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» 2015年02月17日 10時00分 UPDATE

インタビュー:実用化進む「装着型ロボット」勝算は、アクティブリンク藤本社長に聞く (1/2)

多くの装着型ロボットを開発してきたアクティブリンクが2015年、ついにロボットの量産を開始する。ビジネスとしての勝算はあるか、藤本社長に聞いた。

[渡邊宏,MONOisst]

 アクティブリンクが2015年中に量産を開始する「アシストスーツ AWN-02」は、腰の曲げ伸ばしをサポートすることに特化した装着型ロボットだ。同社は「力が必要な現場で、力が不要な社会を作り上げること」(同社代表取締役社長 藤本弘道氏)を目標にパワーアシスト技術を研究しており、これまでにも各種のパワーローダーを発表してきた。

 その同社は2003年にパナソニックの社内ベンチャー制度「パナソニック・スピンアップ・ファンド」により設立され、2013年には三井物産と資本業務提携を行い、現在はパワーアシスト機器の企画や開発、製造、コンサルティングなどをアクティブリンクが行い、営業支援をパナソニックと三井物産が担う体制となっている。

photo アクティブリンクの「アシストスーツ AWN-02」と同社 代表取締役社長 藤本弘道氏

 一貫して「必要な人へ力を届ける」を目指した同社が装着型ロボットを製品化する2015年、政府も成長戦略の1つとしてロボット活用を掲げた要綱をまとめ、また、ネットサービス企業がホビーロボット販売を大々的に開始するなど、ロボットを軸にした新たなビジネスが発芽しようとしている。

 最近では医療や介護、福祉、エンターテイメント、個人向けサービスなどにロボットを導入する「ロボットの社会実装」やそれらによって起こる「新ロボット産業」などの言葉を聞く機会が増えたが、いままさに装着型ロボットの量産を開始しようとしているアクティブリンクにとって、この“ロボットブーム”はどのような影響を及ぼすのか。代表取締役社長の藤本弘道氏に聞いた。

――アクティブリンクは2003年に設立しているので、「ロボット技術のビジネス化」について10年以上取り組んでいることになります。第三次ロボットブームとも言われた2014年、「ロボットの社会実装」は進んだのでしょうか。

藤本氏: 以前から「ロボットは介護福祉に活用できるのではないか」という認識が世間的にあったと思うのですが、介護福祉=老人介護という側面ばかりに脚光が浴びていたように思います。ですが、ここ10年で労働人口の減少という問題も浮上し、これらの背景があわさって「ロボットの社会実装」が着目されてきたように感じます。ですが、バブルのようにも感じてしまうのです。

 ロボットの事業化はそう簡単なものではありませんし、ウェアラブル技術との混同もあるように思います。ロボットのブームではなく、ロボティクス技術のブームが来ている状態ではないかと思います。ロボット振興には国主導の動きもありますが、行き過ぎるとアンフェアになり、業界が不健全になるのではという懸念はあります。

 ですが、ロボットに関心を持つ人が増えたはずですし、いろいろなロボット事業を立ち上げてダメだしをしてもらうことが大切です。ロボットブームのような雰囲気の醸成によって、ロボットが実際に何に利用できるかを説明して、欲しいと思ってもらえる機会が増えるたことは良いことだと思います。

日本の労働力不足に解答を

――企業ビジョンとして「パワーバリアレス社会」を掲げています。その手段として装着型ロボットを選んだ理由は。

藤本氏: 私たちは「パワー(力)が必要なひとに、力を届ける」ことを目的としており、パワーローダ−やアシストスーツを作るのが目的ではありません。私自身も「モノ作り」ではなくて「コト作り」が好きで、目的達成の手段を考えたとき、パワーローダーやアシストスーツという形状が浮かび上がったのです。

 いつも作り出すモノのカタチにこだわるのではなく、ニーズに対してニッチに対応していくことを考えています。「小さく作って、大きく育てる」が起業してからのポリシーです。起業するときは「ベンチャーを興す」ことが目的になってしまっていて、どうすれば社会に対して貢献できる企業になれるか――社会の公器――といいますよね、その考えが浅かったのです。

 アクティブリンクは日本の「労働力不足」に対して、解答を示したいのです。現場でベテランの経験を生かすためには、肉体の負荷を減らすアシスト力を提供できればいいと思いますし、アシストスーツという形状で提案するのは明るく先進的なイメージをもたらすことで若い人へのアピールにもなると考えたからです。

――装着型ロボットとしては全身タイプや脚部タイプの開発も行っています。市場投入はなぜ、腰部装着型からなのでしょう?

photo 全身補助タイプのパワーローダー

藤本氏: 機構的に単純で、受け入れる側(会社)のストレスにならないことを考えた結果です。腰は個人による形状差がさほどないというのも理由の1つです。

 需要から考えると、介護や福祉の作業を見ていると従事者には「腰が痛い」という悩みがありますし、その悩みは需要につながると思います。ですが、市場を考えるときは「全体の最適化」を念頭に置いています。

 例えばですが、腰部補助ロボットが介護保険適用されれば、腰の痛みを抱える作業者には助けになります。ですが、他の部分に補助が欲しい人は恩恵にあずかれませんし、国の財政を圧迫してしまうかもしれません。ロボット産業を立ち上げるため、税金を投入するようなスタンスにはあまり感心できません。

 ですから、汎用性の高いロボットを市場投入してゆき、「ロボット企業だから」ではなくて、一般企業として事業を回せるようになりたいのです。逆説的な言い方かもしれませんが、ロボットという言葉の先入観をなくせば、「ロボット産業」が成り立つのかもしれません。

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