NEDO、iPS細胞から心筋細胞を安定的に大量製造する技術開発に着手医療技術ニュース

医薬品の心臓に対する副作用予測に利用するため、iPS細胞由来心筋細胞の大量製造技術の開発に着手。iPS細胞から心筋細胞への分化誘導技術をベースに、製造ロット間で品質差がない心筋細胞を大量に製造できる製造工程をタカラバイオが確立する。

» 2014年11月11日 07時00分 公開
[MONOist]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2014年10月30日、医薬品の心臓に対する不整脈などの副作用予測に利用するため、ヒトiPS細胞由来心筋細胞の大量製造技術の開発に着手することを発表した。プロジェクト名は「国際基準化に向けた心毒性評価法確立のための細胞製造・計測技術の開発」で、総事業費は約2億円。

 新薬の開発では、コストの大半を占める臨床段階で、副作用によって開発中止になるケースが多く、そのうち心臓に対する副作用が約20%を占めるという。日本では現在、ヒトiPS細胞由来の心筋細胞を使った新しい安全性評価試験法の有効性を立証するため、検証試験が進められている。しかし、現在用いられているiPS細胞由来の心筋細胞は、製造ロット間に品質の差があり、目的に適した品質を持つ細胞を均一に製造することが求められている。

 今回発表されたプロジェクトでは、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の山下潤教授が開発したiPS細胞から心筋細胞への分化誘導技術をベースに、新しい安全性評価試験法で求められる品質を備え、製造ロット間で品質差がない心筋細胞を大量に製造できる製造工程を、タカラバイオが確立する。

 また、国立医薬品食品衛生研究所を中心とするグループと連携し、同グループへ心筋細胞の評価を依頼。そのフィードバックを基に、改善しながら開発を進めるという。

 タカラバイオでは、同プロジェクトで開発した技術を基に、2015年度中に心筋細胞の商用製造開始を目指す。iPS細胞から安定的に大量の心筋細胞を製造する技術を確立することで、医薬品の副作用予測に利用される心筋細胞の市場は、5年後に100億円規模にまで成長することが期待されるという。

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