RPGクリアに欠かせないアイテム管理と在庫管理RPGで理解する生産管理(2)(2/5 ページ)

» 2015年02月20日 09時00分 公開
[山口亨/UTAGE総研 代表取締役,MONOist]

ムダを避ける「5S運動」

 製造現場では、ムダな事態が生じるのを避けて、作業効率を高めるために「整理」「整頓」「清潔」「清掃」「しつけ」の5つに熱心に取り組んでいます。これらは、その5つのローマ字の頭文字をとって「5S運動」といわれています。ここで少し、この「5S」について見ておきましょう。

整理(Seiri)

 「整理」とは、不要なものを捨て、必要なものだけを持つことです。不要なものを取っておくことは、作業スペースを圧迫し、作業効率を下げることになります。モノにあふれ、現場の見通しが悪くなります。また、必要なモノを瞬時に取り出せなくなります。そうすると、探す手間が増え、結果時間を要するということにつながります。

 前回の「過剰在庫のムダ」でも説明しましたが、不要な在庫があれば、棚卸資産の増加により資金は固定化され、決算書上の数値を誤認させる原因にもなりかねません。さらにキャッシュフローの悪化も招きます。「捨てるのはもったいない」という気持ちも理解できますが、捨てないことによる損失の方が、実は大きくなるケースが数多く見られます。

 使わない回復系アイテムをたくさん持っているせいで、アイテムリストが見づらくなり実際にプレイする時間が減ってしまうということが起こるかもしれません。また、レアアイテムの出現で途中で捨てるハメになれば、購入に必要だったお金や、そのお金を得るためにモンスターと戦った時間や労力などは全てムダだったということになりかねません。

整頓(Seiton)

 「整頓」とは、必要なものを取り出しやすく、元の場所へ戻しやすくして、効率の良い作業環境を作ることです。必要なものを取り出しやすくするということは、作業者個人の話ではなく、誰が見ても「何が、どこに、いくつあるか」が分かるようになっていることです。スペースがなくて、整頓できないというのは、モノがあふれている証拠です。不要なものを整理してスペースを空け、空いた場所にルールを決めて置き場を確保する。そういった取組みが大切です。

 アイテムリストをジャンル別に整頓して、並び順も自分なりのルールを持って決めていれば、探す手間が省けます。自分が回復系のアイテムをどれだけ持っていて、それが必要以上なのかどうか、判断できるようになるのではないでしょうか。

photo 作業環境の整理整頓は製造業でもRPGでも必須

清掃(Seisou)

 「清掃」とは、作業現場をいつもきれいにしておくことです。それは気持ちを新たに切り替えること(心の清掃)にもつながります。作業現場をきれいな状態にしておくことは、作業効率を向上させるだけではなく、従業員の気持ちの向上ももたらします。そして、これらにより、来訪者が受ける好意的な印象による受注確度の向上につながり、さらなる気持ちの向上で好循環が生まれ、職場が明るく活気を帯びることにもつながるかもしれません。

 自分がRPGの世界に入りこんだ様子を、想像してみてください。戦闘中にダメージを受けて、共有のアイテム袋から「やくそう」を取り出そうとした時、中にゴミがたくさん入っていて変なにおいがしている……。そんな状況だと判断が遅れて致命的なダメージを負ってしまうということも起こり得ます。

 常にきれいに清掃されていれば、商品自体の品質保持や従業員の気持ちの問題に加えて、事故や病気など二次トラブルの発生リスクを減らすことにもつながります。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.