縮した 「マクラーレン650S」は、シミュレータを活用して開発期間を短縮した(クリックで拡大)
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