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» 2015年03月10日 10時00分 UPDATE

メカ設計イベントリポート:デザインとメカ設計が“戦う”のではなく“融合する”、デンソーの製品開発文化 (1/3)

デンソーは2014年に「医薬・医療用ロボット VS-050S2」でグッドデザイン大賞を受賞した。このデザインは、デザイナーと設計者との初期からの密接なコラボレーションから生まれた。これを可能にした理由の1つには、デンソー独自の風土にもあるようだ。

[加藤まどみ,MONOist]

 デンソーが2014年10月に発売を開始した産業用ロボットの「医薬・医療用ロボット VS-050S2」(図1)は、2014年のグッドデザイン賞(日本デザイン振興会)における最高の賞である「グッドデザイン大賞」を受賞した。グッドデザイン賞は、工業デザインをはじめとする幅広いデザインに関する評価制度である。

 このロボットは従来の産業用ロボットとは大きく外見が違っており、滑らかで有機的な形状と動きを持つボディが特徴だ。ねじは見当たらず、段差やすき間もない。この外見はまずデザインありきではなく、機能要求から決定されたものだという。

yk_gooddesign_VS050S2_298.jpgyk_gooddesign_VS050S2_299.jpgyk_gooddesign_VS050S2_302.jpgyk_gooddesign_VS050S2_300.jpg 図1-1 グッドデザイン大賞を受賞したデンソーの「医薬・医療用ロボットVS-050S2」、図1-2 真横、図1-3 斜め、図1-4 アダプター部分

おまけ情報: VS-050S2は「将棋電王戦FINAL」の指し手「電王手さん」のベースにもなった。>>関連記事:人間対機械バトル! 将棋電王戦の指し手は“成り”もできる「電王手さん」

 2015年2月6日に「KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)」で開催された「GOOD DESIGN BEST 100とその未来vol.5 グッドデザイン大賞受賞デンソーから学ぶプロダクトデザイン」(主催:ロフトワーク、共催:三井不動産、日本デザイン振興会)では、デンソーのデザイナーらが登壇し、このデザインを生んだ「デザイナーとエンジニアが初期段階から協力して製品を作り上げていく」デンソー独自の環境について語った。ロボットのデザインを担当したデンソー デザイン部 市場開発室の折笠弦氏の講演とパネルディスカッションを中心に紹介する。

yk_gooddesign_VS050S2_332.jpg 登壇者:左から藤崎氏、折笠氏、吉田氏

自動車部品メーカーがなぜ医療用ロボット?

 デンソーは自動車部品メーカーだが、新しい事業領域の拡大も進めている。この動きの源が、デンソーの「なければ作る文化」(折笠氏)だという。QRコードも元はデンソーが大量の部品を管理するために発明したものだ。今回のロボットのベースとなった産業用ロボットも、自社の生産工程で必要とされたことを基に作り出された。

yk_gooddesign_VS050S2_254.jpg デンソー デザイン部 市場開発室の折笠弦氏

 今回のプロジェクトは産業用ロボットの市場拡大を狙いとして始まったという。始めに目を付けたのが、クリーンルームでの用途だった。医薬品や食品などの業界では特に清潔な環境が要求される。この業界ではあまり産業用ロボットは普及しておらず、主に作業は人の手によってされてきたという。クリーンルームで人が作業する場合、防護服を着たり殺菌したりするなど手間が掛かる。また危険度の高い薬剤を使う場合もある。それらの作業をロボットで代替することで、コストや安全面で大きなメリットを生み出せると考えたという。

 開発の中で重要なポイントになったのは、「清潔さの維持」だ。具体的には、「汚れを蓄積させない」「バクテリアの繁殖を防ぐ」「特殊な洗浄に耐える」という3つの課題に取り組んだ。滅菌環境においては、紫外線の照射や過酸化水素ガスによる洗浄が行われる。この特殊な洗浄については、表面を従来の塗装ではなく3層からなる特殊なめっきを施すことが決まった。この方針が決まった段階でデザインチームに仕事が来たという。

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