設計者に使ってもらえるCOMSOLとは――最新バージョンでCAEに革命を起こすスウェーデンCOMSOL AB/米国COMSOL, Inc. Ed Fontes氏&Walter Frei氏

「COMSOL Multiphysics」は、スウェーデンのCAEベンダーCOMSOL ABが提供する、高い機能と精度を兼ね備えたマルチフィジックス解析(無制限強連成解析)のCAEツールだ。COMSOL ABのCTOであるEd Fontes氏と、米国法人のCOMSOL, Inc.でApplications Teamマネジャーを務めるWalter Frei氏に、最新バージョン投入の狙いと今後の戦略について聞いた。

» 2015年01月13日 10時00分 公開
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COMSOL AB CTO Ed Fontes氏

――2014年11月に「COMSOL Multiphysics」を、従来のバージョン4.4からバージョン5.0にメジャーアップデートしました。その理由は何でしょうか。

Ed Fontes氏 それは「Application Builder」という革新的な機能を追加したから。これは、COMSOL Multiphysicsのモデルを使って、特定の目的のためにカスタマイズされたCAEのアプリケーションを作ることができる機能だ。COMSOL Multiphysicsはさまざまな物理現象にまたがる先進的な解析に対応できるCAEツールであり、それらの物理現象を解析するための高度な知識を持つCAE専任者が使用することが多かった。Application Builderを使えば、その専門家が、詳細な解析が可能なCOMSOL Multiphysicsのモデルを使った独自のCAEツールと使いやすいユーザーインタフェース(UI)を作れるようになる。このCAEアプリケーションを使えば、COMSOL Multiphysicsになじみのない設計者であっても、詳細な解析が可能なCOMSOL Multiphysicsのモデルを使った高精度の解析を利用できるようになる。

 Application Builderは、COMSOL Multiphysicsバージョン5.0のWindows OS版に同梱される。また作成したCAEアプリケーションは、2014年12月後半に導入した「COMSOL Server」からWebブラウザ経由で使用できるようになる。

――COMSOL Serverはどういったものですか。

Fontes氏 これはApplication Builderと対になって使われる、別売かつ安価なクラウドサーバだ。Application Builderで作成したCAEアプリケーションはCOMSOL Serverを経由して、PCやタブレット端末、シンクライアントなどさまざまなデバイスで実行できる。CAEアプリケーションを利用する際には、作成者が配布するCOMSOL Serverのアクセス権が必要になる。COMSOL Multiphysicsと同様に、COMSOL Serverも購入前に一定期間は試験的に使用できる。

 CAEツールのユーザー企業は、ツールベンダーに機能のカスタマイズを依頼することが多いだろう。Application Builderを使えば、そういったカスタマイズに近いものをCAE専任者自身で簡単に作れてしまう。

――具体的な使用例を教えてください。

Fontes氏 例えば、製薬企業や食品企業で一般的に使われるミキサーで説明する。撹拌(かくはん)に使用するインペラのタイプやサイズ、スクリューの枚数、回転速度、さらに液体の粘度や容器のパラメータを変更して、撹拌の効率を比較検討するアプリケーションを作れる。

「Application Builder」で作成したミキサーのCAEアプリケーション

 これらのパラメータを選択後、ジオメトリを更新して解析ボタンを押すと解析結果が出てくる。このCAEアプリケーションを作るのにかかった時間は2日だけ。背後では複雑な物理の数式が動いているが、ユーザーはそういったことを全く意識せず、求めている解析結果が得られる。あるミキサーメーカーが、顧客にこのCAEアプリケーションを提供すれば、競争優位性を保てるのではないかと考えている。

米COMSOL, Inc. Applications Teamマネジャー Walter Frei氏

――COMSOL Multiphysicsバージョン5.0で、他に注目すべき機能を教えてください。

Walter Frei氏 多重解析の最適化が可能になったことが挙げられるだろう。例えば、あるブラケットについて、質量を最適化するとともに最低次数の共鳴周波数の拘束条件、最大応力の拘束条件など、二律背反となる条件から最適なつり合いを見つけ出すという問題に容易に対応できるようになった。CAEは、解析するだけでなく、その解析結果を受けての改善を行うことも目的の1つ。まず現象を理解する、さらに予測する、そして最適化、制御へと進むことを可能にする機能だ。

――アドオンとして3製品が新しく追加されました。

Frei氏 1つは「LiveLink for Revit」だ。「Autodesk Revit」はオートデスク社が提供している建築情報モデリング(BIM)のツールだ。このアドオンによってCOMSOL Mutiphysicsを建築アプリケーションに導入できるようになった。またユーザーから要望の多かった「幾何光学モジュール」、COMSOL Mutiphysicsで利用できるCADファイル互換機能を拡張する「デザインモジュール」も追加された。

――2014年のグローバルでのCAEへの投資傾向はどうでしたか。

Fontes氏 傾向としては右肩上がりだった。つまりCAEは投資対効果がある、ROI(投資利益率)が良い。もちろんCAEでは妥当性の確認は必要だが、実験や試作よりもROIは高いはずだ。

――そういったCAE市場全体の傾向の中でCOMSOLの実績はどうでしたか。

Fontes氏 ここ3年間の年平均成長率は15〜20%となっている。ただしこの数字に満足しているわけではない。今後は、景気が厳しかったこの3年間を上回る成長を実現したい。

――バージョン5.0の投入によってさらなる成長を目指すと思いますが、目標は。

Fontes氏 大きな目標にはなるだろうが、Application Builderで作ったCAEアプリケーションのユーザーを含めて、COMSOL Multiphysicsのユーザー数を現在の10倍まで伸ばしたいと考えている。はっきりと何年後までとは言えないが、この製品であれば可能だと考えている。

 CAEアプリケーションを作成したCOMSOL Multiphysicsのユーザーは、それを使って社内の設計者の開発効率を高めたり、他の企業に販売して利益を得たりといったことが可能になる。そういったCAEアプリケーションを広める活動は、われわれではなくそのユーザーがやってくれることになる。つまり、CAEアプリケーションのユーザー拡大のプロセスでは、一般的なCAEツールを販売するのに必ず必要な営業活動やサポートのためのリソースを極めて小さく済ませられる。

――日本市場についてはどうですか。

Fontes氏 ユーザーの数、そして売り上げは2桁(けた)%の割合で伸びている。新機能によって利用者のすそ野も広がっていくと考えている。中小企業でもCAEツールが浸透しつつあるものの、高コストで難しいということが導入のハードルになっている。使い勝手を高められるApplication Builderを活用すれば、そのハードルも低くなるだろう。


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提供:計測エンジニアリングシステム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2015年2月12日

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