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» 2015年03月24日 11時00分 UPDATE

ウェアラブル:ウェアラブル製品の規制対応と課題 (1/2)

市場拡大が見込まれるウェアラブル機器市場だが、“携帯”から“装着”に変わることで利便性と同時にリスクも増大する。本稿では、こうしたウェアラブル製品に対するリスクと規制の現状および課題について解説する。

[中里啓、北原誠、星太郎/UL Japan,MONOist]

ウェアラブル製品市場の現状

 近年、半導体小型化技術の進歩、省電力化を背景に、コンシューマー向け製品から医療機器に至るまで、ウェアラブル製品が急速に普及し、私たちの暮らしがより便利になると言われている。家電量販店などでは専用の販売スペースが設けられ、機能性に加えてデザイン性やファッション性を高めた商品が多数見られるようになった。

 ウェアラブル製品の市場は、先進国を中心に劇的な伸びを示しており、その世界市場規模は、メーカー出荷台数ベースで2014年の2328万台から、2017年には2億2390万台に成長すると予測されている。このうち、国内は2014年度の275万台から、2017年度には約5倍の1310万台に達すると予測されている(*注1)

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 こうしたウェアラブル製品の普及は、ユーザーにとって、これまで“携帯”してきたモバイル機器を、身体に“装着”することを意味し、その利便性と同時にリスクも多数存在していると言える。本稿では、こうしたウェアラブル製品に対するリスクと規制の現状および課題について述べる。

注1:参考文献:株式会社矢野経済研究所 Yz Flash 2015年冬号(第62号)p2


ウェアラブル製品に潜在するリスク

 ウェアラブル製品は、ユーザーの生活を劇的に改善する可能性を提供する一方で、ユーザーを数多くの潜在的なリスクにさらしてしまう可能性もある。ウェアラブル製品に対して想定される潜在的リスクを表1に記す。

表1 ウェアラブル製品に対して想定される潜在的リスク
項目 想定される潜在的リスク
感電(Electric Shock) 直接皮膚に触れたり、衣服に埋め込まれたりするので、軽度の電気ショックでも人体へのリスクあり
やけど(Burns) 使用時に製品内部の温度が上昇する傾向が高く、直接皮膚に触れる部分へのリスクあり
発火、爆発(Fire and Explosion) 電池の使用状況や環境によって、急激な温度上昇や発火、爆発のリスクあり
音圧(Acoustic sound Pressure) 過度な音圧により、難聴などの障害を引き起こすリスクあり
化学反応(Chemical Reactions) 製品の材料に含まれる金属や合成繊維などの化学物質が皮膚に触れることにより、発疹などの副作用を起こすリスクあり
電磁界暴露(Radio Frequency Exposure) 電磁界エネルギーに継続的に曝されることで、深部体温の上昇、電撃、高周波熱傷などのリスクあり
ヒューマンファクター(Human Factors) 製品のデザインにより、シャープエッジやコーナーで、皮膚に切り傷や炎症を引き起こすリスクあり
危険区域(Hazardous Location) 無線通信に大きく依存しており、特に発火の危険性のある区域内で利用する場合、適切なパワー調整がされないと発火などを引き起こすリスクあり

ウェアラブル製品の評価及び試験

 上記の潜在的リスクを考慮し、ウェアラブル製品に対する評価は、複数の異なる試験の組合せとなる可能性があり、構造によってはその適合性を立証するために、長期に亘る複雑な評価プロセスを経る必要がある。

 製品の構造や用途によるところもあるが、ウェアラブル製品の評価及び試験は以下に分類される。

  • 1. 製品安全:製品安全の観点では、主に感電、やけど、発火、爆発およびヒューマンファクターのリスクを評価する必要がある。尚、医療用途に使用される機器に関しては、追加の評価項目が必要である。
  • 2. EMC(電磁環境両立性):電気製品は、その電源が何であれ、意図しない電磁波を放出して他の電子機器を誤動作させたり、他の電気製品が出す電磁波の影響を受けてはいけない。
  • 3. SAR(Specific Absorption Rate:比吸収率):頭部や身体から一定距離以内で通常使用される無線機器は、電磁波の吸収率を測定する試験が必要となる。
  • 4. 無線相互接続性:無線技術とプロトコルでデータ転送を行うウェアラブル製品に対しては、無線相互接続性試験によりデータ伝送の有効性を評価する必要がある。
  • 5. プライバシーと情報セキュリティ:相互接続性に加えて、無線通信における個人情報の保護は重要であり、情報セキュリティ試験を通じて、無線通信の潜在的な脆弱性を評価する必要がある。
  • 6. エネルギー効率性:充電後の長時間使用を可能とする為に、ウェアラブル製品が、エネルギーをどれだけ効率的に使用するかについて評価する必要がある。
  • 7. 化学物質:長期使用により人体に悪影響を与える化学物質を分析、評価し、含有される化学物質の潜在的危険度を確認する必要がある。
  • 8. 環境適合性:ウェアラブル製品に使用される材料の環境適合性、並びに、製品寿命に到達した際の環境廃棄物量の軽減程度は、充分に考慮されるべきである。
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