“つながり”で起こすイノベーション、墨田区が目指す“モノづくりの街”再興戦略スカイツリーだけじゃない!(3/3 ページ)

» 2015年04月03日 13時00分 公開
[陰山遼将MONOist]
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障害者就労をサポート! 次世代電動車いすの開発拠点

 2つ目の拠点が、障害者などの就労支援をサポートする電動車いすの開発を目指す「レル community」だ。同拠点の事業運営を行うのは、電動車いすの開発と販売を手掛けるさいとう工房。同社の近くに位置するかつては金型工場だったスペースを整備し、試作室や開発室を備えたレル communityを新たに開設した。


さいとう工房 代表取締役 社長の斎藤省氏と同社の多機能電動車いす(左)。リクライニングできる機能など、さまざまな機能を搭載している(右)(クリックで拡大)

 さいとう工房は多機能電動車いす「レル シリーズ」などを開発し、これまで累計1500台以上の電動車いすを販売してきたという。同社の電動車いすは、独自に開発した6つの車輪を取り付けることで、約40cmという最小回転半径を実現しており、狭い場所でも簡単に方向転換が行えるのが特徴だ。またこの他にも、障害者が抱える個別の悩みに応えるべく、電動リクライニング機能や座面を床まで下ろす機能、傾斜地でも座面を水平に保つ機能など、さまざまな機能を独自に開発して個別のニーズに応えてきたという。

 さいとう工房 代表取締役社長の斎藤省氏は「多機能型の電動車いすは、欧米では多く開発されている。しかし価格が高く大型なため、日本の狭い家屋の中で利用するのは難しい。これは職場環境でも同じことがいえる。日本における障害者就労率はまだ低く、障害者の方が働きたいと思っても『車いすでは難しい』と感じてしまうのが現状。そこでどうにか障害者の方を笑顔したいと考え、こうした個別のニーズに合わせた電動車いすの開発を行ってきた」と話す。

さいとう工房が開発する電動車いすはほぼその場で回転できる(クリックで拡大)

 今回整備されたレル communityでは、大学機関の研究者や国内外の福祉団体、墨田区内の中小製造企業とともに、さいとう工房が行ってきた電動車いすの研究開発をさらに拡大、推進していく。さいとう工房が開発してきた電動車いすは、製作期間に約半年から1年の時間を要していた。今後はレル communityでの研究開発を進め、各部品のモジュール化などを進め、約3週間程度での製作を目指すという。

 また、さいとう工房が進めている電動車いすの技術開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「福祉用具実用化開発推進事業」に採択されている。電動車いすの小型軽量化を目指し、インホイールモーターなど、新たな技術の実用化に向けた取り組みも進めていくという。

 斎藤氏は「今後は電動車いすの小型軽量化に加え、デザインも改良していく。例えばレストランで使うにはどういった電動車いすが最適かというように、さまざまな場面に合わせたものの開発もしていきたい。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、障害者の方がこの電動車いすを使って、社会の中でいきいきと活躍している様子を世界中の方に見ていただきたい」と意気込みを語った。

さいとう工房が独自開発した機構を搭載する車輪で、多少の段差でも軽々とのりこえられる(左)。高さを調節できる機能を搭載した電動車いすも(クリックで拡大)
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