“ロボット革命”を実現する手段とは、政府「ロボット新戦略」を読み解く(後編)ロボット革命実現会議(1/2 ページ)

ロボットによる新たな産業革命を目指して開催された「ロボット革命実現会議」では、向こう5年で実行すべき具体的な計画についても議論された。本稿では“ロボット革命”実現に向けた、報告書の提案について読み解く。

» 2015年02月10日 11時00分 公開
[渡邊宏,MONOist]

 日本政府が掲げた“ロボットによる新たな産業革命”の実現を目指すべく、6回にわたって開催された「ロボット革命実現会議」。その議論は全2章 92Pの報告書として2015年1月23日に公開された。

 報告書にはロボットによる成長戦略を主題として、現状の把握、目指すべき方向性、5カ年計画として提案するアクションプランについて記載されている。前編では報告書第1章にある現状と方向性について紹介したので、本稿では第2章、5カ年計画として掲げるアクションプランについて、その内容を読み解いていく。

世界に対する主導権確保を狙う「ロボット革命イニシアティブ協議会」

 アクションプラン、すなわち実行すべき提案事項については、「ものづくり」「サービス」「介護医療」といった分野別と、分野横断で取り組むべき全般事項に分類されている。特筆すべきは、分野横断事項の第一に挙げられている「ロボット革命イニシアティブ協議会」の設置だ。

 ロボット革命実現会議はその目標として「製造現場から日常生活のさまざまな場面でロボットが活用されることにより、社会課題の解決やモノづくり・サービスの国際競争力の強化を通じて、新たな付加価値を生み出し利便性と富をもたらす社会を実現する」ことを掲げるが、これだけ壮大なプランであれば関係者(ステークスホルダー)は多く、各自の判断だけでは、目的の達成が難しいことは容易に想像できる。

 そこでロボット産業関係者が方向性の確認および、協議・調整の場所とするのが、この協議会だ。ただし、産官学連携の調整などこれまでにも関連省庁や各種団体が行ってきた調整役というニュアンスよりも積極的な姿勢を示しており、報告書には「日米での災害対策ロボット開発」「国際標準規格の立案」などといった文字が並び、“日本がロボットで世界を主導する”という意図が読める。

 本協議会は、(1)産、学、官の連携やユーザーとメーカーのマッチングの推進、関連情報の収集・発信、(2)日米災害対応ロボット共同開発等の国際展開を見据えた国際プロジェクト等の企画立案、(3)国際標準の戦略的な立案・活用、規制改革提案、データセキュリティ等のルールづくり、そして(4)ベストプラクティスの共有・普及等を担う。(報告書13ページより抜粋)

 協議会の設立と同時にロボット技術の実証実験環境も整備する。既に生活支援ロボット安全検証センター(茨城県つくば市)や兵庫県広域防災センター(兵庫県三木市)、さがみロボット産業特区(神奈川県相模原市など)などの実験環境が存在するが、「ロボット革命」が求める多種多彩なロボットの活用方法に対応できるよう、福島県に「福島浜通りロボット実証区域」(仮称)を設けることを提案している。

 横断事項としては協議会設立と実証実験環境整備の他、基礎技術に関する研究開発、安全基準の確立、法規制を含む利用環境整備、先行してロボット開発を行っている研究機関との連携なども行っていくとしている。

 基礎研究についてはその対象として、人工知能やセンシング、機構(アクチュエーター)および制御、OS/ミドルウェアなどを挙げ、OS/ミドルウェア、付随するインタフェースについてはある程度の標準化が必要不可欠ながらも、個別企業/団体の対応では国際化もにらんだ標準化は難しいため、協議会としては「必要な情報収集及び国際発信を行い、国際標準化の流れを主導していく」(報告書34ページ)とのスタンスにて、日本の競争力向上を後押ししたい考えだ。

 なお研究開発については、向こう10年の間に実用化すべき案件についてプロジェクトマネージャを設け、進捗(しんちょく)を随時チェックしながら重要性が高いと判断したものについてリソースを集中投下する方式で進めることを提案しており、予算の垂れ流しにならぬよう配慮している。

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