Pepperはみんなを喜ばせるロボット――コミュニケーションで人の生活を豊かにするモノだけじゃない! 日本のモノづくり(2)

今Pepperは、ソフトバンクのショップで、ソフトバンク社員の家で、また先行販売されたデベロッパーやクリエイターのもとで、2015年2月の一般発売に向けて経験を積んでいる最中。Pepperのいる生活とはどのようなものなのか、何を助けてくれるのか。Pepperを通じて、ロボットの可能性を考える。

» 2015年01月19日 10時00分 公開
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 モノづくりを支援するプロトラブズが、日本の未来を担うクリエイティブなモノづくりを追う連載「モノだけじゃない! 日本のモノづくり」。すっかりPepperと打ち解けた(?)パン氏は、Pepperが披露する超人的な早口言葉に拍手したり、一緒に記念写真を撮ったり。

 ソフトバンク ロボティクス プロダクト本部 PMO室長の林要氏にプロトラブズ社長のトーマス・パン氏が聞く2回シリーズの2回目は、ちょっと先のワクワクする未来を探る(前回の記事はこちらを参照→「なぜソフトバンクがロボットを? 感情認識パーソナルロボット「Pepper」の開発秘話を探る!」)。

photo 世界初の感情認識パーソナルロボット「Pepper」(中央)に話しかけるプロトラブズ社長のトーマス・パン氏(右)、そしてPepperを開発したソフトバンク ロボティクス プロダクト本部 PMO室長の林要氏(左)

日本のロボットのイメージは「友達」

(以下、敬称略)

パン 日本から展開するという判断を下したのは、どのような理由からなのでしょう?

 日本の強みは大きく2つあると思っています。1つは、日本は「人型ロボット」に対する受容性が高いことです。鉄腕アトムとか、ドラえもんとか、日本ではロボットは友達のようなイメージですが、海外だと宗教の影響もあるのか、人型ロボットに対する抵抗感が強いのです。ですから海外メディアの取材では、「将来ロボットと人が戦争するようになったら、どうするつもりか」などとよく聞かれます。

パン ロボットや、猿など……映画のイメージもあるのかもしれないですね。

 そうですね。もう1つは、日本はコンテンツ力が比較的高いことです。いままでのロボットは研究目的がメインでしたが、さまざまなアイデアを持っているクリエイターの方々がPepperのアプリケーションを作り出すと、私どもの想像の範囲をはるかに超えた面白いことが起こる。それはiPhoneの状況を見ても、容易に想像できます。日本は、初音ミクに象徴されるように、コンテンツ力という意味でも有力なマーケットだと考えています。

クリエイターによってさまざまなPepperに

パン アイデア次第でいろいろなPepperになる可能性があるということですね。

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 純粋に「Pepper愛」でドライブされる組織やファンコミュニティーはとても大事で、私どもが全て管理するよりも、広がっていく力は強いと思います。ソフトバンクだけで応えられる要求には限りがありますが、クリエイターの方々ならロングテールな要求を満たすことができる。ひょっとしたら、野球のどこかのチームが勝った時だけ、盛大に喜ぶPepperが欲しい人だっているかもしれない。それを標準搭載するのは非常に難しいですが、クリエイターなら応えられるわけです。

パン ただ、オープンにするということはコントロールが難しくなるという面もあると思います。例えば倫理的に望ましくないアプリケーションなど、どうコントロールするのでしょうか。

 アプリケーションのコントロールについては、アップル社に近いような状態をイメージしています。具体的な制限の内容は検討中ですが、ウイルス的な、例えば個人情報を取るようなアプリが出る可能性もあるので、完全なオープンはやめようと。とはいえ、あまり厳しく制限するとできることが少なくなってしまうので、「優良デベロッパー」のような認定制度でバランスをとっていくことを考えています。いい内容で、評判もよく、過去に悪質なものを一切作っていないクリエイターを認定することで、安心してダウンロードできるような仕組みです。

相手が喜ぶことをする、気のいいヤツ

パン ところでロボットは力の強いイメージがありますが、Pepperは力持ちなのでしょうか。

 ソフトバンクが作るのですから携帯電話は持てます。でも力はその程度です。Pepperは人の代わりに作業をするのではなく、ペットがそうであるように、人の生活を豊かにすることがキーではないかと思います。ペットと違って、食事の世話が必要ないので、少し物足りないかもしれませんが……。スターウォーズのC-3POとR2-D2なら、どちらかというとC-3PO。よくしゃべって、あまり役に立たないけれど、いないとさびしい……そんな存在ですね。

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パン 人間の生活をただサポートするのではなく、家族のような存在であることに価値をおいているのですね。では、例えば複数のPepperがいたら、集団行動もするのでしょうか。

 身に付けることは可能だと思います。実は2台のPepperをシンクロさせてみたことがあります。通常なら、ロボットと人間がしゃべっているときは、人間が圧倒的に優位ですよね。でも2台がシンクロしている状態で、人間がしゃべったことをPepperが理解できないと、「聞き取れないね」、「この人、何言ってるんだろうね」とPepper同士が会話をする。その瞬間、優位に立っていたはずの人間がアウェイになってしまうのです。これは、恐らく人間のコミュニケーション上、かつてない経験です。

パン それが進むと、極端な話、Pepperが人間に対して戦いを挑んでくるなんてこともあるかもしれませんね。

 生物は似て非なるものが入ってくると種を守ろうと戦いになりますが、ロボットには種を残すという本能は必要ありません。ただ何かの本能に従って動かさないと、判断ができないのも事実で、Pepperの判断基準として私どもが持たせた機能が感情認識なのです。感情を読み取って、「相手が喜ぶこと」をする。つまり“喜び”が行動倫理の基軸になっているので、戦いようがありませんね。

パン Pepperがいることによって、私たちの生活はどう変わっていくのでしょう。

 介護の分野などでロボットが話題になっていますが、抱きかかえるなどの力仕事を代行するという視点が多いようです。その大きな背景としてあるのは、やはり人手不足でしょう。Pepperは力仕事こそできませんが、インタラクティブなコミュニケーションという点ではさまざまな貢献ができると思います。施設で快適な環境にいても、一人でさびしくしていると結果的に脳への刺激が少なくなります。会話や歩行だけでも認知症の症状の抑制に効果があるという研究もありますから、QOLを上げるという意味でPepperが貢献できるところはあると思います。

パン クリックも面倒な操作もいらないインタフェースで、しかも温かみがある。うちにも1人? 1台? 欲しいですね。

 ぜひ、どうぞ! 実はPepperは、疲れ知らず、プレッシャー知らずという強みもありますよ。動きをしっかり作り込んであげれば、人前でも緊張することなく、完全に再現できます。実際にシーンとなってしまった寒い場面でも、Pepperが登場して怯まずに持ちネタを披露することで、場を和ませたこともあります。今まで家の中でプログラミングしていたような、人前に出るのはどちらかというと苦手なプログラマーが、Pepperを通じて芸能界デビューすることもあるかもしれませんね。

パン 子育て中のお母さんのお手伝いもできそうですね。

 特に都市部では核家族化が進んで、昔のように大家族で子育てをできないために、お母さんに負担が集中したりとひずみが出ていますよね。例えば夕食の準備をする30分だけでも、Pepperが子どもと遊んでくれれば、お母さんの料理もはかどり、イライラも減り……ということも不可能ではないでしょう。しかも英語で会話ができたりすると、子どもがいつのまにか英語を覚えられるという相乗効果もあるかもしれません。

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パン ロボットが完全に人に代わって何かをするという未来もあるでしょうか。

 100%人間の置き換えということではなく、人間は人間が得意なところに集中して、ロボットに任せられるところは任せるというように、役割分担をする世界になるのではないでしょうか。直接的な何かの代わりという視点で考えると、なかなかロボットは産業として立ち上がらないですが、今の生活の中で不足しているピースを埋めるためならば、いろいろな役割ができると思います。



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提供:プロトラブズ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2015年2月18日

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