自分が欲しい物を作るためにコストと時間を惜しみなくかけた卓上CNCフライス開発メカ設計インタビュー(1/4 ページ)

オリジナルマインドの設計者が、鋼材も削れる卓上CNCフライス新製品「KitMill AST200」の開発秘話を明かした。同社創業時のエピソードも紹介する。

» 2015年01月21日 10時00分 公開
[小林由美MONOist]

3DプリンタブームとCNCフライス

 2014年11月に開催した「Maker Faire Tokyo 2014」(MFT2014)では、3Dプリンタ関連の展示が相変わらずのヒートぶりだった。そんな中、積層とは真逆のプロセスを踏む切削加工機の展示も見られた。

 個人向け卓上CNCフライスを開発・販売するオリジナルマインドは、「KitMill SR200」「KitMill AST200」といった新製品を引っ提げてMFT2014の展示に臨んだ(関連記事:ロボット製作に最適、オリジナルマインドが薄板加工用卓上CNCフライスを刷新鋼材が加工できる卓上CNCフライス、オリジナルマインドが60万円で発売)。「KitMillシリーズ」は、購入者が組み立てるキット式の卓上CNCフライスだ。

MFT2014で展示された「KitMill AST200」
MFT2014で展示された「KitMill SR200」

 MFTに出展するハードウェア系クリエーターにもオリジナルマインドユーザーが目立つ。

(左)「勝手に入るゴミ箱作った」の動画キャプチャ、(右)「フルメタル立体機動装置」

 「勝手に入るゴミ箱作った」で一躍有名人となった「みのくら」氏も愛用者の一人だ(MFT2012で出展)。センサに反応したゴミをキャッチしようと動き回るゴミ箱の中に仕込まれた機構を作成するために利用していた。

 「らってん技研」氏は、アニメ/漫画「進撃の巨人」に登場する、主人公らが巨人と戦うための装備「立体機動装置」を現実に実現しようとしている(MFT2014で出展)。同氏が使っているのは「KitMill BT200」(関連記事:「進撃の巨人」の立体機動装置をリアルに再現、2015年初にデモを披露)。

 同社 代表取締役の中村一氏は、MFTの出展作品の数々を見てきて、「皆、『動くもの』を作りたいんだなと思った」と言う。個人向け3Dプリンタでは、筺体や単純で小さな部品などの製作が限界。動くものを作るには、やはりある程度精密な動力部品が必要で、それを製作するには切削加工の方がよい。「3Dプリンタの注目が高まれば、CNCフライスの注目も高まっていくだろう」と中村氏は予想している。

 「簡単な構造で作れることから、いろいろな人や会社がオリジナルの3Dプリンタを作っていて、それぞれに独特のこだわりや工夫があり、『立体造形物を自動で作る』というお題のロボコンみたいですね」――そう話すのは、KitMill AST200(以下、AST200)開発に携わったオリジナルマインドの設計者 五味秀敏氏だ。

 過去の同社でも「3Dプリンタを作って売ろう」という話は出たが、このブームで既に多くの企業が参入していることもあって、当面はないとのことだ。「個人的には、3Dプリンタを1度作ってみたいです」(五味氏)。

AST200の設計にかかわった2人の設計者のマインド

KitMill AST200

 「AST200と従来製品との違いは、Z軸の高さと切削力の強さ」と五味氏は話す。従来のKitMillシリーズ製品は板加工がメインだったが、AST200ではブロックから切削が可能な上、鋼材も加工できる。

 「部屋のテーブルにおける大きさでありながら、高い切削力を備える機械を目指しました」(五味氏)。切削力の高い装置は、それなりにサイズが大きくなってしまいがちなため、ダウンサイジングに苦労したとのことだ。KitMillは、自分で組み立てて使うことも特徴の1つということもあり、部品点数も極力減らしている。

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