“3DプリンタのAndroid”になれるか!? オートデスク「Spark」のもたらす価値Autodesk University 2014(1/3 ページ)

オートデスクは3Dプリンティング技術に関する事業戦略を発表。3Dプリンタ「Ember」の出荷開始を発表するとともにオープンソースの3Dプリンタソフトウェア基盤である「Spark」の開発と発展に注力することを示し、3Dプリンタの標準的なソフトウェア基盤を目指すことを明らかにした。

» 2014年12月04日 11時00分 公開
[三島一孝,MONOist]
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 米Autodesk(以下、オートデスク)は2014年12月3日(現地時間)、同社のユーザー向けイベント「Autodesk University 2014」(米国ラスベガス、会期2014年12月2〜4日)内で、3Dプリンティング技術についての事業戦略を発表。同社初の3Dプリンタを2015年1月に出荷することを発表した他、オープンソースの3Dプリンタソフトウェア基盤である「Spark」の開発と発展に注力することを示し、3Dプリンタの標準的なソフトウェア基盤を目指すことを明らかにした(関連記事:オートデスクがオープンソースによる3Dプリンタを発売――出荷は2015年1月)。

photo オートデスクでコンシューマ&3Dプリンティングのマーケティング シニアディレクターを務めるマリー・ホープ・マキストン氏

 3Dプリンタの市場は急速に拡大を続けている。オートデスクでコンシューマ&3Dプリンティングのマーケティング シニアディレクターを務めるマリー・ホープ・マキストン(Mary Hope McQuiston)氏は「3Dプリンティングの市場規模は、2013年が25億米ドルだったのに対し2014年は38億米ドルへと成長。2018年には4倍以上となる162億米ドル市場になる見込みだ。非常に大きなポテンシャルを持っている」と話す。

 “質”の面で見た場合も、3Dプリンティングは大きな可能性を示している。3Dプリンティング技術はデジタルの世界と物理的な世界の関連性を近いモノへと変容させる側面を持つ。そのため、3Dプリンティング技術はプロフェッショナルな人たちだけのテクノロジーではなく、今や一般消費者やセミプロ的な人々が利用できるテクノロジーへと変容しつつある。「その流れの1つとして、次世代を担う若者たちにリーチできる環境が広がっていることはわれわれにとっても意味がある。彼らの取り組みは、時にプロフェッショナルな人々が思いもつかないことでもあり、新たな可能性をもたらしている」と同氏は語る。

photo 3Dプリンタに関連する市場の期待(出典:オートデスク)(クリックで拡大)

 しかし、一方で現実を見た場合「理想と現実とはほど遠い状況だといわざるを得ない」と同氏は指摘する。実際に3Dプリンタは登場してから20年以上がたつ製品であるにもかかわらず、現在までの機器としての普及台数は20万台前後と普及が進んでいるとはいえない状況だ。さらに、3Dプリンタによって造形される作品の25〜75%が失敗作だとされており、精度や信頼性の面が大きな課題となっている。「なぜ今まで3Dプリンタが成功を得られなかったのかを考えなければだめだ」と同氏は強調する。

photo 現実的に抱える課題(右)(出典:オートデスク)(クリックで拡大)
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