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» 2015年03月03日 10時00分 UPDATE

デジタルモノづくり人物探訪(2):アルゴリズムが無限のデザインを創り出す――Grasshopper使いの“3D漬け”生活 (1/3)

3Dモデリングツールや3Dプリンタを活用し、モノづくり業界で活躍するエンジニアやクリエーターにスポットを当てる本企画。今回は「Rhinoceros」と「Grasshopper」を使ってシャツやスカート、着物作りに挑戦する小野正晴氏を紹介する。

[八木沢篤,MONOist]

 3Dモデリングツール、そして3Dプリンタなどのデジタル工作機械がより身近になってきたことで、個人でモノづくりを楽しみ、その制作物を作品や商品として世に送り出しているクリエーターが増えつつある。連載「デジタルモノづくり人物探訪」の第2回では、そんなクリエーターの1人、小野正晴氏の活動を紹介したい。

 小野氏は、某企業のインダストリアルデザイン担当として、ある装置の筺体設計に従事している。職場では業務用3次元CADを扱い設計にいそしんでいるが、ひとたび家に帰ると、3Dモデリングツール「Rhinoceros(ライノセラス)」とそのプラグイン「Grasshopper(グラスホッパー)」にかじり付いているという。

 なぜそこまで“3Dの世界”にのめり込んでいるのか? 仕事もプライベートも3D漬けの小野氏に、これまでの歩みや現在の活動、そして3Dの魅力などについて伺った。


小野正晴氏 画像1 “3D漬け”のクリエーター小野正晴氏

楽しくて仕方がない、“3D漬け”の日々

――現在どのような作品を手掛けているのか? 主な活動内容を教えてほしい。

小野氏 今は、RhinocerosとGrasshopperを使って、アクセサリーやメガネ、さらにはシャツやスカートを制作し、それらを「Shapeways」や「rinkak」などのマーケットプレイスに出品したり、中野ブロードウェイの「CHAOS MARKET」で販売したりしている。あと、昨年(2014年)は縁あって「Maker Faire Tokyo 2014」で作品を展示する機会にも恵まれた。

アクセサリーメガネ服 画像2〜4 小野正晴氏が手掛けた作例。左からアクセサリー、メガネ、服 ※画像クリックで拡大表示

小野氏 自宅にいる時間のほとんどを3Dモデリング作業に費やしている。Grasshopperを使った「アルゴリズミカル・モデリング」の世界は非常に奥が深い。勉強すればするほど、すごいモノが作れる。今まで世の中にないカタチを生み出せ、さらに3Dプリンタのおかげで、それを現実のモノとして実際に触れることができてしまう。こんなに楽しいことはない。

 モデリング以外の活動でいうと、中野ブロードウェイにある「あッ3Dプリンター屋だッ!!」でRhinocerosとGrasshopperを使った無料の3Dモデリング勉強会の講師をしたり、渋谷の「FabCafe」が主催する講習会に参加したりしている。なんだかんだ週末は、こうした交流の場に足を運んでいることが多いかもしれない。

あッ3Dプリンター屋だッ!! 画像5 「あッ3Dプリンター屋だッ!!」の3Dモデリング勉強会で扱ったライトボールの制作画面

――「3D」との出会いは?

小野氏 学生時代、金沢美術工芸大学で製品デザインを学んでいた。美大生というと“絵がうまい”と思われるが、私はそんなことはなく、一般レベル(苦笑)。製品デザインの授業でデッサンをするのだが、絵のうまい同級生にはどうしてもかなわない……。そこで、周りがまだ始めていなかった3Dのスキルを磨こうと思い立った。

 当時、先輩が「Shade 3D」を使っていたのを見て、これだなと思った。(当たり前だが)3Dモデリングツールだと本当にきれいな絵が描ける。絵の苦手な自分にとって3Dの世界は本当に魅力的なものだった。

 もう1つは「ZPrinter」との出会いだ。大学に導入されたのが確か3年生のときだったかな。そのときの感動は今も忘れられない。何せ、自分でモデリングした画面上のデータが実際に立体化されて手で触れられるのだから。初めて3Dプリンタを目にして、「ああ、未来がそこにあるな」と思うほどの衝撃を受けた。当時は材料費も高く、出力するには教授の許可が必要だったが、授業の課題や遊びで作ったモノをこっそり何度も3Dプリントしたものだ(笑)。

――その後、就職して社会人となったわけだが、今の活動に至った経緯は?

小野氏 私が大学を卒業し、就職したころがちょうど「パーソナル3Dプリンタ」が世の中に出始めてきたころだった。そんなこともあり、3Dプリンタへの関心は高かったが、特に強烈な刺激を受けたのは、クリエイティブラボPARTYが行った「OMOTE 3D SHASHIN KAN」だった。今でこそ、人物を3Dスキャンしてフルカラーで3Dプリントするサービスが当たり前のようになってきたが、OMOTE 3D SHASHIN KANはその先駆けであり、この活動を目の当たりにして、「3Dプリンタは“試作”ツールではなく、“生産”できるツールなんだな」と意識がガラリと変わった。この出会いが今の活動につながるきっかけの1つだったといえる。

 そして、もう1つ。現在の私の作風にも大きな影響を与えている「Nervous System」との出会いだ。マサチューセッツ工科大学(MIT)出身の男女ユニットである彼らは、単に3Dプリンタで服を作ったのではなく、3D空間上で服をモデリングし、シミュレーションによりそれを“ぐしゃり”と丸めて小さくしたものを3Dプリントしてみせたのだ(動画1)。実際に人が着用できる服のサイズだと、そのままでは3Dプリンタの造形エリアに入り切らないが、丸めた状態であれば出力でき、造形スピードも速い。彼らの活動を見た瞬間、「自分も人に驚きを与えられるモノを作りたい!」と強く思った。


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